DIME MAGAZINE
犯罪の疑いで警察に逮捕されると、自由を奪われた生活に連日の取調べと、本人にとっては過酷な生活が待っています。そんなときに、心の支えとなり得るのが「当番弁護士」です。
今回は、逮捕されたときに無料で弁護士を呼べる「当番弁護士」の制度を紹介します。
1. 当番弁護士とは
「当番弁護士」とは、逮捕された被疑者のために、無料で相談に応じる弁護士です。各都道府県の弁護士会が、当番弁護士の制度を運用しています。
逮捕によって身柄拘束された被疑者は、過酷な生活や刑事手続きへの戸惑いから、精神的に不安定な状態になることが多いです。また、警察官や検察官による取調べに対して、身柄拘束のストレスや恐怖などから、不本意な供述をしてしまうケースも散見されます。
当番弁護士を呼べば、刑事手続きの流れや取調べに関するアドバイスを受けられます。また、家族への伝言を頼むこともできます。
当番弁護士と話をすれば、被疑者は精神的な落ち着きを得られるとともに、取調べへ臨むに当たっての心構えを整えることができるでしょう。
2. 当番弁護士を呼ぶ方法
当番弁護士は、逮捕された被疑者だけでなく、その家族・友人なども呼ぶことができます。
被疑者が当番弁護士を呼ぶには、警察官（または検察官）を通じて弁護士会へ依頼します。担当の警察官に対して、当番弁護士を呼びたい旨を伝えればOKです。弁護士会に連絡をとってもらえます。
被疑者の家族や友人などが当番弁護士を呼ぶ場合は、逮捕された都道府県の弁護士会に直接連絡します。当番弁護士用の連絡先は、日本弁護士連合会（日弁連）のウェブサイトに掲載されています。
3. 当番弁護士の利用に関する注意点
当番弁護士の利用に関しては、以下の各点にご注意ください。
①当番弁護士を呼べるのは逮捕されているときだけ
②弁護士は選べない
③無料で相談できるのは1度だけ｜正式な依頼には費用がかかる
3-1. 当番弁護士を呼べるのは逮捕されているときだけ
当番弁護士を呼ぶことができるのは、被疑者が逮捕されているときだけです。
逮捕されずに在宅のまま捜査が行われている場合、当番弁護士を呼ぶことはできません。自分で弁護士を探して相談しましょう。
3-2. 弁護士は選べない
当番弁護士の担当者は、各都道府県の弁護士会で決められています。したがって、被疑者やその家族が当番弁護士を選ぶことはできません。
また、被疑者やその家族などが選んだ弁護士に、当番弁護士として接見してもらうこともできません。自分で弁護士を選びたい場合は、直接弁護士へ連絡をとって依頼しましょう。
3-3. 無料で相談できるのは1度だけ｜正式な依頼には費用がかかる
当番弁護士は、被疑者のために無料で接見に来てくれます。
しかし、当番弁護士が接見に来てくれるのは1回だけです。2回目以降も接見に来てほしい場合は、正式な依頼および費用の負担が必要となります。
当番弁護士にそのまま依頼したいものの、費用を準備できない場合は、日弁連の「刑事被疑者弁護援助」の利用をご検討ください。日弁連に弁護士費用を負担してもらえます。
また、逮捕から勾留に切り替わった後は、国選弁護人の選任を請求できる場合があります。
ただし、国選弁護人を選任してもらうには、原則として一定の資力要件を満たすことが必要です。加えて、当番弁護士とは違う弁護士が選任される点にもご注意ください。
取材・文／阿部由羅（弁護士）
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ（全国大会優勝経験あり）、囲碁、将棋。
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