「ブラックスワン」とは、ある日突然やってくる予想外の現象を指します。
言葉の語源は、1697年にオーストラリアで黒色のアヒルが発見されたことです。それまでヨーロッパで白鳥は全て白色だと信じられていたため、当時の鳥類学者たちの定説が大きく崩れました。
この出来事が発端となり、金融の世界でも突然の大暴落のことをブラックスワンと呼ぶようになったのです。
そこで今回はブラックスワンの事例と株式市場への影響、投資家はどのように対応すべきか、それぞれ考察していきたいと思います。
ブラックスワンと投資家の心理
ブラックスワンは投資家の心理に大きな影響を与えます。
予測不可能な出来事や市場の不安定性が増すブラックスワンがやってくると、多くの投資家は不安や恐怖を感じます。特に投資家は「先行きの不透明さ」を最も嫌うため、この恐怖心は株価の急落や経済の停滞などの要因となる可能性が高まるのです。
金融の世界にはVIX(恐怖指数)と呼ばれる指数があり、一般的に20を超えるとマーケットに対する警戒感が高まったことを意味しますが、直近のVIXのピークはコロナ禍の2020年3月20日です。このときVIXは66.04まで上昇しましたが、当時、金融市場全体にパニックが広がり、株価の急落や損失を恐れた群集心理によって、投資家が一斉に売り注文が出したことが、VIX指数からも見えてきます。
厳しい状況下で冷静な判断がいかに難しいのか、実感した投資家も多いのではないでしょうか。
2000年以降に発生したブラックスワン
次に2000年以降に発生したブラックスワンについて見ていきましょう。
【ドットコムバブル崩壊(1999-2001年)】
米国を中心にインターネット関連企業の株式が急騰し、投資家たちの間で「ドットコムバブル」と呼ばれる状況が形成されました。このバブルは短期間で急落し、多くのインターネット企業が破綻しました。この影響は株式市場全体に広がり、やがて世界的な不況へとつながっていきました。
【サブプライム・ショック(2007-2009年)】
サブプライム・ショックは、アメリカ合衆国の住宅バブル崩壊による一連の世界的な金融・経済危機のことをいいます。
2007年から2009年にかけて、主に米国のサブプライムローンの焦付(不良債権化)とその証券化商品の価格暴落によって、世界の金融市場と各国経済を大きく混乱させる原因になったのです。金融危機の拡大により多くの金融機関が破綻し、世界中の株式市場に大きな影響を与えました。
【チャイナ・ショック(2015年)】
2015年6月に中国株式市場で急激な株価下落が発生しました。
急落直前まで株価が高騰するバブルが続きましたが、これは国営メディアが投資家を煽りハイリスクの信用買いに向かわせたことが要因といわれています。
政府は下落を食い止めようとしましたが、株価は下がり続け、ピークから約30%ほど株価が下がりました。
中国市場に進出している多国籍企業も影響を受け、世界同時株安の要因になりました。
【新型コロナウイルス(2020年)】
新型コロナウイルスのパンデミックは、世界的な健康と経済の両方に深刻な危機を引き起こしました。感染拡大による封鎖措置や企業活動の停滞などが株式市場に大きな影響を与え、急激な株価の下落や市場の不安定化が見られました。
特に観光関連企業は大打撃を受けた一方、GAFAMなどのハイテク企業が躍進し、現在まで続くリモートワークなどのライフスタイルに大きな影響を与えました。
このように10年に1度以上の確率でブラックスワンによる大暴落が発生しており、その後のトレンドにも影響を与えています。