自宅で楽しむゲーム機といえば、PlayStationシリーズのような据え置きタイプや、Nintendo Switchのようなポータブルタイプが一般的でしたが、最近はPCでプレイするスタイルが勢いを増しています。ある程度のスペックは求められますが、Windows OS搭載機であれば、普段仕事をしているPCでも、終業後にゲームができるといったメリットもあるでしょう。
そんな中、特に注目を集めているのが、「ポータブルゲーミングPC」と呼ばれるデバイス。持ち運びやすい本体サイズに、ボタンやスティックといったゲームをプレイする際に便利なコントローラー部分が付属している製品で、ゲームプラットフォーム「Steam」に最適化したモデルや、Windows OSを搭載したモデルなどが続々と登場しています。
そんな中、PCや周辺機器、スマートフォンといったデジタルデバイスを展開するASUSは、自社ゲーミングブランドより「ROG ALLY(アールオージー エイライ)」を発表。ある程度の重さであれば、快適にゲームができるスペックに加え上位モデルが10万9800円、下位モデルが8万9800円というコスパの良さにも注目が集まります。
メディア向けに開催された製品説明会にて実機を少し試せたので、ROG ALLYとポータブルゲーミングPCの魅力を紹介していきます。
ポータブルゲーミングPCの魅力
ポータブルゲーミングPCは、先にも触れた通り〝持ち運びができ、PCゲームをプレイするのに最適化されたデバイス〟を指します。様々な形状のデバイスがありますが、中でも注目を集めているのが、ディスプレイとコントローラーが一体化した製品。Nintendo Switchや、ソニーの「PSP」に近いデザインです。
ポータブルゲーミングPC最大の特徴は、やはり気軽に持ち運べるという点です。屋外に持ち出して使用しやすいのはもちろん、自宅内でも、ソファからベッドといった場所で気楽にゲームができるのが魅力です。
また、多くのポータブルゲーミングPCでは、Windows OSが搭載されているため、普段から使用しているPCとほとんど同じ環境で操作できるのが1つのメリット。一般的なPCと同様に、ゲーム以外にも動画視聴やOfficeソフトでの編集といった作業もこなせます。ただし、一般的なノートPCのようにキーボードは搭載されておらず、ビジネスシーンで使う際などには、外付けキーボードやモニターと接続するのがおすすめです。
携帯性を活かし、持ち運び用のサブPCとして使用するのもありですが、多くのポータブルゲーミングPCは高いスペックなので、メインPCとして使うことも可能。テレワークの普及もあり、自宅にモニターやキーボードといった周辺機器がそろっている人も多いはずなので、ポータブルゲーミングPCは今、導入しやすいデバイスとしても注目が集まっています。
5年の月日をかけて完成したROG ALLY
そんな注目のデバイスであるポータブルゲーミングPCの最新モデルとして登場したのが、ASUS内のゲーミングブランドである〝ROG〟の「ROG ALLY」です。ROGブランドは、PCだけでなく、スマートフォンや周辺機器にも多くのデバイスを展開しており、世界的に支持を集めています。
ROG ALLYは、多くの人の手になじむ表面傾斜、コーナー傾斜やテクスチャーといった細部にまでこだわり、開発には5年の月日を有したとのこと。背面に搭載されているマクロボタンも、本体を強く握っても誤タッチをしないよう、絶妙な位置、サイズになっています。
実際に握ると、比較的手の小さい筆者でもすっぽりと収まり、扱いやすい印象。本体質量も608gとかなり軽量なため、長時間使用していてもストレスは少ないでしょう。
ディスプレイは7インチのTFT液晶で、120Hzリフレッシュレートに対応。解像度は1920×1080で画面輝度は500ニトに対応しています。搭載CPUは上位モデルがAMD Ryzen Z1 Extreme、下位モデルがAMD Ryzen Z1となります。メモリ、ストレージ容量は共通で、16GB+512GBです。
発色の良い有機ELディスプレイではなく、液晶ディスプレイなのが少々残念ではありますが、ゲーミングデバイスとしてはまずまずのスペック。実物を見ても、視認性は比較的よく、ポータブル機としては十分に感じます。ゲームによっては処理性能が追いつかない場合も考えられますが、より高い性能が欲しいという人向けに、外付けGPUの「ROG XG MOBILE」も販売。RTX4090搭載の高性能となっており、ハブとしての機能も有しているため、ヘビーにゲームをプレイする人は、こちらもチェックしてみてください。
ゲーミングデバイスということもあり、排熱性能も充実しています。内部には「アンチグラビティヒートパイプ」という、本体を横向きや逆さまにしてもうまく排熱ができるシステムを採用。背面にはデュアルファンを搭載することで、ノイズを低減しながら、本体の熱を低く保てるようになっています。
ソフトウエアとしては、初期搭載OSがWindows 11であるため、普段からWindows PCを使用している人であれば、基本的な操作に迷うことはないでしょう。ただしモニターと接続する場合は、前述の通りキーボードやマウスは外付けのものを用意するのがおすすめです。
そのほか、ゲーム中に各種設定が行える「コマンドセンター」や、PCゲームクライアントアプリやゲームタイトルを一括で表示できる「GAME LIBRARY」、使用するコントローラーやキーボードに独自のショートカットを割り当てられる「キーマップカスタマイズ」といった、ゲームプレイに向けた独自機能も豊富に搭載。ゲーミング業界を引っ張るROGブランドらしい、完成度の高いソフトウエアといえます。
バッテリー持続時間は、クラウドゲームや動画再生が最大約6.8時間、ヘビーなゲームでは最大約2時間となります。一般的なPCと考えると物足りないかもしれませんが、ポータブルゲーミングPCとしては一般的なレベルでしょう。
テレワーク環境が整った今だからこそ試したいデバイス
人気ゲーミングブランドのポータブル機として登場したROG ALLY。持ち運びができ、ハードウエア、ソフトウエアともにこだわりを持って作られていることがわかる、洗練された印象の製品ですが、個人的な注目ポイントは、様々なプラットフォームのゲームができるという点。
PCゲームとして、SteamやEPIC Gamesからソフトをインストールしたり、クラウドゲームをプレイできるのはもちろん、Windows OSではAmazonアプリストアよりAndroidスマートフォン向けに配信されているアプリが一部インストールできます。
そのため、ROG ALLYはかなり多様なゲームがプレイできるデバイスに仕上がっています。もちろん周辺機器を充実させれば、ゲームだけでなく一般的なWindows PCとしての運用もできます。
コロナ禍の影響もあり、自宅にテレワーク環境を整えた人も多いはず。追加で用意するデバイスがなければ、上位モデルでも10万9800円、下位モデルなら8万9800円とかなり安価に購入できるゲーミングPCとなります。
取材・文/佐藤文彦