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ドコモ、au、ソフトバンク、楽天モデル、今期の決算で勝ち組になったのは?

2023.06.23

NTT株の25分割、その狙いは?

房野氏:決算そのものについては、どう思われましたか?

法林氏:NTT株の25分割はすごく面白いと思います。

房野氏:25分割とはつまり、どういうことなんでしょう。

法林氏:株は単位株(単元株)っていう売買する単位があって、多くの株は100株単位で購入する。NTT(日本電信電話)だと、1株4000円くらいなので、100株で40万円くらいんの資金が必要。この1株を25分割するので、25分の1くらいの値段で買える。単純計算で言うと、1万6000円くらいで買えるわけ。そして今、100株持っている人は2500株になるわけですよ。つまり単価が下がるので投資はしやすくなる。
※記事内の株価は2023年5月下旬を目安としています

房野氏:そうですね。資産家じゃなくても、若い人でも買える。

法林氏:企業が自社の株を買ってくれている人が何歳かというのは基本的にはわからない。それを証券会社などの調査で聞いてみたら、NTT株を持っている個人投資家は60代以上が8割だったということで、どう考えても個人投資家の数から考えると不健全なわけです。NTTのファンを増やすために25分割する。25分割ですからね。2分割とか3分割はちょいちょいありますけど、25分割は相当思い切ったなと。NTTの島田社長が音頭を取ってやっているのか、それとも他からアドバイスがあったのかわかりませんが、あれだけ自信を持って話していたので、相当やる気なんだなって思いました。今までのNTTからしたら本当に考えられない驚異的な話。株の数が増えると管理が面倒くさいんですよ、一時的に結構荒れるので。ただ、基本的には好材料なので、今後が期待できる。

日本電信電話株式会社 代表取締役社長 社長執行役員 島田 明氏

石川氏:来年NISAの仕組みが変わるので、金融商品が色々変わってくる話もある。

法林氏:もしかすると、KDDIも株価は4000円ちょっとだし、もしかしたらNTTに追従して分割するかもしれない。ソフトバンクは、グループは別ですけど宮川ソフトバンクは1500円ぐらいなので……

石川氏:相変わらずですね。

法林氏:そうだね。でもまぁ、配当をちゃんと出しているからいいんじゃないのかな。

 1株あたりの値段って、5000円前後が目安とされている。もし5000円の株を100株買うとすると、投資額は50万円になる。50万円って結構大きい投資なので、東証としては「もうちょっと低い額で投資できるようにしてください」と思っている。どれが正解なのかはわからないけど、記事によってはだいたい10万円くらいで買えた方がいいと言う人もいる。それをNTTは1万6000円で買えるようにするわけだから、相当な意気込みを感じる。KDDIも同じことをやる「かも」しれない。全然確証はないけど。過去にKDDIになってから2回くらい分割はしているはずなので。2分割、3分割かな。

石川氏:楽天は分割しなくてもどんどん買いやすくなっていますね。

法林氏:楽天は2022年の料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VI」の0円見直しからユーザーが離れていって、しかも赤字がどんどん続くので700円くらいまで下がったんです。2023年は600円台が続いていて、KDDIとのローミング見直し、人口カバー率が99.9%になりますといったのが2023年5月12日金曜日の午前の話。午後の相場で株価が700円を超えたのに、3000億円分の増資をするというニュースが14時50分に流れた。

 通常、この手のニュースは相場が閉まる15時を過ぎてから発表するのが暗黙の了解なんだけど、見事に某社がすっぱ抜いた。その影響を受けて、せっかく上がった株価がまた下がってしまった。新株を発行するわけで、既に株を保有している人にすれば、1株当たりの価値が希薄化するわけですよ。ということもあって、楽天、困りました、というお話です。

石川氏:5月12日は700円くらいだったのが、その10日後には600円を切ってますからね。ただ、とりあえず3000億円弱なんとかなりましたけど。

法林氏:借金だからね。

石川氏:あと3年で1兆円近い社債を返さなきゃいけないので、結構厳しいところだと思うし、足元で楽天モバイルはユーザーが全然増えていないので、大丈夫じゃないなっていうところはあります。MNPワンストップ申請が始まって、楽天のサービスを利用している人はワンクリックで楽天モバイルに契約できる「ワンクリック申し込み」に期待かなってところです。でも、ワンクリックでいきなり楽天モバイルに契約できるっていう、逆に怖いところもある。

