東海道五十三次を木製模型で再現
最後は静岡市の誇る木製模型メーカー、ウッディジョーの製品を取り上げたい。
かつて、木製模型は「プラスチック模型ほどの精巧な表現ができない時代遅れの産物」とまで言われてきた。
しかし、レーザー加工を導入することでその評価は完全に覆ることになる。木造建築物の模型は、プラスチックよりもレーザー加工された本物の木材を使ったほうが当然リアルな製品になっていく。
筆者が以前から注目しているウッディジョーの目玉製品がある。東海道五十三次シリーズだ。
今回のホビーショーでは、新製品の関宿と品川宿が公開された。
歌川広重の浮世絵『東海道五十三次』は、多少の誇張やフィクションを加えながらも江戸後期の東海道の旅情を表現した世界的傑作である。
「多少の誇張やフィクション」というのは、たとえば今の静岡県静岡市清水区にある蒲原宿がなぜか豪雪地帯として描かれている点だ。
しかし広重は、そのような「現実の気象に歯向かう描写」ですらも魅力的な風景として日本人の深層心理に定着させてしまった。そして、そのような「憧れの旅情」を木製模型として開発し続けているのがウッディジョーなのだ。
模型は「至高の趣味」
最近、筆者はこんな記事を読んだ。メタバース事業の大半が失敗もしくは事業規模の縮小に陥っているという内容だ。
時代の最先端を進んでいるはずだったメタバースだが、それがどのように発展してどのように定着しているかという話にはあまり恵まれていない……と筆者が感じていた矢先の出来事でもある。
それに比べると、自分の手と指で物理的に仮想空間を構築しなければならない模型やジオラマは永続的な需要のある分野なのでは……と思ってしまう。
100年後の未来でも、模型産業は存続しているはずだ。
自分の手で理想の世界を作るというのは、人間に許された特権でもある。それを手軽に実現できる模型こそ、人間が人間であることを証明する至高の趣味と言えるかもしれない。
取材・文/澤田真一