タッチ決済導入の意義
いざ自分が外国人観光客としてシンガポールを渡航してみると、先日筆者も記事にした江ノ島電鉄のクレカタッチ決済導入の意義がよく理解できる。
江ノ島電鉄がクレカのタッチ決済に対応、インバウンド需要から生まれるキャッシュレス決済経済圏
江ノ島電鉄は4月15日からクレジットカードのタッチ決済に対応する。 ここ数年で日本でも急速に普及しているクレカのタッチ決済。従来のように端末内に挿入せずとも、認...
自分自身が海外旅行をしたことがあるかないかで、この取り組みに対する見方が大きく変わるはずだ。タッチ決済乗車を導入した江ノ電は外国人観光客に対して「決済手段の一本化」という究極のサービスを提供しているのだが、海外旅行未経験者にはそうした根幹の事実を見出すのは難しいだろう。
もしも近い将来、全国のJRグループがクレカタッチ決済を導入したら、外国人観光客に対しては何よりの朗報である。
が、JRグループの鉄道路線は何も観光専用というわけではない。普段から交通系ICカードを使っている日本在住者が毎日JR路線を利用しているわけで、要は「交通系ICカードとタッチクレカをどのように共存させるのか」ということが問題になっていくのだ。
「魅力的な脇役」を狙うべき
江ノ電の駅では、交通系ICカード対応の自動改札機とタッチクレカ対応のそれは別になっている。
自分に正直な表現を使えば、タッチクレカの改札機は駅出入口の隅にひっそり佇むように置かれている。まるで、交通系ICカードに遠慮するかのように。案内表示がなければ、その存在すら気づかれないのでは……と筆者は邪推してしまう。
VisaやJCBがどう頑張ろうと、日本の公共交通機関のメインプレイヤーは交通系ICカードである。それはまず変わらないだろう。タッチクレカが狙うべきは「魅力的な脇役」であり、それを前提にした駅構内の改装設計を行うべきではないか。
そういう意味でシンガポールのMRTは大きな参考にはなるが、それを100%模倣することはできない。
他国から仕組みを学ぶ
そうはいっても、やはり「クレカで電車に乗れる」というのは便利だ。
その上、こうした仕組みがあるということはシンガポール国民にタッチ決済対応クレカというものの存在が広く知れ渡っているという意味でもある。
ここはインドネシアを始めとした他のASEAN諸国より抜きん出ている部分で、インドネシアの場合はタッチ決済の利用できる店舗はまだまだ少ない。そのあたりの事情は、また別の機会に触れたいと思う。
他国の仕組みを体験し、それを参考にすることで「日本の近未来の光景」が少しずつ具体化していくものと筆者は信じている。
取材・文/澤田真一