近年、製造業は人手不足や働き方改革、DX推進の課題があるが、まだ細かな課題は山積みといわれる。そんな課題に目を付け解決を目指す、かゆいところに手が届くサービスがぞくぞく登場している。今回は、製造業の課題を解決するAIやIoTを活用している新しいソリューション3つに迫る。
1)バルカー「MONiPLAT(モニプラット)」
株式会社バルカーは2023年4月24日、設備の定期点検や状態監視が一元的に管理できる設備点検プラットフォーム「MONiPLAT」をリリースしたと発表した。
製造業界において樹脂やゴムなどシール材を中心に手がけてきた同社は、自身も製造業老舗。さらに、これまでに多くの製造業者と深くかかわってきた中で、顧客から「製造現場の安全管理を効率的・一体的に実現したい」との声を聞き、「点検管理のDX推進」という潜在ニーズへの気づきを得た。
そのニーズを原点とし、現場での安全管理や点検作業を知り尽くしていることをアドバンテージに開発に挑んだ。
●製造業の点検の3つの課題を解決
製品発表会に登壇した取締役副社長 CDO 中澤剛太氏によれば、MONiPLATは製造業の「紙の点検表の手間」「点検記録の保管」「承認の遅延」の3つの課題を解決することが目的という。
定期点検の実状は、いまだに紙によるアナログな管理で非効率的という現状がある。またデジタル化を進めるにしてもソリューションを複数導入すればかえって管理が煩雑になるリスクもある。
これらの課題解決のために、「スマホでラクラク定期点検/設備管理」をコンセプトに開発されたのがMONiPLATだ。
●課題解決へのこだわり
中澤氏に尋ねたところ、次の2つのポイントにこだわって課題解決に取り組んだという。
「1つ目は、とことん始めやすいサービスにすることです。初期導入費を無料とし、Web上からメールアドレスを登録するだけで始められます。
2つ目は、徹底的に使いやすいUI(ユーザーインターフェース)設計です。現場で紙の代わりに使っていただくにはタブレットやスマホで操作が完結しなくてはなりません。スマホ上のUI画面を見やすく、直感的に操作できるようにしました」
●AI技術で統合的な設備保全・分析を実現
MONiPLATにはAI技術も取り入れられている。AI・ディープラーニング技術のコンサルティングなどを行うスタートアップ、株式会社Ridge-i(リッジアイ)と共同開発した。
「MONiPLATの対象とする設備点検は、TBM(Time Based Maintenance)と呼ばれる定期的な点検と、CBM(Condition Based Maintenance)と呼ばれる設備の状態に応じた随時行われる点検に大別されます。
TBM向けには、画像認識技術を最大限活用し、圧力計などアナログ計器の針が示す値をAIが代わりに読み取ることで効率化。認識精度は学習を重ねるごとに高まります。
CBM向けにはAI技術を活用し、回転機器向け状態監視などの様々なアプリケーションを順次追加する予定です。
今後追加する複数のCBMアプリとTBMを同じクラウド画面で管理することで、CBM・TBMだけでは見えてこなかった傾向も分析できるようになります。
ベテラン技術者の知見をAIモデルに移植し、点検作業をTBM・CBM横断で一元管理できるソリューションを目指しています」