3. 再犯加重による法定刑の加算方法
再犯加重が行われる場合、懲役の法定刑の長期(=上限)が2倍になります。ただし、再犯加重後の有期懲役は最長30年です(刑法14条2項)。
(例)
①窃盗罪、詐欺罪、業務上横領罪、恐喝罪など
10年以下の懲役→20年以下の懲役
②傷害罪
15年以下の懲役→30年以下の懲役
③傷害致死罪
3年以上(20年以下)の有期懲役→3年以上30年以下の懲役
※再犯加重前の有期懲役は、最長20年(刑法12条1項)
4. 再犯として取り扱われないパターン例
以下の場合は一見すると再犯のように思われますが、刑法上は再犯として取り扱われません。これらの場合には、原則的な法定刑によって処断されます(他に加重事由・減軽事由がある場合を除く)。
①執行猶予期間中の犯罪
執行猶予期間中は、刑の執行が猶予されています。
再犯の対象となるのは、実際に刑の執行が終了した後に行われた犯罪です。したがって、執行猶予期間中の犯罪は再犯に該当しません。
②前科が懲役刑でない場合
再犯に該当するのは、原則として前科が懲役刑である場合のみです。前科が禁錮・罰金・拘留・科料の場合は、執行終了後に罪を犯しても再犯に該当しません。
ただし前科が併合罪で、その中に懲役に処すべき罪があったのに、その罪が最も重い罪でなかったために懲役に処せられなかった場合は、執行終了後の罪が再犯に当たることがあります(刑法56条3項)。
(例)
業務上失火等罪と侮辱罪の併合罪で起訴され、禁錮2年の実刑判決を受けて刑務所に服役し、出所後5年以内に再び罪を犯した場合
→再犯に該当する
※業務上失火等罪:3年以下の禁錮または150万円以下の罰金
※侮辱罪:1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料
※有期禁錮刑が有期懲役刑よりも重くなるのは、禁錮の長期が懲役の長期の2倍を超えるとき(刑法10条1項)
③出所から5年を経過している場合
懲役刑の執行を終了してから5年を経過していれば、再び罪を犯しても再犯に該当しません。
④有期懲役以外の刑罰に処せられる場合
再び犯した罪について、死刑・無期懲役・禁錮・罰金・拘留・科料に処せられる場合は、再犯に該当しません。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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