石野氏:あれも一歩間違えるとワンクリック詐欺呼ばわりされかねないなと(笑)

房野氏:でも解約も簡単ですから。

法林氏:楽天モバイルの人口カバー率が98%以上まで来ているので、エリア内での通信機会が多い人なら、楽天モバイルに乗り換えてもそんなに苦労しないと思います。また今回、ローミングも追加されたので、「楽天ペイで払おうと思ったけど圏外だった」ってことは、たぶんなくなると思う。

房野氏:私は今回の「Rakuten最強プラン」はお勧めだと思っています。

石野氏:それはそうです。矢澤さんが発表会の前に記者や媒体の編集長にあいさつに来たくらいだし。自信があったんだと思います。

楽天モバイル株式会社 代表取締役社長 矢澤 俊介氏

新ローミング協定はWin-Win

房野氏:楽天モバイルは2022年度に関しては、結局どのくらいの赤字になったのでしたっけ。

石野氏:どれくらいだったかな……

法林氏:グループ全部で3500億円くらいだったかと(損益は3728億8400万円の赤字)

石野氏:一応、赤字はピークアウトしている。徐々に赤字幅が減っていっている感じではあります。

房野氏:2023年度に黒字にできる可能性は?

法林氏:それは無理です。

石川氏:2023年の第1四半期決算短信に「モバイル事業単体での2023年中の単月営業黒字化は困難だと考えている」と記載がありました。

房野氏:それに関して株主は……

法林氏:それは怒ると思いますよ。

石川氏:もともと誰も信じてなかったですけどね。

法林氏:でも、経営者が口に出したことは、本当は守らないといけない。日本だから、なんとなく済まされているけど、アメリカだったら絶対あり得ない。日本の株主は優しいね、みたいな感がある。

石野氏:新ローミング協定がどういう条件になったのかわからないですよね。

石川氏:元々が1GBあたり500円で、高額すぎだったよね。

房野氏:「MVNO的に帯域で契約したんじゃないか」と推測しているツイートを見ました。

石野氏:契約形態が変わった可能性はありますよね。ギガビット単位じゃなくて、総額でいくらという感じにするとか。じゃないと、いくらローミングエリアが減っているとはいえ、使い放題にするのはリスクが高すぎると思うので。

法林氏:大丈夫。KDDIは貸す800MHz帯の帯域制限をするので、たいしてスピードが出ない。

房野氏:800MHz帯は帯域幅が細いですよね。

石野氏:スピードは出ないけど、やっぱり青天井で使われちゃうと支払いが……っていう感じもあるので。

法林氏:制御するから。

石川氏:まぁ、ある程度定額になっているか……ユーザー1人当たりいくら、というのはないと思う。

石野氏:絶対変えていますよね。お互いが納得ずくめの感じだった。あの妙な、髙橋さんと三木谷さん2人で示し合わせたかのように「コメントしないってことになっているんで」というコメントが(笑)

石川氏:KDDIの決算を見ても、あんまり儲かっている要素がない。結局、3Gをやめたから800億円がポンと上がっていて、MVNOの接続料収入が下がっている状況もある。本当は6年くらいかけてゆっくり入ってくるはずだった楽天モバイルからのローミング収入がいきなりなくなってしまうことになったので、そこを「もう2、3年、おいしい蜜を吸わせてよ」みたいな感じだし、楽天モバイルとしても設備投資が年間1000億円以上かかるので、渡りに船という感じだと思うけど、でもそれでいいのか総務省、という感じもする。

法林氏:総務省は楽天モバイルを救いたいだろうから、ああいう形でまとめたっていうのもあるだろうし。どういう条件かはわからないけど、とりあえず楽天モバイルに対してネットワークを貸してあげることで、KDDIとしては総務省に対して……

石川氏:恩は売れますね。

石野氏:KDDIにしても、いきなり600億円マイナスになるのは困るだろうし。

法林氏:でも裏返して考えるとわかるのは、ローミングの費用が高くて、「片っ端からローミングをやめていきます」と言ったのは楽天モバイル。それで「ヤバいな、そうしたら圏外が増えるな」ってことで一生懸命基地局を建てて、人口カバー率98%を超えるところまで到達したので、99.9%に強化できる新ローミング契約を行えた。やっぱり、耐えて基地局をある程度建てた上での話じゃなきゃいけない。そういう意味では最初の頃、楽天モバイルはだいぶローミングに甘えていたんだなと。見積もりが甘かったんだなという感じがしました。

