日本各地で「公共交通機関のクレカタッチ決済乗車」の実証実験が行われている。
これは結局、外国人観光客の利用を想定したものだ。国外ではクレカのタッチ決済が既に浸透しているため、観光客にとっては「日本でもタッチ決済を利用できたら便利だ!」ということになる。
今回筆者は、シンガポールに渡航した。そこでMRT(地下鉄)にも乗車したので、体験レポも兼ねて「公共交通機関とクレカタッチ決済」について考察していきたい。
MRTでタッチ決済乗車
3年ぶりの海外である。
パンデミックの間に、日本も海外も大きく変化した。日本の場合は「キャッシュレス決済後進国」の名を返上し、海外の場合は公衆衛生に対する考え方が進歩した。
シンガポールのあとに渡航したインドネシアでもそうだが、街中に手を洗うための水道が設置されている。そして東南アジアでも今やパンデミックはほぼ終焉を迎えたはずだが、それでも街を歩く人の2割か3割方はマスクを着けている。
他のテクノロジーライターが言っていたことだが、パンデミックは2030年代の光景を10年早く実現させた。筆者もその意見に賛成している。
日本にとってのキャッシュレス決済導入問題、海外にとっての公衆衛生問題は、COVID-19がなければ進展しなかったはずだ。
シンガポール・チャンギ国際空港から直接MRTの駅に向かい、小銭を出して切符を買う……ということはする必要がない。タッチ決済対応クレカを持参しているので、これを取り出して自動改札機にかざす。
あとは日本の交通系ICカードと同様の感覚だ。降車の際も自動改札機にクレカをタッチすれば、利用区間分の料金が引き落とされるという仕組みだ。
鉄道からフードコートまで
MRTの対応クレカブランドは、VisaとMastercard。2ブランドしか対応していない点には少し驚いたが、その代わりにモバイルウォレットのApple Pay、Google Pay、そしてSamsung Payで代用することが可能。
これがなければ、シンガポールを訪れて間もない外国人観光客はMRTの利用に難儀してしまう。即ち、MRTの運賃を支払うための小銭をどこかで作らなければならないということだ。
そもそも、シンガポールでは公共交通機関から宿泊施設、低価格のフードコートまでクレカの支払いに対応していることが殆ど。
この国での生活を形成しているのはクレカもしくは国際ブランドが付与されたデビットカードだ。それを持っているか持っていないかで、生活難易度が大きく変わると言ってもいいだろう。