「国道」と聞くと、車が走りやすいようきれいに整備された道路を想像するのではないでしょうか。ところが地方の山道を中心として、稀に「国道」という区分でありながらも環境や状況が酷い道が存在しているのです。
マニアの間では愛を込めてそれらの国道のことを「酷道」と呼んでおり、全国には30以上の酷道が存在すると言われています。
「ヨサク」の愛称で知られる国道439号線も、酷道のひとつ。439号線は徳島県徳島市から高知県四万十市までを、四国を横断するような形でつなぐ全長341kmの道です。
酷道探検で注意すべきポイント
酷道という愛称の通り439号線には酷く険しい環境が待っているため、普段以上に運転に注意をする必要があります。
特に峠越えの区間ではほぼ全域にわたって道幅が狭く、車同士がすれ違うのも苦労するほど。その上路面には穴が空いていたり砂利や落ち葉が積もっていたり、場所によってはガードレールすらない崖のすぐ隣を走ることもあります。スマートフォンの電波も入らない区間が多く、万が一のトラブルの際は助けを呼ぶにも一苦労します。
つまり、防げるトラブルは事前に防ぐことが大切なのです。出発前に車両に不良がないか確認し、安全運転に努めましょう。
徳島市街から山道へ!
空一面に濃く鮮やかな青色が広がる5月某日。スタート地点である徳島市街には多くの車が行きかい、賑わいを見せていました。
ほとんどの場合、道の始点に「ここからスタート」という目印はありません。気が付けばいつの間にか439号線を走り始めていました。
愛車のクロスカブでトコトコと走れば、みるみるうちに街は遠ざかります。1時間ほどたてば緑の多い田舎道へとやってきました。
早くも道幅が車1.5台分ほどと酷道の気配を感じますが、危険な箇所はありません。道に沿うように園瀬川が流れ、初夏のエネルギッシュな木々は目が痛くなるほどに青々と茂り、のどかな風景が広がっています。
雰囲気がガラッと変わったのは徳島県美馬市に入ったあたりからでしょうか。
▲439号線の前半は、438号線との重複区間。ナビ上で見るとどちらも表記があるのですが、なぜか道に立てられた標識には「438」のみが書かれています。
「通行注意 落石の恐れ 川井峠~見ノ越」という標識の通り、徐々に路面が荒れ、落ち葉や砂利が散らばり始めたのです。
タイヤが2本しかないバイクにとって、タイヤが滑る原因となる落ち葉や砂利は天敵のひとつ。身軽にどこでも走れるクロスカブであっても油断するわけにはいきません。
木が鬱蒼として、日光が遮られる場所も増えてきました。湧き水が道に流れ込んでいる箇所もチラホラ見かけるようになり、いよいよ酷道区間のスタートを感じます。
偶然通りかかったのであれば「なんという道を選んでしまったんだ」と怖くなりそうなほど強烈な道なのですが、今回は酷さを望んで自らやってきました。いよいよ始まる酷道に、自分の中の冒険心が「まだまだ、これからだ!」とウズウズし、胸が躍るのです。