石川氏:これから人口カバー率99.9%を達成しようとしたら、人が住んでいないような場所にも基地局を作らなくてはいけないし、それは赤字要因でしかない。

法林氏:宮内さん(ソフトバンク代表取締役会長)だっけ? 人口カバー率96%から上げていくには兆単位のお金がかかるって言っていたからね。

石川氏:そこに気づいたんだと思います。

法林氏:もう1つ、業界の動向として「インフラシェアしましょうか」という話が出てきているのは事実。悪い話ではないと思います。

石川氏:KDDIは最近、八方美人感がある。NTTが提唱するIOWNに近づき、ソフトバンクと5Gネットワークの地方展開を推進する5G JAPANを設立し、楽天モバイルにはローミングを提供し、IIJには出資をしている。いろんなところとまさに「協調」している。

房野氏:髙橋社長は「協調」が好きな印象があります。

石川氏:パートナーを作るのは非常にうまい印象。はっきり「ネットワークは競争ではなくて協調時代」と発言しているので、上手いこと付き合っているけど、某キャリアの人が「ああいうことをされると、ちょっと警戒しちゃうよね」と。今までうちと仲良くやっていたのに、他社にも協調されると……みたいなことを言っていました(笑)

インフラシェアリングは進むが設備投資は終わらない

房野氏:ところで楽天モバイルがローミングをやめることでKDDIが600億円の減収になるというのは……

石野氏:2024年3月期にそれくらいの影響があると予想していた。ローミング収入が減っていくことは織り込み済みなんですけど、高橋さんが想定していたよりも、楽天モバイルが急にパートナー回線エリアを減らしてきたんですよ。

法林氏:「片っ端から各都道府県別にローミングをやめていきます」と楽天モバイルが言い出したので、いきなり600億円、ガンと減っていく感じになりそうだったところで……

石野氏:KDDIが「あー、ちょっと、ちょっと待って」と(笑)

石川氏:本来、楽天モバイルは6年間かけてネットワークを作ろうとした。だけど、KDDIのローミング料があまりに高すぎるので、これはシャレにならんと。ローミング費用が楽天モバイルの赤字要因になっているから、基地局をたくさん建てて自社エリアを作ろうということで設備投資を3年前倒しした。なので設備投資費用がかさんで赤字もドンと膨らんで大変なことになっている状況。ただ、この先、人口カバー率を99%にするには兆単位のお金がかかる。KDDIとしても、いきなりローミング収入が減るのは困る。料金値下げが要因で下がっていた業績がなんとか回復傾向にあって、いい流れを続けたいので、とりあえず新ローミング協定で手を打ちましょうかっていう話し合いがあった、という感じだと思います。

石野氏:三木谷さんがネットの評判を気にしすぎて、モバイルのサービスを始める前にパートナー回線エリアの高速データ通信容量を2GBから5GBに上げちゃったのが、そもそもの原因。

法林氏:KDDI側の視点もある。髙橋さんがなんとなく匂わせていたけど、4Gネットワークの稼働率をある程度上げなきゃいけないところがある。5Gにユーザーが動いていくと、4Gの例えば800MHz帯もそうだけど、使う率が下がっていくわけです。でもそれはコスト的にはマイナスなので、「そこはお貸ししますよ」っていうニュアンスもある。高速道路に車が集中して、一般道が使われていない状態にするよりは、ちゃんと走らせて、でも車線の数は限られているのでスピードは出ませんよ、みたいな感じで貸せば売上になる。

房野氏:楽天モバイルの大規模設備投資の終着点の目途ってあるのでしょうか。

石川氏:ないですよ。ローミングはいつかやめざるを得ない。あと、ユーザーがどんどん増えていけば、それだけ使う人が増えるので、やっぱり5Gの基地局をたくさん建てていかないといけないし、また周波数の割当てがあったら、それをもらって持っている周波数帯と束ねてキャリアアグリーゲーションするとか、今度はネットワークの「面」ではなくて「深さ」を作っていかなくてはならない。それはそれで設備投資が必要になるし、他の3キャリアも年間数千億円単位で設備投資し続けている。楽天モバイルに、これでもう設備投資はおしまいという終わりのタイミングが来るかって言ったら、たぶん来ないんじゃないかな。

