酷道名物「全面通行止め」
439号線の中でも一番の見せ場と言えるのが、徳島と高知の県境付近に延びる京柱峠。ただでさえ酷い439号線の中でも特に細く、グニャグニャと曲がりに曲がり、林道としか思えないような区間なのです。
待ちに待ったメインスポット。ほぼUターンのT字路を左折しながらも興奮を抑えきれずに先を急いだのですが、直後に思いもよらぬことが起きました。
京柱峠が道路工事のため、全面通行止めとなってしまっていたのです。「なんで!どうして!?」と自分の運の悪さに怒りたくなりましたが、酷道ツーリングでは通行止めはよくある出来事。「酷い」だけあって、がけ崩れや川の増水など、自然災害がつきものなのです。
むしろ、う回路があるだけでもラッキーなことです。山の中を抜ける1本道の場合、う回することもできずに引き返すしかないこともあり得るのだから!
う回路として指定されたのは、付近を通る林道樫尾線。地図上で見ると京柱峠に負けず劣らずのグニャグニャ道です。どんな道かと走ってみると…ガッカリした気持ちが一気に落ち着きました。
439号線沿いの集落の多くは山の斜面に形成されています。439号線を走っている時は見上げることしかなく、「あんなところに集落が」と驚くばかりでした。ところが林道を使うと集落内の坂道を一気に上ることになり、初めて集落を上から見下ろすことができたのです。
平坦な土地がない中で作られた、斜面の上の集落。先ほどの剣山とは違った意味で絶景であり、まるで絵本の1ページを開いたみたいに心に染みわたったのでした。
酷道ツーリングはキャンプで泊まろう
う回路から439号線へ戻ると、徳島と高知の県境にたどり着きました。
その先は山を下る道が続き、道の状況も少し落ち着きを取り戻します。
それでも、一般的な酷道から考えると規格外の道の狭さ。先ほどまでう回路で使っていた林道樫尾線と比較しても道が良くなった印象を受けないのは、さすが439号線といったところです。
途中の斜面では、廃バスが落ちたまま放置されているのを発見しました。昔、ここで事故があったのでしょうか?
土佐町まで降りると辺りはすっかり平坦になり、439号線も両側2車線の立派な道へと変化しました。時刻は18時をまわっており、そろそろ宿泊のことを考える時間です。
今回の旅で筆者が選んだ宿泊方法は、行き当たりばったりのキャンプです。
四国は全域的に予約不要のキャンプ場が多く、テントさえ持っておけば泊まる場所に困りません。(お遍路さんの影響でしょうか?)
1日のうちでどこまで走れるかがわからない酷道ツーリングにおいては、予約必須なホテルよりも、現地で決められるキャンプの方が逆に確実に泊まることができるのです。
今回利用したのは黒瀬キャンプ場。仁淀川沿いにあるすぐ隣で寝泊まりできる、涼しくて気持ちがいいキャンプ場でした。
徳島市から黒瀬キャンプ場までの距離は200kmほど。それほど長距離走ったわけではないのですが、気を張って走っているうちに疲れてしまっていたのでしょう。サラサラと川が流れる音を子守唄に、目をつぶってすぐに眠りに落ちたのでした。
【続く】
文/高木はるか
アウトドア系ライター。つよく、しぶとく、たくましくをモットーにバイクとキャンプしてます。 愛車はversys650、クロスカブ110、スーパーカブ90。
高木はるかの記事は下記のサイトから
https://riding-camping-haruka.com
編集/inox.