メルカトル図法とインドネシア
日本とインドネシアは、気候は全く違うが地形は極めてよく似ている。それもそのはずで、両国とも環太平洋火山帯に沿った島国だ。
従って、インドネシアで成功しているサービスやスタートアップはそのまま日本にも適合できるのではと思ってしまうことも多々ある。
先ほどのGoMedも、要は交通弱者のためのサービスと解釈すれば日本でもその仕組みを導入できるのではないか。
このように、インドネシアという国には「日本の近未来」を構築するためのヒントが数多く転がっている。
我々はメルカトル図法の世界地図に慣れているが、ゲラルドゥス・メルカトルは「地図で示した角度通りに船を進めれば目的地へ行ける」ということを第一に考えて地図を制作した。
そのため、彼の地図は極地に行けば行くほど陸地の描写が広がってしまうという欠点がある。メルカトル図法ではグリーンランドが実際より大きく描かれてしまう。逆に言えば、赤道直下のインドネシアは「小さい島国」と思われるのだ。
が、インドネシアの最西端と最東端は、日本の福岡からジャカルタまでの距離と大体同じくらい。それだけ巨大な国の経済活動を考慮した時、あらゆる手段を使ってでも効率化しなければならない。
そこまでスケールの大きな話を持ち出さなくとも、自分自身がGojekのライダーになったような気持ちになれば理解できるだろう。
インドネシアで発行されている紙幣は10万ルピア、5万ルピア、2万ルピア、1万ルピア、5,000ルピア、2,000ルピア、1,000ルピア。
そして、仮に1万7,000ルピアの料金に対して10万ルピア紙幣を利用者から差し出された場合、ライダーは8万3,000ルピアを返さなければならない。
5万ルピア紙幣、2万ルピア紙幣、1万ルピア紙幣、2,000ルピア紙幣、1,000ルピア紙幣を1枚ずつという内訳だ。
「釣りを用意しなければならない」というのは、どの業種でも極めて煩わしい仕事である。GoPayがあれば、そのような仕事をまるまるショートカットできるというわけだ。
ASEAN諸国から学べること
インドネシア市民の生活は、もはやGojekとGoPayなしでは成立しないと言ってもいいだろう。
そして、このサービスはCOVID-19のパンデミックにより急速に普及した……というものではまったくない。パンデミック以前から存在し、インドネシア市民の生活に浸透していたのだ。
筆者は2015年中頃のインドネシアを直に見ている。100ドル程度で購入できるAndroid OSのスマホが各社から一気に発売され、最低法定賃金で生活する庶民でも長期ローン不要でスマホを購入できるようになった。
そして、Gojekが普及し始めたのはこれと同じ時期である。
単刀直入に言えば、インドネシアは「キャッシュレス決済の普及」という面で日本より先を進んでいたのだ。パンデミックがなければ、その差はますます開いていただろう。
我々日本人はこれからも、ASEAN諸国から多くのことを学ぶことができる。
【参考】
Gojek
https://www.gojek.com/id-id/
取材・文/澤田真一