石野氏:5Gも当然必要。トラフィックが多くなって容量がどんどん足りなくなってくるので。

法林氏:当然、電波があればそれで通じるわけではなくて、その後ろには光ファイバーが必要になる。それをどうやって持ってくるのかっていう話になると、ソフトバンクもNTTにファイバーを普通に借りているわけです。auはauひかりやTEPCOが持っていた光回線があるけれど、当然、それだけでは足りないので、NTTグループからダークファイバーを借りている。それこそ、山の中にファイバーを通します、みたいな話になってくると、それはすごくコストがかかる。だったらそこはStarlinkで、となるわけですよ。KDDIはStarlinkを契約して自分たちのバックホールで使っているけれど、もしかして「楽天モバイルさんもここに電波出します?」みたいな話は、ありえなくはない。

房野氏:1本でいいんだから4社でシェアしましょう、みたいな話がシェアリングってことですね。

法林氏:鉄塔を1つ建てて、干渉しない範囲でそれぞれのアンテナを付けて、そこまでのファイバーはNTTグループの持っているファイバーを1本引くんだけど「4社で分けましょう」ってことができる。

房野氏:それこそ総務省が言って、人口カバー率に対しての設備投資はもういいよ、みたいなことにしてあげた方が……

石野氏:実際、進んでいますね。

法林氏:全体的な流れとしては、今そっちへ行こうとしています。ただ、割り当てに際しては人口カバー率の計画を出せって話になるので、そこは満たさなきゃいけない。僕らメディアも気をつけなきゃいけないんだけど、総務省って周波数を割り当てたら終わりだと思って、2000年に1回、割り当てに失敗している。割り当てられた会社が潰れて、周波数が宙に浮いてしまった。計画を出させて、それを進めていくことは大事なこと。楽天モバイルが割り当てを受けた時の条件は最低限、達成しないといけない。それは5Gもしかり、他社もしかり。

房野氏:ちゃんと使わないとダメですよ、みたいな感じになっているんですね。

法林氏:周波数だけもらって自分では使わず、他者に高額で貸し出すようなことになっては困るので。

石川氏:楽天モバイルはこの先、プラチナバンドをどうするかですね。割り当てを希望するのでしょうけど、希望して取れたら計画通りに設備投資しなきゃいけなくなるので、できるだけ時間はかけて先送りしたいところもあるし。

法林氏:結局、携帯電話事業って最終的に何がいいのかって話になってくるんですよ。設備投資は必要だし、顧客獲得のための施策もしなきゃいけないけど、企業として、携帯電話事業をやることで何が一番うれしいのかというと、ボーダフォンを買収した時に孫さん(ソフトバンクグループ 代表取締役 会長兼社長 孫 正義氏)が言っていたけど、継続的にお金がずっと入ってくることなんですよ。そうすると継続的にお金を入れてくれる母数をどうするかって話になってくる。楽天モバイルは今、継続的には入ってくるけど母数があまりにも小さい。契約回線数が他社の10分の1ですからね。

ソフトバンクグループ株式会社 代表取締役 会長兼社長執行役員 孫 正義氏

房野氏:例えば3000万近い楽天カードの会員が楽天モバイルを使うようにする、というのは正しい方向だと思うので、クループ内のユーザーを深掘る施策がいいと思うんですが。

法林氏:楽天グループとして現実的にできるかどうかわからないですけど、例えば「楽天カード会員は全員、楽天モバイル回線をあげます」とかね。そういうことは、できなくはない。

石野氏:孫さんはかつて、ADSLモデムを配りましたよね。

石川氏:唯一、可能性があるのは「ワンクリック申し込み」。あれって、楽天銀行とか楽天カード、楽天証券では、口座開設にあたってすでに本人確認書類を保有しているので、ワンクリックで簡単に契約、開通できますよという。

法林氏:最初はデータ通信だけね。

石川氏:2か月後くらいには音声契約も対応すると言っていたので、8月ぐらいにはできそうですけど、それでうまいこと回せるようになったらアリなのかな。なかなかポイントでは響かない人も多いので、例えば楽天モバイルユーザーは楽天銀行の金利をアップルの預金サービスと同じ4.15%にしますよ、とか(笑) それぐらいのことをしたら……

石野氏:それは契約するわ。

石川氏:でしょ。そっちもありだけど、難しいかなと思いつつ。何かそこで楽天経済圏のメリットを出せると大きいような気がする。

法林氏:銀行の金利を上げるとか、カードのポイント還元を増やすとか、そういうのって開業してから3年間にできたことじゃんっていう話。グループとしてのマーケティングがちゃんとできているのか疑問を持ってしまう。

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