財務省、金融庁、日銀が、国際金融資本市場に関する3者会合を実施した。3者会合は円相場が大きく動く局面で開催される傾向があるが、今回の実施を受けて、ドル円相場にはどのような推移が見られたのだろうか?
三井住友DSアセットマネジメントはこのほど、同社チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩氏がその時々の市場動向を解説する「市川レポート」の最新版として、「財務省・金融庁・日銀の3者会合で円安は一服か」と題したマーケットレポートを発表した。レポートの詳細は以下の通り。
神田財務官は5月30日の3者会合後、為替の過度な変動に対し必要あれば適切に対応と発言
財務省、金融庁、日銀は5月30日、国際金融資本市場に関する情報交換会合(3者会合)を開催した。
3者会合は、米シリコンバレーバンクの経営破綻をきっかけに金融不安が高まった3月以来の開催となり、財務省の神田真人財務官、金融庁の天谷知子金融国際審議官、日銀の清水誠一理事らが出席し、足元でドル高・円安が進む為替相場についても協議したと推測される。
会合後、神田財務官は記者団に対し、為替相場について「ファンダメンタルズ(基礎的条件)を反映して安定的に推移することが重要であり、過度の変動は好ましくない。必要があれば適切に対応していく考えに変わりはない」と述べた。
また、為替介入の可能性についての質問に対し、「必要があればあらゆるオプションを否定しないが、今どういう状況にあるかはコメントを控える」と回答した。
3者会合は相場変動時に開催される傾向、昨年は6月と9月に開催されその後為替介入を実施
3者会合は円相場が大きく動く局面で開催される傾向があるが、政府・日銀には開催によって為替市場の投機的な動きをけん制する狙いがあると考えられる。
実際2022年の動きを振り返ると、3月以降に急速なドル高・円安が進行したことを受け、6月10日に3者会合が行われ、会合後に初めて声明文が公表された(図表1)。
ただ、その後もドル高・円安の流れが続いたため、9月8日に再び3者会合が開催された(図表2)。
そして、9月14日には日銀が「レートチェック」を実施したとの報道がみられたが、これは日銀が銀行などの外為担当者に為替相場の水準を尋ねることで、一般に為替介入の実施直前で行われるとされている。
その後、政府・日銀が9月22日に約2.8兆円、10月21日約5.6兆円、10月24日に約0.7兆円のドル売り・円買い介入を実施すると、ドル円は10月21日に一時1ドル=151円95銭水準をつけた後、ドル安・円高に転じた。
ドル高・円安の進行は緩やかになる可能性
ドル円相場は、日本時間5月30日の午後3時半前に、1ドル=140円93銭水準までドル高・円安が進んだが、3者会合開催の報道を受け、急速にドル安・円高方向へ転じた。
やはり、前述の2022年6月以降の動きを踏まえると、市場参加者の間に介入警戒感が強まるのは当然のように思われ、政府・日銀側にもその効果を狙って、ドル円が141円台に乗る前のタイミングで、今回の3者会合の開催を通知したと推測される。
また、市場では6月13日、14日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、追加利上げの見方も強まっており、政府・日銀はドル高・円安が加速する展開も想定したと考えられる。
なお、ドル円がこの先、再び140円台を回復した場合でも、今回の3者会合開催を受け、ドル高・円安の進行は緩やかになることも想定される。三井住友DSアセットマネジメントは4-6月期に145円までのドル高・円安を見込んでいるが、年内はこの水準がピークと予想している。
※個別銘柄に言及しているが、当該銘柄を推奨するものではない。
出典元:三井住友DSアセットマネジメント
構成/こじへい