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【ヒャダインの温故知新アナリティクス】熱海の再ブレークから思い出す清里の悲しみ

2023.06.25

熱海

 最近、熱海が熱いらしいですね。若い人からご年配まで観光地として人気が再興しているようです。私の周りにいるアッパー層の皆様やハイソな方々も口を揃えて熱海がいい、と。

 かくいう私も、昨年『久保みねヒャダ』の企画で熱海に1泊したのですが、以前思っていた〝廃れた温泉観光地〟のイメージはほぼ影を潜め、丘の上に登ればさながらハワイのような眺望。美術館周りは映えスポットが満載で、圧倒的におしゃれです。駅前の商店街はテーマパークのようにお店が並び、めちゃくちゃ楽しいです。前述のアッパー層の人になぜ熱海がいいのか、と聞いたら夏は意外に涼しくて冬は暖かいらしいんですね。しかもマンションでも温泉が出る、と。そりゃ昔からみんな別荘作りたがりますよねえ。

 さて、旧来の熱海のイメージといえばでっかいバスに乗って100人単位の社員旅行でやってきて、浴衣着て大宴会、その後はおねえちゃんのお店に行ってムフフみたいな感じじゃないでしょうか。パワハラ、モラハラ、セクハラを想起させる、〝今の子〟たちが嫌う要素が満載の場所だったと私は記憶しております。実際2011年には観光客数が最低を記録したものの、その後街ぐるみの方向転換でV字回復したとのこと。一度ついた悪評を払いのけるのって、どの業界でも大変ですからその努力は尊敬に値しますね。

熱海

下積みなしでいきなり大スターになった清里の悲哀

 そこで思い出すのが清里。山梨県の高原にある清里が『anan』や『non-no』に取り上げられると若者たちで大にぎわい。竹下通り並みに人であふれている映像を見たことがある人も多いのでは。造形がすばらしいミルクポットでソフトクリームやお土産が売っていたり、ビートたけしさんをはじめとしたタレントショップもできて、冬はスキーブームも相まって、えぐい人だかりだったとか。当時の若者が大挙して訪れた「高原の原宿」。今ではすっかり「高原の廃墟」。当時のミルクポットらへんのテナントはほぼ撤退、取り壊されることないまま『バイオハザート』の世界のようにむなしく風に吹かれております。

 一方、該当地域を離れるとカフェやレストランなどが集まる「サンメドウズ清里」があったり、おいしい乳製品が楽しめる「清泉寮」があったりと、実は廃墟となっているのは一部で、しっかり観光地として楽しめるようになっているんです。私も好きで年に1回は必ず行きますし、週末はファミリー層でそこそこ混んでいるのですが、前半で書いたように一度ついた悪評はなかなか拭えないのも事実。清里=廃墟、というイメージは発展の妨げにもなりますし、なによりいまだに廃墟が存在するので仕方ないよね、って感じです。

 さて。なぜ熱海がアップデートできて、清里はできなかったのでしょうか。さらに高原避暑地という意味では類似地であるはずの軽井沢のようになれなかったのでしょうか。まずシンプルな理由としては交通の便が悪いこと。熱海も軽井沢も新幹線停車駅です。一方、清里駅はめちゃくちゃ不便。そりゃ気軽に行けないわ。

 次にマンパワーも不足してるんでしょう。熱海のV字回復のように旗振り役がいて計画的に街を変革してやろうという動きがなかったのでしょうね。そして、ここからは私見ですが清里の瞬間風速が強すぎたのではないでしょうか。なんだかんだ熱海や軽井沢は観光地としてスポットライトが当たってから長い歴史があります。しかし、清里はバブル期にいきなりスポットライトばーん! 若者どーん! というまさにバブル。ぷっくり膨らみどかんと弾けたシャボン玉。観光地としての基礎体力をしっかりつけない間に大スターになっちゃった、みたいな。まるで芸能人とかYouTuberと一緒ですよね。下積みなしでいきなり大スターになっちゃった皆さんのその後、というのは大概悲しかったりします。それは瞬間風速が強ければ強いほど風がやんだ時の静けさはむなしいものです。しかし、私は思います。一度花を咲かせた実力のある土地がこれで終わるわけがない、と。「清里再ブレーク!」みたいな記事がネットに躍る日を私は信じています。まずはでかいサウナ施設を作りましょう、清里!

文/ヒャダイン

ヒャダインヒャダイン
音楽クリエイター。1980年大阪府生まれ。本名・前山田健一。3歳でピアノを始め、音楽キャリアをスタート。京都大学卒業後、本格的な作家活動を開始。様々なアーティストへ楽曲提供を行ない、自身もタレントとして活動。

※「ヒャダインの温故知新アナリティクス」は、雑誌「DIME」で好評連載中。本記事は、DIME7月号に掲載されたものです。

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