3. NHKの受信契約を締結しないとどうなる?
特定受信設備に当たるテレビを設置したにもかかわらず、NHKとの間で受信契約を締結しないと、訴訟を経て強制的に受信契約が成立し、過去に遡って受信料を請求される可能性があります。
また、通常の受信料に加えて割増金を請求される可能性があるので注意が必要です。
3-1. 訴訟を経て強制的に受信契約が成立する
特定受信設備に当たるテレビを設置したにもかかわらず、NHKとの間で受信契約を締結しないと、以下の流れで強制的に受信契約が成立する可能性があります。
①NHKによる受信契約締結の申込み
②①を承諾しない者に対する、NHKによる訴訟の提起
③受信契約締結の申込みを承諾する意思表示を命ずる裁判所の判決(控訴・上告)
④判決の確定
上記裁判所の判決が確定した時点で、テレビ設置者とNHKの間に受信契約が成立します。この場合、NHK受信料はテレビの設置月から発生すると解されています(最高裁平成29年12月6日判決)。
なお、受信料請求権の消滅時効は契約成立時(=判決確定時)から進行するため、時効完成を理由に受信料の支払いを免れることは困難です。
3-2. 割増金を請求される
正当な理由なく期限(=設置月の翌々月末日)までにNHK受信契約の申込みをしなかった場合は、設置月の翌月から契約締結月の前月までに受信料に加え、その受信料の2倍に相当する額の割増金を請求される可能性があります(放送法64条3項4号ロ、4項、日本放送協会放送受信規約12条2項)。
割増金の対象となるのは、2023年4月以降の期間です。
(例)
2023年4月にテレビを設置、2023年6月末までに受信契約の申込みをせず、NHKからの申込みを受けて2024年4月に受信契約成立
→2023年5月から2023年3月までの11か月間について、受信料の2倍に相当する額の割増金が発生
3-3. 受信契約締結義務違反に対する刑事罰はない
NHKの受信契約締結義務に違反したとしても、刑事罰が科されることはありません。
受信契約の締結や受信料の不払いに関するトラブルは、専らテレビ設置者とNHKの間で、民事的に解決すべき問題とされています。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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