COVID-19関連の嗅覚・味覚障害はパンデミック初期の6%に減少
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの初期には、嗅覚や味覚の障害が罹患時の特徴的な症状の一つとして位置付けられていた。
しかし、もはやそうではないことが明らかになった。現在ではCOVID-19罹患者に嗅覚・味覚障害を生ずる割合は、パンデミック初期のわずか約6~7%だという。
米バージニア・コモンウェルス大学のEvan Reiter氏らの研究によるもので、詳細は「Otolaryngology—Head and Neck Surgery」に2023年5月26日掲載された。
Reiter氏らはこの研究に、パンデミック発生以来、新型コロナウイルス検査が陽性と判定された700万人以上の患者の経過が記録されているデータベースを用いた。
2020年4月27日~6月18日をベースラインとして、COVID-19発症後2週間以内に患者が嗅覚・味覚障害を訴えるオッズ比(OR)を算出。
すると、アルファ株が主流となった時期はOR0.744、デルタ株が主流となった時期はOR0.637と、嗅覚・味覚障害を訴える患者が経時的に減少していた。
そしてさらに2022年以降、オミクロン株が主流になると、オミクロンKでOR0.139、オミクロンLでOR0.079、オミクロンCでOR0.061、オミクロンBではOR0.070と、オッズ比がより低下してきていた。
Reiter氏は、「パンデミックの初期には、嗅覚と味覚の喪失がCOVID-19の一般的な症状と考えられていた。PCR検査を行える件数が限られていた時期、多くの医師がその症状を頼りに診断していた。しかしわれわれの研究結果は、嗅覚・味覚障害の有無がもはやCOVID-19診断の信頼できる指標ではないことを示している」と解説。
続けて、「つまり今では、体調が不良でも嗅覚・味覚障害がないからといってCOVID-19の可能性を除外することはできず、反対に嗅覚・味覚障害があるからといってCOVID-19だと断定もできない」と話している。
COVID-19罹患時に嗅覚・味覚障害を生ずる人が減少している理由について、研究者らは「詳細は不明だが、人々の免疫力が高まっていることが関係している可能性がある」としている。
Reiter氏は大学発のリリースの中で、「ワクチン接種、またはウイルスに一度感染することは、一般的には次に感染した際の重症度を軽減する」と述べている。
ただ、同氏は「パンデミック初期に比べればはるかに少なくなったとはいえ、現在でもCOVID-19のために嗅覚・味覚障害を生じている患者が依然として存在している。嗅覚・味覚障害はそれ自体が生活の質を大きく下げるとともに、健康的な食生活の妨げともなる」とし、COVID-19に伴う嗅覚・味覚障害がいまだ重要な問題であることを指摘。
同氏は、「幸いなことに、この症状に苦しむ人々に対する効果的な治療法を見つけるため、現在多くの研究が行われている」と付け加えている。
なお、この研究には、医学研究を支援している財団であるMEDARVA財団が資金を提供した。(HealthDay News 2023年6月7日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://aao-hnsfjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ohn.384
Press Release
https://news.vcu.edu/article/2023/06/risk-of-smell-loss-from-covid-19-is-as-low-as-6-compared-with-initial-variants
構成/DIME編集部