日本語の動詞のなかには、漢字表記した時の読み方が難しいものが多く存在する。「謗る」もその一つだ。「謗」は「誹謗中傷」という言葉にも使われている漢字だが、「謗る」となると読み方がわからないという方も多いだろう。 そこで本記事では「謗る」の読み方と意味、類語表現も紹介する。
「謗る」とは?
「謗る」の読み方は「そしる」。他人を悪く言う、非難することを指す動詞だ。「そしる」は「謗る」のほか、「誹る」や「譏る」と表記される場合がある。ただし、「譏る」が使用されることはあまりなく、「誹る」と「謗る」のいずれかの書き方をするのが一般的。
「謗る」の使い方
「謗る」は、例えば以下のような形で使用できる。
【例文】
・母から陰で人を謗ることはいけないと教えられてきた。
・資金問題で話題となった政治家は世間から謗りを受けるだろう。
また、「謗る」を使った慣用表現も併せて覚えておくと便利だ。例えば、「謗りを受ける」は「非難を受ける」という意味で使われる。また、「謗りを免れない」という表現は「非難されて当然である」という意味を持つ慣用句だ。「怠惰の謗りを免れない」「軽率の謗りを免れない」などのように用いられる。
そのほか、「謗り言」「謗り口」といった表現もある。ともに「悪口」を指す言葉だ。ちなみに、悪口のもととなる種を表す「謗り種」の読み方は「そしりぐさ」。「そしりだね」と読まないよう注意しよう。
言い換え表現
日常生活の中で「謗る」という言葉が使われることは珍しい。同じような意味を持つ一般的な口語表現としては「貶す(けなす)」「けちを付ける」などが挙げられるだろう。また、「扱き下ろす(こきおろす)」「腐す(くさす)」なども「謗る」と類語関係にある言葉だ。
覚えておきたい「謗」が使われている熟語
「謗」を使った熟語には、よく目にする言葉や難読熟語として有名な語がある。それぞれの読み方と意味を確認していこう。
誹謗中傷
「誹謗中傷(ひぼうちゅうしょう)」は、SNSやネットのニュースなどで近年よく目にする単語の一つ。この場合の「謗」は音読みで「ぼう」と読ませる。「誹謗」は悪口を言うことを意味する言葉。「中傷」には、根拠のないことで他人の名誉を傷つけるという意味がある。そのため、「誹謗中傷」となると、言われのない悪口やデマによって相手の人格を傷つける行為の意味を示す。
謗法
「謗法」の読み方は「ほうぼう」。「謗」の音読みには先ほど確認した「ぼう」の他にも「ほう」があり、この場合は「ほう」と読ませる。「謗法」は仏法をそしり、真理をないがしろにすることを意味する言葉。よりわかりやすく言えば、正しい教えに背く行為のことだ。謗法は仏教で最も重い罪とされている。このような背景から転じて、「無理なこと」「無理難題を言う」などの意味でも使われるようになった。
罵詈讒謗
「罵詈讒謗」の読み方は「ばりざんぼう」。ありもしないことを並べ立てて、人をののしりそしるという意味を持つ四字熟語だ。耳馴染みのある「罵詈雑言(ばりぞうごん)」とは類語関係にある。「罵詈」には「汚い言葉でののしる」という意味があるため、「謗る」よりも強くののしるニュアンスを含んだ表現となる。
「謗る」は英語でなんと言う?
“criticize”は「謗る」の英語表現として使える単語の一つ。間違っている人や物事を非難するという意味を持つ。例えば“He always criticize others.”(彼はいつも人のことを非難している)のように使える。“criticism”と名詞形にすると、映画や文学作品などの批評を表すことができる。
また、「悪口を言う」の英語表現の一つに、“to speak ill of〜”がある。“of”の後に悪口を言う対象人物を入れて“They speak ill of a person behind her back.”(彼らは彼女の陰で彼女の悪口を言う)といった形で使える。
ちなみに、近年話題となることの多い「誹謗中傷」の英語表現としては“smear”や“slander”が挙げられる。“smear”はカジュアルな表現として使用される単語。一方で“slander”は「名誉毀損」のような法律用語としても使われるフォーマルな表現だ。ニュースなどでは、ネットやSNS上の誹謗中傷を“online slander”や“social media slander”と表すことが多い。
文/編集部