こんにちは。
弁護士の林 孝匡です。
宇宙イチ分かりやすい法律解説を目指しています。
浮気裁判例をザックリ解説します。
妻が、旦那の浮気相手に損害賠償請求。
▼ 本日の目玉
・不貞行為はSEX【だけじゃない】
・ラブラブ赤っ恥メールにはご注意を
・大たまこ?
・裁判に勝ったけど慰謝料うけとれず
・ドロボー猫だけにしぼろう
以下、分かりやすくお届けします(東京地裁 H25.5.14)
※ 判決の本質を損なわないよう一部フランクな会話風に変換
登場人物
▼ 妻(原告)
・おそらく音楽関係者
・結婚43年目
ーーー お怒りのようですが、何があったんですか?
妻
「夫が浮気を白状しました」
ーーー 浮気相手は?
妻
「夫の教え子です」
「浮気相手の女性に損害賠償請求します」
▼ A夫
・当時75歳
・オペラ歌手
ある研修所の講師
▼ Y女(被告)
・その研修所に入所
・30代後半
どんな事件か
▼ Y女が研修所に入所
Y女はA夫の門下生となります。そして、A夫の個人レッスンを受けるようになりました。
距離がグングンと縮まっていったんでしょう。2人で食事に行ったり、プールに行ったりする関係になりました。
▼ A夫がY女のマンションへ
ーーー どんなことをしたんですか?
A夫
「ベッドでY女にマッサージしてもらった後、下着姿で抱き合い、身体を触ったりしました。でも、SEXはしていません。私は持病の糖尿病のためSEXできないからです」
裁判所
「(ふむふむ。SEXはしてないと)」
Y女は、その日の午後11時すぎ、A夫にメールを送ります
「楽しい時間をありがとうございました。また隠れ家でゆっくりしてくださいね。今日もあたたかくして休んでください。おやすみなさい」
▼ 鬼のいぬまにイチャイチャ!
妻が2週間ほど海外に出かけることになりました。Y女はある日の深夜、夫婦の自宅に訪れます(読者の皆さん、アウェイって結構こわくないですか?w)
ーーー さて、どんなことをしたんですか?
A夫
「ベッドで愛撫をしたただけです。SEXはしていません」
裁判所
「(今回もSEXナシと…)」
▼ 大たまこ
Y女がA夫に送信していたメールを一部あげると以下のとおり。
「今日も長い1日でしたね。おつかれさまでした。マッサージをさせてもらいに飛んで行きたいです(私が、A先生にひっつきたいんですが)小さなたまこが羨ましい・・・」
「今朝、●さんからご丁寧に姓名判断をいただきました。大たまこはA先生が恋しい・・・です」
ーーー 裁判所さん、【たまこ】って何ですか?
裁判所
「【たまこ】というのはA夫の飼い犬の名前です。【大たまこ】はY女のことです」
判決文より引用
■ 注目!
不倫裁判では赤っ恥メールなどが証拠として出てきます。尋問でも弁護士から色々と聞かれます。裁判は公開法廷で行われるのでご注意を!傍聴人がガッツリいます。
▼ バレた!
ーーー A夫さん、なんでバレたんですか?
A夫
「私の車の後部座席にY女の水着が置いてあったんです。それが妻に見つかりました」
ーーー 浮気を認めたんですか?
A夫
「はい。妻から問い詰められたので白状しました。そしてY女から私に送られたメールも見せました。妻は激怒してました」
大たまこメールですね。お察しいたします…。
▼ 怒りは、まず旦那に
数日後のこと。
妻
「あなた、1000万円を払ってください。私が引っ越しするための資金です」
A夫
「(きっつ・・・)」
A夫はY女に頼み込みます。「金策が上手くいかず困り果ててるんだ…」と。すると、Y女は500万円をA夫に貸しました。太っ腹!
後日。A夫と妻の話し合い。
A夫
「500万円を支払います。友人から借りました」
妻は500万円を受け取ります。そして、300万円を月末の支払いに使いました(裁判所は夫婦の生活費として使われたと認定)
▼ メラメラ
妻の怒りは治りません。怒りの矛先はY女へ。弁護士を雇って、Y女に対して700万円の支払いを求めました。そして訴訟へ。
▼ 夫婦はどうなった?
仲直りできたんですかね。浮気が発覚した約3ヶ月後には、引っ越して同居しています。裁判のときも同居継続。
ジャッジ
ーーー 裁判所さん、どうですか?不貞行為ってSEXだけですよね?
裁判所
「いや。両名の行為は、妻の婚姻共同生活の平和維持という権利または法的保護に値する利益を侵害します。A夫とY女の行為は妻への不貞行為です」
■ 注目!
「SEXしてないから大丈夫」と安心しているそこのアナタ!私も知りませんでしたが、イチャイチャだけでも不貞行為になることがあるようです。心にタトゥーしておいてください。
ーーー 慰謝料は、いかほどで?
裁判所
「150万円ですね」
〈理由〉
・不貞期間は1年未満
・婚姻関係は破壊されていない(いまだ同居しとる)
・そのほか一切の事情
裁判所
「しかし!妻は150万円を受け取れません」
ーーー Why !?
裁判所
「すでにA夫から500万円を受けとってるじゃないですか。その500万円で妻の精神的苦痛は回復(=慰謝)されたといえるからです」
■ 法律ばなし
法律的には、A夫とY女は妻に対して【連帯責任】を負うんです(むずかしい言葉で不真正連帯債務)。この不真正連帯債務ってのは【どちらかが妻に払えば他方の責任は消える】んです。
今回、裁判所は「A夫が妻に500万円払ったからY女の責任は消えた」と判断しました。
全国の妻
「あんたフザケんじゃないわよ!私はあのドロボー猫にひと泡ふかせたいのよ!」
A.
ちょ、ちょっと。胸ぐらをつかむのはやめて下さい!ドロボー猫にギャフンと言わせたいなら、夫から慰謝料は受け取らず、猫だけに絞って請求しましょう!
今回は以上です。「こんな解説してほしいな〜」があれば下記URLからポストして下さい。ではまた次の記事でお会いしましょう!
取材・文/林 孝匡(弁護士)
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