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ドコモ、au、ソフトバンク、楽天モデル、今期の決算で勝ち組になったのは?

2023.06.23

■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議

スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回は、通信キャリアの決算について会議します。

ドコモのネットワーク品質低下の理由は?

房野氏:2023年5月は通信キャリア各社の決算説明会が行われました。それぞれの業績についてどう思われましたか?

石野氏:各社とも料金値下げでガクンと業績が下がったんですが、5Gを導入して5G端末が増えて、だんだんARPUが下げ止まってきて反転の兆しが見えています。ドコモでいえばギガホ、ahamoが増えているし、ソフトバンクもARPUは下げ幅が小さくなってきている。auもARPU上昇の兆しがある。新規事業も金融・決済を中心に儲かり始めている。そういう中で業績を何とか維持しているというところではないですかね。ざっくりまとめると、そういう感じ。

房野氏:ドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社とも、あまり違いはなかったですよね。

石野氏:方向性は同じ。

石川氏:ようやく値下げによる業績悪化のトンネルから抜け出せそうになってきた。

法林氏:ようやくトンネルの向こうに明かりが見えてきた。そんなにまずい状態ではない。どこかの記事にあったけど、半導体やIT系はもうボロボロだったと。ボロボロだけど今春が底打ちなので、ここからは上がってくるので気にしなくていいとなっていたので、そういうところなのかなと。たぶん大丈夫じゃないかと思います。

石野氏:KDDIの髙橋社長が「今後はUQ mobileでもっと中容量が増える」という発言をしていて、サブブランドでもARPUを上げていく傾向が出てきたのかなと思います。

KDDI株式会社 代表取締役社長 髙橋 誠氏

石川氏:5Gスマートフォンが普及すれば、サクサクデータが流れて使うようになるので……ドコモの通信品質の話もしていいですかね。

房野氏:お願いします。

法林氏:ここ最近、SNSなどでドコモの通信品質が悪いというユーザーの声が増えてきて、確かにそういうところがあったとドコモも認めた。4月下旬に説明会があって、その原因としてドコモは「建物の建て替えやトラフィック増、人流が変わってきたから」みたいな話をしていたけれど、それは他のキャリアも同じじゃないですかと記者に指摘されたら「他社のことはわかりませんが」と。ふざけるなって感じでしたね。

房野氏:おいおいって感じでしたね。

石野氏:散々騒いで良かったなと。

房野氏:石野さんをはじめとする不満ツイートのおかげですね(笑)

石野氏:ツイートより、ある媒体に書いた記事が問題視されたようです(笑)。でも実は相当ドコモとやりとりしていたんですよ。2月くらいからずっと「取材したい」と言っていた。あちらは「本当に品質が悪化しているか確認を」とか互いにやり取りしていて、やっと4月に説明会があった。

房野氏:それにしても、なぜドコモだけこんなに品質の悪さが指摘されているのでしょうか。

法林氏:ドコモもはっきりと回答していないし、説明会で言われた内容しか聞いていないのでわかりませんが、NTTの管理の仕方になってきたのかなっていう感じはちょっとします。

石川氏:言い方が悪くなっちゃうかもしれないけど、ドコモのネットワークがガラパゴスネットワークじゃないけど、ドコモが仕切って富士通、NECとかで作っていることで、自分たちの見識しかないのかなと。ソフトバンクとKDDIは海外ベンダーも関わっているところがあるので、例えば、複数のアンテナを使ってデータの送受信を行う「MIMO」を発展させ、送信用のアンテナ数を劇的に増やして活用する次世代通信の要素技術、「Massive MIMO」がいいとか、Massive MIMOで4Gにちょっと余裕があるから、そこの周波数を5Gに転用するとか、そういうノウハウで一気に5Gのエリア展開ができる流れになった。その違いが出ちゃっているのかなっていう気がしています。

法林氏:元々ドコモはネットワークの作りが堅実なんだよね。

石川氏:そうですし、5Gへの移行ですごく手こずっているじゃないですか。

石野氏:毎回そうですよね。

法林氏:4Gへの移行の時もそうだった。何度か話しているけど、3Gでデータ通信の使い放題(auのEZフラット)が始まった時、KDDIは元々使い放題が実現できるようにネットワークを作っていた。ドコモは高品質なネットワークを構築したので(笑)「使い放題にすると破産するのでやめてください」といって、高額な料金プラン(月額6700円・税別の「FOMAプラン67」)を契約している人たちだけが使い放題の「パケ・ホーダイ」を選べたという時代があった。それと同じで、今回もネットワークを品質重視で作っていた、もしくは自前重視で手堅く作っちゃったので融通が利かなくなってしまったのかも。特に今回はNTTドコモが完全にNTTの子会社化されて、人が相当入れ替わっている。それもちょっと影響があるのかなっていう感じはする。

