Voicyをはじめ、Twitter、note等のSNSで企業の決算情報や決算書の読み方などについて発信をしている「妄想する決算」さんによれば、決算は現場にある1次情報とメディアで出てくる2次情報の中間1.5次情報とのことです。聞いているだけで1社づつ上場企業に詳しくなり、決算書も読めるようになっていくVoicyの人気番組「10分で決算が分かるラジオ」の中からDIME編集部がセレクトした注目コンテンツを記事としてお届けします。ぜひVoicyの放送と合わせてご覧ください!
※この記事はVoicyで配信したされた「【ZOZO】ファッションEC市場も完璧な成長市場ではなくなり始めたのかもしれない(5月17日配信)」を文字起こしのうえ、再構成したものになります。
取扱高や営業利益は過去最高を更新
今回は「株式会社ZOZO」を取り上げます。
ご存知の通り、主力事業としてはファッション通販サイトである“ZOZOTOWN”をやっている企業ですね。その他にも主要な事業として、ファッションコーディネートアプリ“WEAR”というのもやっていたりします。いろいろなコーディネートを投稿したり、投稿で見た商品をZOZOTOWNで検索したりできるアプリです。 こちらのアプリも今、1600万ダウンロードされ、広く拡大しています。
ZOZOTOWNのビジネスモデルはいくつかあって、商品を買い取って販売する“買取”だったり、自分のところで作って販売する“製造販売”、ブランドがZOZOTOWNに受託して販売する“受託販売”もあったりします。あとは“ユーズド販売”、中古品を買い取って販売するということもやっておりまして、このように売り方が結構いろいろある企業なのです。
ZOZOTOWNの今の会員属性についても少し話します。男女比で言うと男性30%、女性70%と、基本的には女性のユーザーが多くなっています。会員の地域を見てみると、関東が40%、近畿や東海が28%となっています。だいたい都心部のユーザーが7割を占めています。ファッションのECでも、地方部にどれだけ拡大していけるかが重要ということがこの点を見るとわかりますね。会員の年齢分布を見ると平均年齢が34.4歳と、比較的若い世代に利用されています。
したがって、都心部以外の地域にどうやって拡大していくのか、高い年齢層にどうやって拡大していくのか、というところが今後業績を伸ばしていく上で重要だと考えられます。
続いて業績を見ていきます。今回見るのは2023年3月期の通期の業績です。 売上高は10.4%増えて1834億円、営業利益は13.6%増えて564億円、純利益は14.6%増えて395億円となっておりまして、売上・利益共に10%以上伸びており好調です。アパレル業界の中でもECサイトは好調が続いていることがわかります。取扱高を見てみましょう。前期7%増となっておりますので、取扱高も増えて基本的には好調ということがわかります。業績は、取扱高や営業利益に関して言うと過去最高を更新しており、特に取扱高は最高を更新し続けています。まだまだZOZOTOWNのようなファッションECサイトは伸び続けていることがわかりますね。
利益の変動要因を見ると、基本的には売上が伸びたことにより増益になっています。その一方で広告費は増えています。利益が増えるのに合わせて広告費用を増やすことによって、堅調に伸び続けていることがわかりますね。PR費用は、ここ最近ポイント関連の費用が非常に大きく伸びています。ECサイトはポイントをどう活用していくのかが重要だと思われます。 特にZOZOは今ソフトバンク系になりましたので、それによってソフトバンク関連のサービス、それこそPayPayとか、そういったポイントと連携してやっていけるのが比較的うまくいっている要因だと思います。ポイントが重要になってくると、こういったECサイトも大手の寡占が進んでいくことが考えられますね。
1人当たりの購入額や購入点数は減っているが、購入者数自体が増えて業績好調
ここ数年の売上高の推移を見ると右肩上がりで成長が続いています。 2018年の3月期の売上は980億円だったのですが、それが2023年の3月期には1830億円まで伸びています。大体この6年くらいで倍増していて、大きな成長が続いていることがわかります。物価高の影響についてはどうなのか。四半期ごとの商品取扱高の推移を見るに、基本的にはどの期を取っても伸びています。アパレル企業は冬場の売上が大きくなりやすかったり、年末に大きく伸びていたりと、そういった季節性の要因があります。だから四半期ごとの売上には増減がもちろんあるのですが、前年同期比と比べるとどの四半期を取っても伸びており、洋服のECサイトは物価高が進む中でも伸びていることがわかります。
伸びている要因を見ると、基本的には購入者数の増加が大きな影響を与えています。 購入者数がかなり堅調に伸びているんですね。一方、アクティブ会員1人当たりの購入額を見るとこちらは減少傾向になっています。購入額と購入点数を見ても減少傾向になっていますね。1人当たりの購入額や購入点数は減っているけれども、その一方で購入者数自体が増えて業績が伸びていることがわかります。ライトユーザーが伸びていることはもちろん、やはり物価高が進んでいるから1人当たりの売上が減っているのです。一方で洋服のEC化は非常に大きく進んでいるので、ユーザー自体が増えているのですね。
ZOZOTOWNが扱っているショップ数の推移を見ると、最近伸び悩み始めています。ここ1年間ほど横ばい傾向になっているんですね。今、ECは多くの企業が始めていますので、ショップ数や取り扱うブランドが増えることによる成長はZOZOでも難しくなってきているのだと考えられます。物価高が進む中で顧客1人当たりの売上は減っている状況ですし、取り扱っているブランドの数で見るとなかなかショップ数が増えなくなっています。そちらの面から考えると結構伸び悩んでいる状況なんですね。
その反面、ファッションのEC化は非常に速い速度で進んでおり今後も成長が期待されている市場ですので、 EC化が伸びる中で成長し続けているのだと考えられます。2024年の3月期に関しても増収増益の見通しを立てておりますので、ファッションのEC市場が大きく伸びる中で業績も伸びていく見通しを立てていることがわかります。しかし現状を考えると、EC化がどれだけ進むかが業績に大きな影響を与えると考えられます。
今後は地方部のユーザー・高い年齢層のユーザーをどうやって捕まえていくのかがカギに
改めて全体を振り返ると、ZOZOの業績は“増収増益で堅調”でした。しかし最近のユーザーの推移を見ると、ユーザーの購入単価・点数が下落してしまっている状況です。取り扱っているショップ数もここ最近は伸び悩んでいます。物価高の影響を受け、EC市場もある程度伸びきってしまい、伸びづらさがあることがわかると思います。けれども、ファッションのEC化が非常に早いペースで進んでおり、市場の予測短観を見てもまだまだ伸びる見通しですので、基本的には堅調な業績が期待できると思います。
あとはユーザーの会員分布を当初に話しましたが、現状としては都市部のユーザー・若いユーザーが多くなっていますので、今後さらに大きく業績を伸ばしていくために、地方部のユーザー・高い年齢層のユーザーをどうやって捕まえていくのかが重要になります。地方へのECの浸透、あとは高年齢のブランドの取り扱い、そのあたりがどうなっていくのかが注目ポイントだと考えております。
ZOZOは今ソフトバンク系列になっていることでポイント還元を利用した伸びも進んでいます。やはりポイントというのが今の市場では非常に重要になっていますから、EC市場でも大手の強いポイントを持っているところに寡占が進んでいく可能性が十分にあります。
ということで、今回はファッション・アパレルのECについて取り上げました。
妄想する決算
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構成/DIME編集部