「ステマであること」自体が不当表示になる
Z世代を中心に「テレビ離れ」「広告離れ」が進み、今や国内のインターネット広告市場は、マスメディア4媒体(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ)の広告市場規模を上回3兆912億円(「2022年日本の広告費(株式会社電通)」)を記録している。ネット広告はメディア4媒体に比べると、広告料が格安なため、すそ野が広がる一方。そんな中で近年、激増しているのが、消費者に広告宣伝であることを隠しながら、商品やサービスのセールスプロモーション活動を行う「ステマ」だ。
これまで広告で規制の対象となっていたのは、虚偽や大げさな表現によって、実際よりも著しく優良または有利と見せかける表示などの「優良誤認表示」もしくは「有利誤認表示」に該当する文言。だから一般的な投稿に偽装した広告というだけでは、規制できない状況が続いていた。
しかし2022年12月27日に消費者庁が「ステルスマーケティングに関する検討会」を開催し、ステマそのものを不当表示の一つとする方針を示して「ステマは規制の必要性がある」とする報告書をまとめた。これを受けて消費者庁は2023年3月28日、10月1日から「ステルスマーケティングに対する法規制をスタートさせると発表。
今回の規制の対象になるのは広告主であり、事業会社。企業からステマを依頼されたインフルエンサーは直接の規制対象にはならない。とはいえ、この規制がインフルエンサーに無関係なわけではない。自分の意思による投稿であるにもかかわらずステマとして摘発された場合、信用を失ってそれ以降の活動に大きな支障をきたすのは確実。また、それを恐れてインフルエンサーが委縮し、自由な発信ができにくくなる状況が生まれる恐れもある。
そうした懸念から運用基準案の改善提案などを提言しているのが、一般社団法人クリエイターエコノミー協会(以下「クリエイターエコノミー協会」)だ。クリエイターエコノミー協会は、クリエイターが活動しやすい社会環境をつくり、その自由かつ安全な活動を促進することを目的に発足した団体。代表理事社は、BASE株式会社、note株式会社、UUUM株式会社の3社が務めている(五十音順)。
▲2023年4月6日に行われた一般社団法人クリエイターエコノミー協会主催の「ステルスマーケティング規制に関する勉強会」に登壇したUUUM株式会社 執行役員CMO 市川義典氏
「ステルスマーケティングの問題性については理解するところであるものの、運用基準案が日本のクリエイターエコノミーの実態と乖離しており、発信を伴う様々な経済活動にも悪影響を及ぼしかねないおそれがある」(クリエイターエコノミー協会)
クリエイターエコノミー協会がこれまでに消費者庁に提出してきた意見は、大きく4つ。
①定義や境界線の曖昧さ
②包括的な規制によって生じる悪影響への懸念
③クリエイターなどの『自主的な意思』の重要性
④クリエイターエコノミーの実態にそぐわないルールメイキング
その内容は多岐にわたっているが、具体的な例をいくつかあげてみよう。