石野氏:NEC、富士通の装置もそうなんですけど、Massive MIMO非対応しかり、DSS(Dynamic Spectrum Sharing:4Gの周波数を5Gと共用する技術)非対応しかり、トレンドの機能をカバーしていないところがある。Open RAN対応でやっているんですけど、グローバルの潮流とちょっと違うところもあるかなと。それと、決算説明会で各社に質問してみたんですけど、ネットワーク品質に対する考え方が違うというか。ソフトバンクがすごいなと思ったのが、社長の宮川さんを中心に毎週のようにネットワーク会議をやっているそうです。でも、ドコモからは同じ話が聞かれなかった。そこはやっぱり技術系の叩き上げできた宮川さんの意地が生きているところなのかなと思います。

ソフトバンク株式会社 代表取締役 社長執行役員 兼 CEO 宮川 潤一氏

石川氏:あとやっぱり、KDDIのネットワークセンター。東京も大阪も見たんですけど、目立っていたのがTwitterの画面。巨大ディスプレイに大きく表示されていた。

法林氏:あれ、すごいよね。

石川氏:ツイートはめっちゃ見てる。SNSの声を気にしまくっている。だから、たぶんいち早くどこが悪いのかわかっている。一方で、NTTのネットワークセンターを見ても、そういうものはどこにもなかった。聞いたら別のところでSNSの投稿は見ているという話だったけど。なんかNTTは自分たちのシステムをちょっと過信……たぶん自信があるんだろうなぁ。

房野氏:プライドが高いのかな。

石川氏:「瞬速5G」だから5Gにつながればこんなに速いぜっていう風に言っているけど……

房野氏:つながらないんですよね。

法林氏:いや、つながるんだけど、流れないだけ(笑)

石川氏:ソフトバンクとKDDIは、4G周波数の5G転用もあるので、とりあえず5Gにつながっているように見えるだけ、みたいな感じだけど、それをドコモは「優良誤認だ」「〝なっちゃって5G〟なんてけしからん」とか言っておきながら、結局ドコモの方がなんちゃって5Gじゃん、みたいな。

法林氏:いろんなところでスピードテストをした感覚からすると、実家に帰って、神戸の三ノ宮駅の駅前で測った時のギガ超えはすごいのよ、確かに。5Gのスポットに行けばすごいのはわかるんだけど、日常の移動でこれだけダメなのは、さすがにちょっと。

石野氏:エリアじゃなくて、スポット(点)なんですよね。

石川氏:そう。KDDIの髙橋さんは鉄道沿線や生活動線を5G化すると言っているんですけど、ドコモはとりあえずスポット。ドコモショップでミリ波がつかまるとか、5G SAは東京駅前だけだし。

法林氏:そういうのもあって、まぁ、仕方ないんだけど、ドコモさん、ネットワーク頑張ってねっていうところ。

石野氏:さっきの宮川さんの件ですが、「全国を666のメッシュに区切って、その品質を日々チェックして」ということをおっしゃっています。なんというか、ネットワーク品質に対する語りの熱意が違ったというか。

石川氏:ソフトバンクはプラチナバンドがない頃からネットワークに苦労してきて、宮川さんが散々対策をやってきた。そして今、社長なので。

法林氏:プラチナバンドを獲得する前に13万局作った。

石川氏:Opensignal(独立系のモバイル調査会社)の統計が正しいかどうかはわからないけど、アプリケーションのユーザー体験でナンバーワンになったというのが象徴的だった気がします。「ソフトバンクはつながらない」なんて話は、今では考えられないくらい。通信速度もソフトバンクが1番速いんじゃないかってくらいだし。

法林氏:昔は相当指摘されたからね。「やっぱりソフトバンクは圏外」とか、ザラにあった。

石川氏:「海外はつながるけど国内はつながらない」とか。

法林氏:「アメリカでしかつながらない」みたいにね。

石川氏:地道な努力をしてきたというのが大きいですね。

石野氏:過去に通信品質のことで批判したことを、ソフトバンクへ謝りにいきたいですよ(笑)

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