違法行為によって損害を受けたので民事訴訟を提起したい、相手は誰だかわかるけど住所がわからない……
このようなケースでも、民事訴訟を提起できることがあります。
今回は、相手が行方不明の場合でも訴訟を提起する方法や、訴訟提起後の審理・強制執行の留意事項などをまとめました。
1. 行方不明の相手に対して訴訟を提起する方法|公示送達
住所がわからず行方不明の相手に対しても、「公示送達」を申し立てれば訴訟を提起することができます。
1-1. 公示送達とは
公示送達は、以下の2つの方法によって行われる送達です(民事訴訟法111条)。
①裁判所書記官が、送達すべき書類を保管する
②送達を受けるべき者に対していつでも交付すべき旨を、裁判所の掲示場に掲示する
※掲示を始めた日から2週間(外国においてすべき送達の場合は6週間)が経過すると、公示送達の効力が発生します。ただし2回目以降の公示送達は、掲示を始めた日の翌日に効力が発生します(同法112条)。
民事訴訟は、裁判所が訴状を被告に送達した時点で係属状態となります。言い換えれば、送達が行われなければ民事訴訟の手続きは進みません。
訴状の送達は、被告への交付によって行われるのが原則です(同法101条)。ただし、交付送達ができない場合などについては、特別の送達方法が認められています。
公示送達は、他の方法による送達ができない場合に、最後の手段として認められる送達方法です。被告の住所などが一切わからない場合は、公示送達の申立てを検討することになります。
1-2. 公示送達の要件
公示送達が認められるのは、以下のいずれかに該当する場合です(民事訴訟法110条1項)。
①当事者の住所、居所その他送達をすべき場所が知れない場合
②書留郵便等に付する送達(=付郵便送達)をすることができない場合
③外国における送達ができない場合
④外国における送達について、外国の管轄官庁に嘱託を発した後6か月を経過しても、その送達を証する書面の送付がない場合
1回目の公示送達(=訴状の送達)は原告による申立てが必要ですが、2回目以降の送達(=準備書面などの送達)は裁判所書記官の職権で行われます(同条3項)。
原告は訴状の公示送達を申し立てるに当たり、上記①から④のいずれかを満たすことを裁判所に示さなければなりません。
住所等が不明であることを理由に公示送達を申し立てる場合は、以下の対応が必要になります。
・被告の住民票の取得、確認
・最後の住所地の現地調査
・ひとつ前の住所地の現地調査
・勤務場所の現地調査(判明している場合)
など