1980~1990年代に発売された懐かしのゲームソフトが、中古市場、あるいはネットのオークションサイトでたびたび高値で取引されている。プレミア価格がつくタイトルはいくつも存在するが、ここ数年で相場がさらに高騰しているのだ。今では見ることも遊ぶ機会も減ったレトロゲームが、なぜ高値で流通し続けるのか? 中古ゲーム専門店を取材した。
BEEP秋葉原店
東京・秋葉原に居を構えるレトロゲーム専門店。ソフト、ハード以外の関連グッズ、書籍類も豊富に取り揃える。
オークションで1億円近い値がついたソフトも
発売当時、数千円で販売されていたファミコンやメガドライブなどレトロゲームの一部ソフトが、目玉が飛び出るほどの価格で流通している。世界最大のオンライン・マーケットプレイス「eBay」のビデオゲームカテゴリーでは、ファミコン関連商品だけで、何と年間6億円の売り上げ(2012年7月〜2021年7月)だというから驚きだ。また2021年7月には、海外のオークションサイトで未開封のNES(海外版ファミコン)用ソフト『ゼルダの伝説』が、約9600万円で落札されたという衝撃的なニュースが報じられた。もはやレトロゲームは、絵画や家具などと同じように骨董品として扱われているのである。
海外のコレクターも加わって争奪戦は激化
なぜ、レトロゲームがこれほどまでにプレミア化しているのだろうか? 理由はいくつもあるが、まずは人気の割に製造本数が極端に少ないケースだ。雑誌広告などを利用したキャンペーンやイベントの賞品として極少量だけ製造した、いわゆる非売品ソフトはコレクター人気がとても高い。通常版と内容が同じであっても、中古市場における価値の差は圧倒的だ。
価格高騰のもうひとつの大きな要因は、海外でも日本のレトロゲーム人気が高いことだ。新型コロナウイルスの騒ぎがようやく落ち着き、為替相場が円安に振れたタイミングで、主に欧米のコレクターやマニアたちが、我先にと来日。専門店でプレミアソフトを片っ端から買い漁っているのだ。
東京・秋葉原のレトロゲーム専門店「BEEP秋葉原店」のビッグダデー村田さんは話す。
「いわゆる開店待ちする海外のお客様も数多くいます。主に任天堂系、特に初期の『ポケモン』シリーズが人気で、ゲームボーイやスーパーファミコンの本体も入荷後すぐに売れてしまうほどです」
コロナ禍で買取価格が爆上がり!ハード別ゲームソフト
ファミコン
サンソフト『バトルフォーミュラ』
発売当時価格6820円が買取価格7万5000円!
〈 なぜ人気?〉
戦闘機や高速艇に変形するマイカーを操るシューティングゲーム。「同じサンソフトの作品では『ギミック!』が古くからプレミアソフトとして有名。本作の買取価格もそれに近づきつつあります」(村田さん)。カーレースの要素を融合するアイデア、グラフィックスの美しさ、軽快なサウンドは今なお新鮮!
スーパーファミコン
トンキンハウス『スーパータリカン』
発売当時価格7500円が買取価格3万8000円!
〈 なぜ人気?〉
ドイツのアクションゲーム『タリカン』シリーズの1作。海外でヒットしたが、日本で発売されたのは本作のみだったことから価格が高騰。多彩な武器を駆使して敵を倒す爽快感の高さ、多彩なステージ構成とメカニックデザインの美しさは一見の価値あり。
ニンテンドーDS
LukPlus『コロぱた』
発売当時価格5280円が買取価格2万円!
〈 なぜ人気?〉
様々なギミックを動かし、ヒロインであるひまわりを規定の場所に誘導するとクリアとなる。パズルのおもしろさと、キャラのかわいらしさで人気を集めたが、本数が非常に少なくプレミア化。開発者が書いた攻略ガイドの同人誌もプレミア化している。
プレステ
アスミック・エース『LSD(初回限定版)』
発売当時価格4800円が買取価格3万5000円
〈 なぜ人気?〉
3DCGで描かれた夢の世界を探索するアドベンチャーゲーム。サイケデリックなビジュアルとサウンドが融合し、まるでビデオドラッグ(ビデオトリップ)のような体験が味わえる。海外のマニア間で特に人気が高い。初代PSを代表するカルト作品だ。
プレステ2
スターフィッシュ『雪ん娘大旋風~さゆきとこゆきのひえひえ大騒動~』
発売当時価格5800円が買取価格6万円
〈 なぜ人気?〉
真相は不明だが、発売中止になったとあるタイトルのデータをそのまま流用して作ったのでは? という噂がマニア間で広まったことが価格高騰の要因。後に『Wii』などでも移植が発売されたが、元祖であるPS2版を欲しがるコレクター需要はいまだ高い。
実況者、互換機の存在も価格高騰の一因に
レトロゲームの人気は、発売当時に現役で遊んでいた大人世代に限定されるものではない。
最近では、ゲーム実況者やVTuberなどが取り上げたレトロゲームが、イレギュラー的に値上がりするケースも少なくない。
また、現在ではファミコンやメガドライブなど、すでに特許権が失効したハード用のソフトを、メーカーの垣根を越えて起動できるハード(通称「互換機」)が、ゲーム専門店や家電量販店で販売されている。古いゲームソフトを今でも気軽に遊ぶことを可能にした互換機の存在もまた、レトロゲームの再評価ならびに中古市場の活況の一因になっているという。
最後に、レトロゲームの買取価格を上げるポイントを聞いてみた。
「箱や説明書などの付属品が、きれいな状態で揃っていることですね。もちろん、ソフトがちゃんと起動して遊べることも重要です」(BEEP・村田さん)
若い頃にゲームに熱中した経験がある人は一攫千金のチャンス。今こそ押し入れの段ボールを開封する時だ!
取材・文/鴫原盛之(日本デジタルゲーム学会ゲームメディアSIG代表)