小学館IDをお持ちの方はこちらから
ログイン
初めてご利用の方
小学館IDにご登録いただくと限定イベントへの参加や読者プレゼントにお申し込み頂くことができます。また、定期にメールマガジンでお気に入りジャンルの最新情報をお届け致します。
新規登録
人気のタグ
おすすめのサイト
企業ニュース

一度停止したドナーの心臓を蘇らせて移植に用いる新たな臓器移植方法の可能性

2023.06.27

心臓移植の新アプローチ、臓器提供の増加につながる可能性も

一度停止したドナーの心臓を蘇らせて移植に用いる新たな臓器移植方法の安全性と有効性を示した臨床試験の結果が明らかになった。

このアプローチによって今後、米国では心臓移植に利用できる臓器の提供数を増やせる可能性があると期待が寄せられている。

詳細は、米デューク大学心臓移植プログラムのJacob Schroder氏らにより、「The New England Journal of Medicine(NEJM)」2023年6月8日号に掲載された。

従来の心臓移植では、脳死と判定され、生命維持装置の管理下にあるドナーから摘出された心臓が用いられてきた。脳死とは、脳の全ての機能が失われているが、心臓など他の臓器は装置によって維持されている状態を指す。

こうした中、体外で酸素を供給しながら血液を循環させて心臓の機能を維持する新たな技術を利用することで、心拍が停止した心臓をドナーから摘出して蘇生できるようになり、臓器移植に適した機能が得られるかどうかを検証することも可能になった。

今回の臨床試験は、このような技術を用いた、心停止後の臓器提供(donation after circulatory death;DCD)と呼ばれるアプローチについて初めて検討したもの。

DCDの心臓は、ひどいけがなどで深刻な状態に陥って生命維持装置の管理下に置かれた、回復の見込みが全くない人から提供される。

その多くは深刻な脳損傷があるが、脳死の厳しい判定基準は満たさない人である。こうした人では、家族が生命維持装置を外すことを選択すれば、「心停止」の状態と見なされる。

DCDによる心臓移植には、この試験に資金提供をしたTransMedics社製のOrgan Care System(OCS) Heartと呼ばれる装置が用いられた。

OCS Heartは心臓を入れる箱型の装置で、酸素が豊富に含まれた温かい血液をドナーから提供された心臓に灌流させる機能を持つ。この装置によって心臓が蘇生されるだけでなく、医師が心臓の機能を確認することもできるという。

臨床試験は、米国の15カ所の臓器移植センターで実施され、成人の心臓移植待機患者180人が登録された。このうち90人にDCDによる心臓が移植され(DCDによる心臓移植群)、残る90人に脳死ドナーの心臓が移植された(脳死ドナーの心臓移植群)。

プロトコル違反が確認されたDCDによる心臓移植群の10人と脳死ドナーの心臓移植群の4人を除いた166人を対象に、移植から6カ月時点の予後について解析を行ったところ、生存率は、DCDによる心臓移植群での94%に対して、脳死ドナーの心臓移植群では90%であり、両群間に統計学的に有意な差は認められなかった(最小二乗平均差−3、90%信頼区間−10〜3、非劣性のP<0.001)。

また、移植後30日間での重篤な有害事象のリスクについても同程度であった。移植後30日以内に重度の原発性移植片機能不全が生じた割合は、脳死ドナーの心臓移植群の5%に対してDCDによる心臓移植群では15%と高かったが、管理可能な範囲の問題だったという。

このほか、脳死ドナーの心臓移植群では2人が原発性移植片機能不全により再移植を受けたが、DCDによる心臓移植群でこのような移植片機能不全が生じた者はいなかった。

論文の筆頭著者であるSchroder氏は、「DCDによって米国の心臓移植での臓器提供数を約30%増加させることができる可能性がある」との見方を示し、「それでもまだ十分とはいえないが、心臓移植の歴史で最も大きな出来事だと私は考えている」と話す。

米国では長い間、腎臓や肝臓、肺など心臓以外の臓器に関してはDCDによる移植も行われてきた。これらの臓器の中でも、特に腎臓は、心停止後の酸素の欠乏した時間にも耐え得るという。

これに対して、心拍が停止した心臓は、長い間DCDの対象外とされていたが、近年、新たな技術が開発され、米国以外のいくつかの国々の臓器移植センターでDCDによる心臓移植が行われるようになった。

オーストラリアや英国の小規模研究では、DCDによる心臓が移植された患者の状態は、従来法による心臓移植を受けた患者と同程度に良好であったことが示されている。

現在、米国にはDCDによる心臓移植を行う臓器移植センターは約20施設あるが、Schroder氏は、「この移植方法を標準治療の一つとして考慮すべきだ」との見解を示している。

一方、全米臓器分配ネットワーク(UNOS)チーフメディカルオフィサーのDavid Klassen氏は、「今回の臨床試験の結果は、誰もが予想していたことを裏付けるものだ」と説明。

その上で、「DCDによる心臓移植プログラムの信頼性を高める上で、臨床試験のデータが得られたことの意義は大きい」と話している。(HealthDay News 2023年6月8日)

Copyright © 2023 HealthDay. All rights reserved.
Photo Credit: Adobe Stock

(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2212438

構成/DIME編集部

@DIMEのSNSアカウントをフォローしよう!

DIME最新号

最新号
2024年4月16日(火) 発売

DIME最新号は「名探偵コナン」特集!進化を続ける人気作品の魅力、制作の舞台裏まで徹底取材!

人気のタグ

おすすめのサイト

ページトップへ

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 第6091713号)です。詳しくは[ABJマーク]または[電子出版制作・流通協議会]で検索してください。