■連載/石野純也のガチレビュー
依然として続く米国の制裁により、日本におけるスマホの展開が途絶えてしまったファーウェイだが、5Gなどの通信やグーグルのOSとの直接的な関係が薄いスマートウォッチやワイヤレスイヤホンなどの製品群を強化し、生き残りを図っている。スマホと同様、こうした製品でもコストパフォーマンスの高さは評判がいい。研究開発への投資を怠っていないこともあり、性能的にとがった製品が少なくない。
そんなファーウェイが送り出す最新のワイヤレスイヤホンが、「HUAWEI FreeBuds 5」だ。開放型ながらアクティブノイズキャンセリングに対応したイヤホンは、ファーウェイの十八番。HUAWEI FreeBuds 5は、その最新モデルにあたる。デザインを刷新しており、個性も光る1台だ。ケースはワイヤレス充電に対応し、Android、iOSのどちらでも利用できる。
開放型イヤホンでノイズキャンセリング対応ながら、価格は2万1800円とリーズナブル。とは言え、この価格帯の製品で本当に十分なノイズキャンセリング性能や、満足できるだけの音質がえられるのか。実機を使って、そのコストパフォーマンスをチェックした。
ノイズキャンセリング対応の開放型イヤホン「FreeBuds 5」
エルゴノミックなデザインでアクセサリーのよう
開放型のイヤホンを定期的に投入しているファーウェイだが、FreeBudsの標準モデルは約2年ぶり。ケース側、イヤホン側双方のデザインを刷新しており、高級感のある仕上げを施している。イヤホンは、ステム部分とスピーカー部分が途切れず曲線でつながっている流線型のデザイン。筆者はフロストシルバーを試しているが、メッキのような光沢感があり、耳に着けるとまるでアクセサリーのように見える。
フロストシルバーは光沢感が強調されたデザイン。耳に着けると、まるでアクセサリーのようだ
ステム部分は楕円で面積が広くなっているが、これはデザインだけでなく、操作性にも貢献する。FreeBuds 5は、この部分のダブルクリックや長押しに各種操作を割り当てることができ、上下のスワイプでは音量の調整が可能だ。同様のタッチ操作を取り入れているイヤホンが多い一方で、ステムが細く操作しづらいものは少なくない。FreeBuds 5ほどの広さがあれば、誤操作も少なくなって快適だ。
曲線で構成されたエルゴノミックデザイン。ステム部分が太く、タッチがしやすい
充電器を兼ねたケースも楕円形で、きれいな形の玉子のようだ。ここにイヤホンを収めて持ち運びつつ充電するのは、ほかのワイヤレスイヤホンと同じ。充電器に入れてふたを閉めると自動的に電源が切れ、スマホとの接続も切断される。逆に、利用時はふたをあけ、耳に装着するだけ。シンプルに利用できるのはうれしい。
ケースも楕円形。縦長のため、ポケットに入れたときの収まりがいい
このケースは、USB Type-Cだけでなく、Qi方式のワイヤレス充電にも対応している。2万円前後のワイヤレスイヤホンの場合、ケースがワイヤレス充電に対応していないこともあるが、この価格帯ながらしっかり対応している点は評価できる。また、今回、FreeBuds 5はGalaxy Z Fold4とペアリングして使用したが、同モデルはスマホ側からのワイヤレス給電に対応する。こうした機能を使えば、出先でも簡単に充電が可能になり、使い勝手がいい。
ワイヤレス充電に対応しており、スマホ側のワイヤレス給電機能でも充電が可能だ
もっとも、ノイズキャンセリングがオンの状態でも、音楽再生時間は3.5時間、これを切れば5時間まで駆動時間を伸ばせる。充電ケースと組み合わせれば、この時間がそれぞれ20時間、30時間になる。より長時間駆動のイヤホンもあり、特段バッテリーの持ちがいいわけではないが、通常使用であれば、バッテリー切れを起こす心配は少ない。1日に1回充電するだけで事足りてしまうと言えるだろう。
ノイズキャンセリングの効きは十分、自然な音で聞きやすい
開放型ゆえにノイズキャンセリングの効きが気になるところだが、その効果は高い。筆者は幹線道路沿いの建物内で試してみたが、ノイズキャンセリングをオンにすると、車の走行音などの雑音がほとんど聞こえなくなった。近くで工事をしていたため、さすがにその音は耳に入るが、かなり抑えられる印象だ。耳栓のように耳を密閉するわけではないスタイルとしては、十分な効果と言えるだろう。
比較的交通量の多い道路沿いの建物でも、ノイズがキレイに消えた
また、ノイズキャンセリングがオンの状態でも、テレビの音や人の話し声は普通に聞き取ることができた。耳が完全にふさがれていないこともあり、自然に外音が取りこめている印象だ。こうした仕様のため、耳に圧迫感がほとんどないのもうれしい。筆者は密閉型のイヤホンを1時間近く連続でつけていると、耳が痛くなってくるが、FreeBuds 5ではそうした違和感がなかった。
コロナ禍でオンライン会議やオンライン発表会が当たり前になり、イヤホンを長時間つけたままにしておく機会は増えている。音楽を聞く時はもちろんだが、開放型のイヤホンは、ビジネス用途にもオススメできる。筆者はそのまま装着しても問題なく使えたが、どうしても外れやすいという人は、付属のアダプターでサイズ感を調整することも可能だ。
音質は解像感が高く、中音域や高音域などがクリアに聞こえる一方で、低音部分の迫力はやや弱い印象もある。ただ、聞こえ方が自然なためか、長時間音楽を聞いていてもあまり疲れない。バランスのいい音作りと言えるだろう。また、コーデックがソニーのLDACに対応している点も見逃せない。
LDACは、ワイヤレスでハイレゾ相当の楽曲を再生するためのもの。最近のスマホは、ハイエンドだけでなく、ミッドレンジモデルやエントリーモデルでもLDACに対応しているモデルが多い。残念ながらAACまでしか利用できないiPhoneではその性能を引き出せないが、音質に関しても価格の範囲でしっかり作り込まれていると言えるだろう。