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桐谷美玲さんが語る「眼内コンタクトレンズ治療」を経験して感じたこと

2023.06.10

■連載/阿部純子のトレンド探検隊

眼内コンタクトレンズ(ICL)治療」とは、角膜を削らずにレンズを目の中に挿入して視力を矯正し、メガネやコンタクトレンズ無しで、裸眼で見えるようになることができる治療。インプランタブル・コンタクトレンズ(Implantable Contact Lens=ICL)、フェイキックIOL、有水晶体眼内レンズ、永久コンタクトレンズと呼ばれることもある。

ICL治療は、1980年代より開発されている手術法で30年以上の歴史があり、日本では2003年に臨床試験が開始、2010年に厚生労働省の承認を得られ、現在のモデルは2014年のものが使われている。ICLについては学術論文も多数あり、文献は456件も報告されており、最も古いものは1998年で、ICLは長い歴史と共に学術的にも評価されている治療法といえる。

眼内にレンズを挿入し近視や乱視を矯正した状態が半永久的に続く

米国に本社を置く「STAAR Surgical(スター・サージカル)」は、日本国内における白内障治療用眼内レンズの領域を開拓してきたメーカー。1989年に世界初のシリコーン・フォールダブルIOLを国内導入し、1993年にはディスポーザブルインジェクターを開発、2002年には世界で初めて「プリセットIOLシステム」を発売。2010年には日本で初めてICL(屈折矯正用有水晶体後房レンズ)の薬事承認を取得し、屈折矯正手術においても新たな治療法を提供している。

「ICL治療は世界で急速に人気が高まっており、日本でもICLの成長は目覚ましいものがあります。ICLは1988年からスタートし、35年の長い歴史があります。私どもの重要な核心を担う製品の中には日本から始まったものもあり、日本市場、クリニックや医師、患者様をとても大切に考えております。最先端の屈折矯正手術用製品を、眼科専門医の方々の協力を得て今後一層その普及に努めると共に、さらなる新製品の開発、品質の向上に努力を続けていきます」(スター・サージカル社 シニアバイスプレジデント ジム・フランセス氏)

現在、日本で近視を矯正する屈折矯正手術(レーシック、PRKなど)を受ける患者は、年間で5万眼といわれている。ICL治療の第一人者である、「アイクリニック東京 サピアタワー」執刀責任者 北澤世志博氏はICL治療の現状についてこう話す。

「ICLはスター・サージカル社が提供する眼内コンタクトレンズで、これまで全世界75か国以上で200万枚以上が挿入されています。世界の眼内コンタクトレンズ治療の8割以上をICLが占め、日本でもドライアイやアレルギーでコンタクトレンズの調子が悪いといった方だけでなく、近年はメガネやコンタクトレンズ無しに裸眼で生活したいと手術を希望する方も増えています。

実際にICL治療を受けた方の喜びの声として『朝起きたときに裸眼で見える』ということがあります。昼だけでなく夜も鮮やかに見えますので、仕事だけでなく趣味にも集中できます。また近年、日本では地震などの災害も頻繁に起きており、災害時に裸眼で見えるのは安心という理由で手術を希望される方も増えています。

昨年、日本においてICLの手術を受けた方は2万5000人になり、すべての近視治療の中で最も選ばれている治療となりました。今後、日本においてもICLが近視治療のファーストチョイスになっていくといえるでしょう」(北澤氏)

ICL治療は度数が強くても弱くても、一枚のレンズを目に入れる同じ手術方法のため、難易度に差が生じることがない。また、他の近視治療と違い角膜を削ることをしないため、ドライアイになりにくいというメリットもある。万が一、何かしらの不具合が生じた場合は、レンズを抜去できるので、手術前の状態に戻し従来のメガネやコンタクトレンズで矯正できる。

「ICLの素材はコラーゲンをベースに作られた『コラマー』という特殊な素材です。ソフトコンタクトレンズのように柔らかいものですが、生体への適合性が高く、長期間、眼内で安定しています。目の中で汚れたり、劣化することもありませんので、お手入れや交換も不要です。UVカット機能もあるため、目に優しいレンズともいえます。

