岸田文雄首相が年頭に「異次元の少子化対策」を表明したことを受け、様々な子育て関連の予算が倍増される。だが、日本の少子化は今に始まったことではない(Data1)。コロナ禍の影響を挙げる声もあるが、それ以前も出生率は右肩下がり。また結婚願望も先進国の中では極端に低いわけでもなく(Data2)、日本よりはるかに結婚願望が低いスウェーデンの出生率は1.66(※)で、日本より高い。つまり「非婚率の高さ」も、直接的な理由ではないようだ。
ではなぜ日本の少子化は解決しないのか? ヒントとなりそうなのが、これから日本の社会を支える10代の意見。Data3を見ると、将来の子供について「持ちたいと思う」という願望は35.7%あるのに、「実際に持つと思う」が12.4%に激減。つまり子供が欲しくないわけではなく、欲しいけれども難しい。そう思わせてしまっているのが、日本の社会の現状だ。
データによると彼らがそう思う理由は、金銭面の不安によるところが大きい。であれば異次元の少子化対策による予算の倍増は、一応理にかなっている。欲しくないという人がこれ以上増える前に、まずは解消できる不安から対策するべきだ。
Data1|途中までゆるやかに回復も……2018年から低下傾向が顕著に
■ 過去10年の合計特殊出生率推移
2015年には2年ぶりに出生率が上昇し、1.46に。この数値は1994年の1.50以来となる高い水準となったが、以後ゆるやかに下降中だ。
Data2|日本人の結婚願望は他国に比べて、極端に低いわけではない
■ 早く結婚して自分の家庭を持ちたい
内閣府「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査 (平成30年度)」より
日本と韓国は結婚願望の傾向がかなり似ているが、韓国の出生率は日本より深刻な0.84。結婚願望が先進国で一番高いアメリカは1.64で、スウェーデンの1.66より低い(※)。
※いずれも2020年の数値
Data3|「子供を持ちたいけど……」日本の10代がためらう深刻な背景
■ 将来、子供を持ちたいですか?(17~19歳男女対象)
男女別のデータでは「将来、子供を持ちたい」と答えた男性は35.9%で女性は35.4%。どちらもほぼ変わらない結果に。
■ 実際に子供を持つと思いますか?(17~19歳男女対象)
「子供を必ず持つ」と答えた男性14.7%に対して、女性でそう答えたのは10.0%。女性のほうが出産に対してシビアだ。
すべて2023 日本財団「18歳の意識調査」より
■ あなたが将来、子供を持たないと思う理由について、あてはまるものを全て選んでください。
全体的な不安感は男性よりも女性のほうが大きい傾向に。一方男性は「精神的な不安」より「パートナーがいない」ほうが大きいようだ。
すべて2023 日本財団「18歳の意識調査」より
取材・文/高山惠 イラスト/トーマス・オン・デマンド