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山を歩くと脳疲労が改善する?登山による健康効果が明らかに

2023.06.08

ヤマップは、サステナブルスケールおよび九州大学都市研究センターと包括連携協定を締結し、山を歩くことによる人類の健康と自然環境への影響を測る産学金の連携プロジェクト「人と自然のウェルビーイングラボ」の実証実験を実施してきた。

習慣的に山を歩く「登山者群」と、そうでない「非登山者群」の生体データを比較したこの実証実験において、脳疲労度の低い人は、血圧低下の効果が大きい傾向にあることが明らかに。

また、脳疲労度の低いグループには「登山者群」が多い傾向も見られ、習慣的に山を歩くことが、脳疲労の改善に寄与する可能性を科学的に実証したので、詳細をお伝えしよう。

実証実験では「登山者群」と「非登山者群」を合わせた46人※1に、大分県別府市の日向岳を登山してもらい、その前後の血圧や血中コルチゾール濃度等の生体データを比較。

全ての変数※2に対する相関係数を算出し網羅的な解析を行い、その解析結果から山を歩くことの健康効果を科学的に実証した。

※1 登山者群:毎月登山実績があり直近の獲得標高差が500m以上2000m未満の男女25名(男性14名、女性11名)、非登山者群:前回登山から4ヶ月以上経過しているか4ヶ月以内の獲得標高差が100m未満の男女21名(男性11名、女性10名)

※2 変数:登山経験有無、性別、年齢、脳疲労マーカー(アンケート)、朝食、体温、体重、体脂肪率、内蔵脂肪レベル、BMI、骨格筋率、体年齢、酸素飽和度、血中コルチゾール濃度、最高血圧、最低血圧、脈拍、基礎代謝、各パラメータの登山前後の増減値

「生体データ(血圧)」と「脳疲労度」との相関関係を分析 ▶︎ 脳疲労度の低い人は、血圧低下の効果が大きい傾向

「登山者群」と「非登山者群」の「生体データ(血圧)」と「脳疲労度」との相関を分析したところ、脳疲労度が低い人(脳疲労マーカー=180未満)は、登山前と登山後の最高血圧の差が大きく、山を歩く運動行為/日内変動※3により得られる血圧降下の効果が大きい傾向にあることが判明(図2a)。

さらに、脳疲労度の低いグループ(脳疲労マーカー=180未満)には「登山者群」が多い傾向も見られ(図2b)、習慣的に山を歩くことが、脳疲労の改善に寄与する可能性が示唆される結果となった。

(図2a)縦軸(登山前後最高血圧差)がマイナスの値になるほど血圧降下の効果が大きいことを指す。
(図2b)横軸(脳疲労マーカー)の脳疲労が低いグループ(180未満)には「登山者群」が多い傾向。図2aにおいても同様の傾向が見られた。

※3 日内変動:体内時計により血圧や体温などが24時間周期の昼夜変化に合わせて変動する生体リズムのこと。後述する「血中コルチゾール濃度」は日内変動の影響を受ける(ピーク8時と比較し12時では約70%に減少)

「生体データ(血中酸素飽和度)」と「登山経験」との相関関係を分析 ▶︎ すっきりとした目覚めを迎えられている「登山者群」

「登山者群」「非登山者群」の登山前(朝の時間帯)に測定した「血中酸素飽和度※4」のデータから、血中酸素飽和度が高いグループ(98%以上)には「登山者群」が特に多い傾向が見られた。

習慣的に山を歩く「登山者群」は、朝の時間帯から身体の状態が活動的になることが多く、血中酸素飽和度の低い寝起きの状態から酸素飽和度の向上が見込まれやすい可能性、つまり「非登山者群」と比べ、すっきりとした目覚めを迎えられている可能性があると考えられる。(図1)

