スローショッピング
キャッシュレス決済やセルフレジが普及し、レジ会計の効率化が進む一方で、時間を気にせず買い物ができる「スローショッピング」を取り入れるスーパーが増えてきていることをご存じだろうか? 最初に導入したのは、岩手県を中心に展開するスーパーマーケット「マイヤ」。同県で長年認知症の治療に携わる、こんの神経内科・脳神経外科クリニック院長・紺野敏昭さんの発案だった。
「認知症になると買い物に行かなくなる人が多いんです。多く聞かれる理由は『レジで戸惑って、後ろの人から〝遅いなぁ……〟という顔をされてしまう』というもの。『ゆっくり買い物をしたい』という患者さんの希望をかなえてあげたいという思いから行き着いたアイデアでした」(紺野さん)
ボランティアスタッフが一緒に売り場を回ってサポートしながら、専用レジで会計し、イートインスペースの一角に設けられた「くつろぎサロン」で交流し合う。そんな取り組みが話題となり、今では様々な企業が「スローショッピング」の導入に動き出している。認知症に限らず、高齢者や子育て世帯など、〝焦らず買い物をしたい〟というニーズに応えるこのシステムは、この先も広まりそうだ。
今後広く一般化するためには、医療・介護業界や行政だけでなく、企業や地域住民の相互的な協力が必要。地方では、スーパーへの交通手段がない人々への対応も課題だ。
●認知症当事者への全国アンケート
国際大学 グローバル・コミュニケーション・センター「認知症の人にやさしい まちづくりガイド」より
人と会う機会が減り、自分の財布を持って買い物をすることもなくなると、孤独感を抱え閉じこもりがちに。病状が進んでしまう要因にもなる。
日本では岩手県のスーパーマーケット「マイヤ」が初導入!
自ら記入した買い物リストをもとに、ボランティアスタッフがパートナーとなってショッピング。
買い物をしてほかの利用者と交流することで、明るさや意欲が増すなど、メンタル面でのプラスの効果が。
大手のイオンも一部で導入!
イオンリテールでは、車椅子や盲目の方向けの「サポートレジ」を導入。
スローレジを導入するスーパーマーケットの一例
●イズミ(広島県)→「ゆめタウン南行橋店」をはじめ、中国・四国・九州の60店以上に導入。
●福井県民生活協同組合(福井県)→ 全10店舗に「ゆっくりレジ」導入。
●マックスバリュ岡田店(三重県)→ 2022年7月より月1度、導入。
●イオンリテール(千葉県)→ 全国240店舗で導入。
取材・文/坂本祥子