広告であることを隠し、中立な第三者を装って商品やサービスの評価・情報を発信するステマ広告。近年は国内で取り締まりが強化されたことで、注目が集まっている。
取り締まりが強化されるほど、ステマ広告が多いという事実があるということ。消費者の立場からすれば、なんとなく「騙されたくない」という心理が働くものだ。今回は、消費者としてステマ広告に騙されないためのポイントを探った。
また、ステマ広告の取り締まり強化によって、企業にはどのような影響がもたらされるかを専門家に聞いた。
ステマ広告を見分ける方法は?
掲示板監視・投稿監視等のアウトソーシングサービスを行うイー・ガーディアン株式会社は、ステマ広告を防ぐためのチェックサービスを広告主企業向けに提供している。広告審査専門スタッフが商品名などでクローリングを行い、インフルエンサーの投稿内容などを目視することで、広告の健全性や信頼性を担保するものだ。
同社の担当者に、ステマ広告を見分ける方法を聞いたところ、現時点でステマであるかどうかを正確に見分ける方法はないという。
「ただ、ステマではないかといわれている表現がいくつかあり、それらの表現をもとに一般消費者があやしいかもしれないと気づくことができる可能性があります。消費者庁が発表した『一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示』の運用基準(※)にも記載がありますが、あやしいと思われる表現には、下記のようにいくつかパターンがあります」
・「広告」というワードではなく、あえて他のワードを使っている。
・「広告」と記載されていても、文中に「これは第三者として感想を記載しています。」と記載されている。
・「広告」という文字を見えにくく表示している。(文字が小さい・薄い、動画の中での表示が短い等)
・広告である旨の表示を大量の#(ハッシュタグ)の中に紛れ込ませるようにして、消費者が認識しにくくする。
「弊社ではこれらのような、あやしいキーワード・表現方法をもとにステマの可能性がありそうな投稿かどうかのチェックを行っております」
出典:消費者庁「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準
同社の担当者によれば、今後は、アフィリエイターやASP事業者だけでなく広告主側においても、一般消費者も判断できる明瞭な広告表示がされているかどうかを、これまで以上に厳格に確認していくことが求められるのではないかと言う。
ステマ疑惑による風評被害を防ぐには?
今後、ステマがさらに社会的に問題視されるようになれば、ステマを一切行っていない企業も疑われる機会が増えていく。こうしたステマ疑惑は、風評被害をもたらすから、注意が必要だ。
法人向けにSNSでの炎上や風評被害対策をはじめとしたデジタル上の危機から守るソリューションを提供するシエンプレ株式会社は、ステマ疑惑やステマになっていないかのリスク診断や研修のほか、SNSなどを使った口コミ施策のキャンペーンにおいては、参加者が投稿の際に「PR」の表記漏れなどにならないようモニタリングし、違反がないかを随時チェックもしている。
今後、ステマ疑惑による風評被害を防ぐには、企業はどんな対策をすればいいか。同サービスのWEBコンサルタントシニアマネージャーである桑江 令氏によれば、対策は、大きく2つあるという。
一つは「キャンペーンやクリエイティブの炎上リスクをしっかりチェックする」こと。もう一つは、「有事の際に迅速な対応ができる体制を整えておく」ことだ。
「法的に問題がなかったとしても、ネットユーザーに誤解されてしまうような表現が問題となり、炎上してしまったケースもあります。そのため、これまでのように法的なチェックだけではなく、炎上リスクのチェックを事前にすることが、重要なことだと考えます。
その上で、常にネット上の論調を把握できるよう、ツールを整備する、業者に依頼するなどして体制を作っておき、何か異変があればすぐに把握、そして対応ができるマニュアルやフローの策定も必要です」
同社が一般消費者を対象に行った調査では、「(企業が)炎上後にどのような事後対応をするかの確認をする」との回答が6割に上り、そのうちの3割は「(炎上を起こした企業が)しっかりとした事後対応をすれば、逆に良い印象を持つ」と回答したという。
「つまり、何か起きた際に迅速かつ真摯に対応することができれば、リスクが発生したとしても風評被害に悩まされることはなく、むしろ一般的な評価を上げる可能性もあるといえます」
ステマ広告が問題視されていることで、消費者としても企業としても、意識を高める必要がありそうだ。
文/石原亜香利