(図1)血中酸素飽和度が高いグループ(98%以上)には「登山者群」が特に多い傾向が見られた。

※4 血中酸素飽和度:心臓から全身に運ばれる血液(動脈血)の赤血球に含まれるヘモグロビンのうち、何%が酸素と結合しているか、皮膚を通して調べた値のこと。96%以上が標準値とされ、体内へ十分な酸素が供給されているかどうかが分かる。90%を下回る場合は十分な酸素を全身の臓器に送れていない可能性がある。

山を歩くことによる「ストレス解消効果」を分析 ▶︎ 恩恵を受けやすい条件あり

山を歩く運動行為による「ストレス解消」への影響を調査すべく「登山者群」「非登山者群」の登山後の「血中コルチゾール濃度※5」を比較しました。コルチゾールはストレスに関与し、過度なストレスを受けると分泌量が増加するホルモンの一種だ。

登山後の血中コルチゾール濃度は、「体脂肪率」「体年齢※6」と正の相関関係が見られ(図3a,b)、「骨格筋率※7」との間には、負の相関関係が見られた(図3c)ことから、体脂肪率が低く、骨格筋率が高く、体年齢の低い人は、山を歩く運動行為/日内変動によるストレス解消の恩恵を受けやすい可能性があることがわかった。

習慣的に山を歩く「登山者群」は、無条件に「脳疲労改善」の恩恵を受けている可能性が高いものの、より良い「ストレス解消効果」を得るには、望ましい条件(体脂肪率が低い・骨格筋率が高い・体年齢が低い)があると言える。

※5 コルチゾール:副腎皮質から分泌されるホルモンの一つ。ストレスに関与し過度なストレスを受けると分泌量が増加する。主な働きは、肝臓での糖の新生、筋肉でのたんぱく質代謝、脂肪組織での脂肪の分解などの代謝の促進、抗炎症および免疫抑制などで、生体にとって必須のホルモン。例えば、その炎症を抑える働きから、ステロイド系炎症薬として治療にも広く使われている。
※6 体年齢:基礎代謝をもとに算出した体の年齢、指標のこと。基礎代謝は体重、体脂肪率、骨格筋率などを総合して算出しているため、体年齢は自分の体を総合判定する目安になる。
※7 骨格筋率:体重のうち「骨格筋の重さ」が占める割合のこと。運動の成果が出ているかどうかを判断する指標になり、骨格筋が高いほど基礎代謝が良いとされる。

なお、「非登山者群」と「登山者群」との血中コルチゾール濃度に無条件下での(単純比較による)有意差はなく、血中コルチゾール濃度と「脳疲労度」との関係についても、ほとんど相関関係が見られなかった。(表1)

※8 血中コルチゾール濃度の「脳疲労度」との相関係数を算出。相関係数は、1 に近いほど「正の相関関係(一方が増えればもう一方も増える)」が強く、-1 に近いほど「負の相関関係(一方が増えればもう一方は減る)」が強い。以下は目安。(0.0~0.2 ほとんど相関関係がない、0.2~0.4 やや相関関係がある、0.4~0.7 かなり相関関係がある、0.7~1.0 強い相関関係がある)補正はコルチゾール血中濃度の日内変動補正のこと。

総括

毎月登山実績があり、直近の獲得標高差が500m以上の「登山者群」と「非登山者群」との生体データ比較に焦点を当てた本研究では、実証実験を通じて得られた上記の結果を統合的に評価し、普段からのエクササイズや運動ではとれない脳疲労を、標高が500m以上の山で、月に1回以上の登山習慣が解消する可能性を結論づけた。

山を歩くことの「何が」脳疲労の改善に寄与しているのかは今後の研究によって確かめる必要があるが、今回の実験を通じて、山を歩くことによる効果の一端を解明できた。

これまで体感的・経験的に知られてきた効果に、科学的な裏付けを提供することで、山を歩くことが、現代を生きる人々の健康づくりや未病の改善、予防医療に有意なアプローチとなるよう「人と自然のウェルビーイングラボ」では、今後も様々な機会創出を図っていくとのこと。

関連情報:https://yamap.com/

構成/Ara

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