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一部の直腸がんや悪性リンパ腫の患者で放射線療法を省略できる可能性、米国臨床腫瘍学会発表

2023.07.05

一部のがん患者で放射線療法は省略可能

一部の直腸がんや悪性リンパ腫の患者では、放射線療法を省略できる可能性があることを示した2件の臨床試験の結果が、米国臨床腫瘍学会(ASCO 2023、2023年6月2~6日、米シカゴ)で発表された。

直腸がんに関する臨床試験の結果は、「The New England Journal of Medicine(NEJM)」と「Journal of Clinical Oncology」にも2023年6月4日掲載された。

1件目の試験は、米メモリアル・スローン・ケタリングがんセンターのDeborah Schrag氏らが、局所進行直腸がんの患者を対象に実施したもの。

Schrag氏によると、北米では、局所進行直腸がんに対しては、放射線の骨盤照射とフッ化ピリミジン系薬剤による化学療法(化学放射線療法)の実施後に手術を行うのが標準治療となっている。

今回の試験では、局所進行直腸がん患者1,194人を対象に、フルオロウラシル、ロイコボリン、オキサリプラチンの3剤による術前化学療法(FOLFOX療法)が化学放射線療法の代わりとなり得るのかが検討された。

対象者は、化学放射線療法を行った上で手術を施行する群(対照群)と、FOLFOX療法により腫瘍がベースラインから20%以上縮小した患者は放射線療法を行わずに手術を行い、腫瘍がそこまで縮小しなかった患者には化学放射線療法を行った上で手術を施行する群(FOLFOX群)にランダムに割り付けられた。

最終的に試験を完遂した患者の数は、対照群が543人、FOLFOX群が585人だった。

中央値58カ月にわたり追跡した結果、FOLFOX群の無病生存率(DFS)は、対照群に対して非劣性であった(再発または死亡のハザード比0.92、90.2%信頼区間0.74~1.14、非劣性のP=0.005)。

5年DFSは、FOLFOX群で80.8%、対照群で78.6%とほぼ同等であった。FOLFOX群で化学放射線療法を受けたのは、最終的に10.5%(術前9.1%、術後1.4%)にとどまっていた。

結果についてSchrag氏は、「直腸がんの治療を段階的に縮小し、長期的な毒性を減らしつつ再発や他の疾患がない状態を維持し、標準的な治療を行った場合と同程度の高い治療効果を達成することができた」と説明している。

もう1件の臨床試験は、スイスのEnte Ospedaliero CantonaleのEmanuele Zucca氏らが発表したもの。同試験では、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBCL)患者530人を対象に、化学療法と免疫療法による効果が認められた患者では、放射線療法を省略しても問題がないかどうかが検討された。

対象者の中で化学療法と免疫療法により代謝学的完全奏効(CMR)が確認されたのは268人で、そのうちの136人を放射線療法を施行する群(放射線療法群)に、残る132人を放射線療法は行わずに経過観察する群(経過観察群)にランダムに割り付けた。

その結果、CMRを達成した患者の30カ月時点での全生存率は両群ともに99%であることが明らかになった。また、30カ月時点での無増悪生存率は、放射線療法群で98.5%、経過観察群で96.2%とほぼ同等であった。

がん治療でしばしば用いられる放射線療法は、健康な細胞にもダメージを与えるため、患者の健康に長期的かつ深刻な影響をもたらし得る。

Schrag氏は、「直腸がんの場合、骨盤に照射した放射線が腸や膀胱、性機能にダメージを与える可能性があるほか、後年の骨盤骨折のリスクも上昇する。さらに、放射線療法は不妊や早発閉経の原因にもなり得る。50歳未満で直腸がんと診断される人が増えているため、これは大きな問題だ」とASCOのメディアブリーフィングで指摘している。

ASCOのチーフメディカルオフィサーであるJulie Gralow氏も、「放射線療法は、治療後にさまざまな心疾患を引き起こす可能性がある。われわれが治療を担当した患者でも、30代半ばに放射線療法を受けた後、50歳になるとその影響で心臓に問題が生じてくる。今回の2件の試験は、放射線療法を省略しても、従来と変わらない長期の生存期間を確保できるのかどうかに着目したものだ」と説明する。

そして、「別の治療法が奏効している類のがんでは、放射線療法を回避して副作用を軽減することは可能か、つまり治療を減らせるか、という点が問われている」と付け加えた。

なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。(HealthDay News 2023年6月6日)

Copyright © 2023 HealthDay. All rights reserved.
Photo Credit: Adobe Stock

(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2303269?query=featured_home
https://ascopubs.org/doi/full/10.1200/JCO.23.00903

Press Release
https://dailynews.ascopubs.org/do/prospect-trial-shows-multiple-paths-high-cure-rate-locally-advanced-rectal-cancer
https://old-prod.asco.org/about-asco/press-center/news-releases/radiation-treatment-may-not-be-necessary-after

構成/DIME編集部

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