ICLはとても小さく厚さもわずか0.2mmのレンズですが、これを折りたたんで眼内に挿入すると、目の中で自然に広がっていきます。術後は他の人が目をのぞきこんでも全く見えない薄いレンズです。

目の手術というと、怖い、痛いという心配をされる方も多いですが、ICLはわずか3mmの小切開から手術をし、縫合の必要もありません。両眼同時の短時間の手術ですから、日帰りで入院の必要もありません。不安という患者さんには丁寧に内容を説明して、すべての疑問や質問に答えることで、不安を取り除くことから始めています。

出術当日は目がしょぼしょぼしたり、かすんだりしますが、翌日には違和感も取れ、視力も安定しますので、早期の仕事復帰が可能です。充血や、炎症、感染予防のための目薬等が1か月ほど必要になりますが、これまで失明に至るなど重篤な合併症の報告がないことも安心できる要素です」(北澤氏)

スター・サージカル社のCMに起用された女優の桐谷美玲さんは、北澤氏の執刀で半年前にICL手術を受けた。自身の体験についてこう話す。

「小学生のころからずっとメガネで、今までは朝起きてから寝るまでコンタクトレンズの生活でした。ICLはずっと気になっていましたがなかなか勇気が出ず、実際に治療した友人から詳しく話を聞き決意しました。不安はありましたが、先生から詳しく説明をしていただき、事前検査も綿密にやっていただいたので、手術日が近づくにつれて早くやりたいという気持ちの方が大きくなりました。

実際の手術時間は20分程度で、検査などを含めても数時間で終了しました。手術が終わった瞬間から見えて、20年以上こんなに良く見える経験をしていなかったので、とても不思議な感覚でした。

翌日はさらにクリアに見えて、今までは起きた瞬間は隣に寝ている息子や夫の顔がぼんやりと見えなかったのですが、起きたときにくっきりと見えた時の感動は大きく、生まれ変わった!という気持ちになりました。

以前は、旅行に行く時もコンタクトレンズを必ず持参しなくてはいけなかったし、子育てをする中で、夜中に子どもの世話をしなくてはいけない時に、いちいちメガネをかけるのも煩わしかった。そうしたストレスがまったくなくなり裸眼で見えることがこんなにハッピーなのだと実感しました。子育てが始まる前に手術すればよかったと思っています。

ICLにしてやってみたいことはマリンスポーツ。コンタクトレンズだと水の中に入ると取れてしまう心配もありなかなか挑戦する機会がなかったのですが、裸眼で、水の中で目を開けてしかもはっきりと見えるってすごいことだなと。見てみたいものは綺麗な星空ですね。満天の星空をクリアな視界でぜひ見てみたいと思います」(桐谷さん)

 

【AJの読み】近視・乱視による日常の煩わしさから解放

ICL治療は強度の近視と乱視に対応しており、年齢21歳以上の眼鏡の度数が安定している人が適応となる。近視や乱視を矯正した状態が半永久的に続き、メガネやコンタクトレンズなしの裸眼生活が実現する。

ICLのレンズが眼の中にあることを自覚することはなく、手術後にゴロゴロしたり、異物感を感じることもない。また基本的にレンズを挿入後、目の中で動いたりすることもなく、レンズが入っているということを自覚することさえない自然な感覚もメリットのひとつ。

目のインプラントとも言えるICL治療だが、歴史が長い割には日本ではあまり浸透していない要因として、「目の中にレンズを埋め込む」ということに恐怖心を抱く人が多いのが理由のひとつかもしれない。

「ICLはそこまで浸透していない治療法なので、目の手術は怖い、痛いと不安になる方も多いと思いますが、気になったら経験した人やクリニックに相談してほしいですね。私自身も相談することで不安が解消してやってみようという気持ちに変わりましたので」(桐谷さん)

文/阿部純子

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