旦那は許せてもアノ女はだけは許せない！まさかの最高裁までもつれ込んだ不倫裁判の結末

こんにちは。

弁護士の林 孝匡です。

宇宙イチ分かりやすい法律解説を目指しています。

今回は浮気の裁判例をザックリ解説します。

旦那は許せてもアノ女だけはゼッテー許さない！事件です。

▼ 本日の目玉

・自治会のソフトボール部で芽生えた恋
・2つの夫婦が家族ぐるみの付き合いをしてたが
・浮気に発展！
・「金銭を請求しない」との条件で夫婦は離婚
・浮気相手がコレに注目して
・「私が払うカネも減ってるはずだわ！」

高裁
「うん、減ってるね」

最高裁
「ドアホ！」
「浮気相手が払うカネは減らねー！」

以下、分かりやすくお届けします（最高裁 H6.11.24）

※ 争いを一部抜粋して簡略化
※ 判決の本質を損なわないよう一部フランクな会話に変換

人間模様

▼ 夫婦

・結婚8年目
・夫：修一（仮名）
・長男（7歳）
・次男（5歳）

▼ 浮気相手の女性

・美咲（仮名）
・長男（5歳）
・次男（2歳）

↑ 浮気がスタートした時点をもとにザックリ算出してます

どんな事件か

▼ ソフトボールで恋が芽生える

なんと！

妻と美咲はママ友でした。自治会の女子ソフトボール部で知り合って親しくしていました。

自治会には、男子ソフトボール部もありました。修一はそこに入りました。さらに、美咲の旦那も入っていました。

2つのカップルは家族ぐるみの付き合いをしていました。なのに浮気に発展する、もはやホラー映画です。

▼ 男と女の関係や！

ソフトボール部で出会って5年くらい経ったときのことです。

ーーー 修一さんから、どんなことを言われたんですか？

妻
「夫から『オレと美咲は男と女の関係や』『美咲の口から聞くよりオレの口から聞く方がよいやろ』と言われました」

妻
「それから数日して、美咲から電話がかかってきました」

ーーー マジですか！謝罪されたとかですか？

妻
「いえ、美咲は私に『アンタの旦那から聞いたけど、私との関係を聞いたんやろ』『私もアンタに言いたかった』『男と女の関係や』『アンタの旦那は〈子供はどうにかなる、結婚しよう〉と言った』と言ってきました」

ーーー 宣戦布告ですね…。

妻はショックを受け、数日後には修一と別居しました。約半年後には離婚。

その約1年後、妻が訴訟を提起します。

美咲に慰謝料を請求。

ジャッジ

最高裁までもつれました。結果はこんな感じです。

地裁
「美咲は300万はらえ」
↓
高裁
「いや、150でいいよ」
「妻は修一を許したから、その分だけ美咲の賠償額も減るっしょ」
↓
最高裁
「ドアホ！減らねー！300万だ」

順番にいきましょう。

▼ SEXしたのか？

3人全員が裁判所で尋問を受けるという泥沼っぷりです。

ーーー 美咲さんと不貞関係はあったんですか？

夫
「5回はありました」

1. 「美咲が前の旦那と別居した後のことです。私の自宅でしました」
2. 「翌月も私の自宅で」
3. 「その4ヶ月後は、引越しした私の自宅で」

ーーー スリーアウト・チェンジ！

夫
「翌月、ラブホで」
「その3ヶ月後、私の自宅で」

ーーー 美咲さん、修一さんはこう言ってますが？

美咲
「修一とSEXしたことはありません」
「恋愛感情を抱いたこともありません」

ーーー 裁判所さん、どうですか？

裁判所
「少なくとも5回の肉体関係はあったと認定します！」

裁判所は、美咲よりも、妻と修一の証言の方を信用しました。

ほんで、なんぼ？

ーーー 裁判所さん、慰謝料はいかほどで？

裁判所
「300万円です」

〈理由〉
・少なくとも5回の肉体関係
・交際期間
・度合い
・妻が受けたショックの程度
・美咲が妻にTELして話した内容
・夫婦が離婚している

妻は旦那を許してるじゃん！

美咲
「ちょっと待ってください！」離婚調停で妻は修一の損害賠償債務を免除したじゃないですか『互いに金銭その他一切の請求をしない』って。これ、浮気の慰謝料も免除してますよね。ってことは免除した分だけ私の賠償額も減るはずです』

高裁
「たしかに、そうですね。300万円じゃなくて、150万円にしましょう」

最高裁
「ドアホ！妻は旦那の債務を免除しただけ。浮気相手の債務は減らない。なので300まるまる払え！」

■ 注目！
旦那を許したとしてもドロボー猫にガッツリ請求できます。ただし、旦那と何か書面をとりかわすときに、念の為【●●（浮気相手）を免除する意思を含むものではない】といったピシャリ文言を入れるなどしておきましょう。

ーーー 美咲さん、不服そうですが

Y子
「妻は『修一と私が浮気した』というウワサを近所の主婦たちに盛大に振りまきました」
「名誉毀損なので慰謝料請求します」

裁判所
「噂をふりまいた証拠がないっス」

fin.

ではまた次の記事でお会いしましょう！

取材・文／林 孝匡（弁護士）
【ムズイ法律を、おもしろく】がモットー。コンテンツ作成が専門の弁護士です。
webメディアで皆様に知恵をお届け中。「こんなこと解説してくれや！」があれば、下記URLからポストお願いします。
 https://hayashi-jurist.jp（←プロフィールもコチラ）
 https://twitter.com/hayashitakamas1