20歳未満の者が罪を犯した場合などには、「少年事件」として特別な手続きにより処分が決定されます。今回は少年事件について、通常の刑事事件との違い・少年に対する処分の種類・実名報道の可否などを解説します。
1. 少年事件とは?
「少年事件」とは、以下のいずれかに該当する少年について、家庭裁判所が保護処分の決定などを行う事件です(少年法3条1項)。
①罪を犯した少年(犯罪少年)
②14歳に満たないで、刑罰法令に触れる行為をした少年(触法少年)
③次に掲げる事由があって、その性格または環境に照らして、将来罪を犯し、または刑罰法令に触れる行為をするおそれのある少年(虞犯少年)
・保護者の正当な監督に服しない性癖のあること
・正当の理由がなく家庭に寄りつかないこと
・犯罪性のある人や不道徳な人と交際し、またはいかがわしい場所に出入りすること
・自己または他人の徳性を害する行為をする性癖のあること
「少年」とは、20歳未満の者をいいます(少年法2条1項)。
2022年4月以降、民法上の成年年齢は20歳から18歳に引き下げられましたが、少年法における「少年」の年齢は変更されていません。
上記①から③のいずれかに該当する少年は、家庭裁判所の審判に付され、保護処分の要否などが審理されます。
2. 少年事件と通常の刑事事件の違い
少年事件では、犯罪の処罰を主目的とする通常の刑事事件と異なり、少年の更生に主眼が置かれています。
そのため少年事件では、通常の刑事事件にはない以下の取り扱いがなされています。
①家庭裁判所による審理
少年事件の審理は、通常の裁判所(地方裁判所など)ではなく、家庭裁判所が行います。
警察官や検察官が捜査をした事件のうち、犯罪の嫌疑があるものは、すべて家庭裁判所へ送致することになっています(全件送致主義。少年法41条、42条)。
②家庭環境などの調査、指導・助言
家庭裁判所調査官は、本人やその家族に対するヒアリングなどを通じて、少年の性格・日頃の行動・生育歴・家庭環境などの調査を行います。調査結果は報告書にまとめられ、少年に対する処分を決定する際の参考資料となります。
また調査の過程で、家庭裁判所調査官は本人や家族に対し、更生のために必要な指導や助言なども行います。
保護処分等を決定するに当たり、少年の性格などをさらに調べる必要がある場合には、少年鑑別所に収容した上での行動観察や、家庭裁判所調査官による試験観察が行われることもあります。
③保護処分が原則
少年に対しては、刑罰を科すのではなく、保護処分を行うのが原則とされています。保護処分は、少年の更生に重きを置いた内容になっています。
ただし例外的に、14歳以上の少年が死刑・懲役・禁錮に当たる罪を犯した場合であって、家庭裁判所が刑事処分を相当と認めるときは、事件を検察官に送致します(少年法20条1項)。この場合は、通常の刑事事件の手続きによって審理が行われ、有罪であれば刑罰が科されます。