国内メーカーにはない細やかな気配りも
試乗したのは、シリーズ最上級の「ラウンジAWD」。車両本体価格はベースモデルが479万円~、試乗車は最も高額で589万円~となっている。ボディーサイズを考えると国産車、輸入車のEVの中でも低価格帯に属する。もちろん安全、先進、安心の技術はほとんど標準装備されている。
コラムの右にある電動式シフトダイヤルでDレンジを選択する。ドライブモードはエコ/ノーマル/スポーツ/スノーの4ポジション。ノーマルを選択して走り出す。国産車と同じ右コラムから生えているウインカーレバーを右に出す。同時に、メーター内の右端に円形の画面が表示された。これが右後方の視界を写し出している。
この表示がとても見やすくて便利だった。左方向のウインカーを出すとメーターパネルの左に円形の画像が写し出される。こうしたアイデアもヒョンデの先進技術の証し。国産EVはまだかなわない実力の持ち主だ。
ヒューンというモーターや駆動系の音もなくスタート、充電量は98%で、可能走行距離は492km。カタログでは100%充電で577kmが走行可能距離だ。ここで気にしたいのは、走行可能距離より、どのくらい充電されているかだ。というのも走行可能距離というのは、走り方や装備の使い方で変化する。それより大事なのは、電池にどのくらい、電気が残っているかだ。
Dレンジ、ノーマルモードでの走りは、かなり軽快で俊敏。0→100kmh加速を測ってみると5秒台前半をたたき出した。実用SUVとしてはかなり速いほうに属する。操舵力は全速度域で重め。切り込んだ時の抵抗も強めだ。
乗り心地は全域で硬め。これはノーマル/スポーツ/エコの各モードでも変わりはなかった。ちなみにタイヤは、ミシュランの「パイロットスポーツEV」255/45R20を装着していた。EVという名称は付いているが、基本的に乗り心地よりもハンドリングを重視したスポーツタイヤだ。おそらく「プレマシー」などに代えれば、日常使いには良いと思われる。
充電に関してだが、走行中はパドルシフトで回生量をコントロールできる。充電に関連していることだが、「IONIQ 5」の前席は両方ともにフルリクライニングに加えて、オットマンも備わっている。運転席側にもオットマンを装備しているクルマは珍しいと思い、開発者に聞いたところ、充電中に運転者が運転席でリラックスできるように装備した、という解答だった。「IONIQ 5」の急速充電中の過ごし方だ。
後席も床はフラットで、リクライニング機構もあり、リラックスできる。ラゲッジスペースもリアだけでなく、フロントにもビジネスアタッシュなら収まるスペースが設けられている。
先進性を感じさせる内外装、鋭い加速、お値打ち感のある価格設定。ヒョンデのミドルサイズEVは、今、お買い得のEVの1台といってもいいだろう。
■関連情報
https://www.hyundai.com/jp/ioniq5
文/石川真禧照(自動車生活探険家) 撮影/萩原文博