2013年頃に一大ブームを巻き起こした「ご当地キャラクター」をはじめ、「ご当地アイドル」や「ご当地ヒーロー」「ご当地グルメ」に「ご当地スーパー」「ご当地ナンバープレート」など “ご当地〇〇” 人気は令和になった今も続いている。
なかでもここ最近じわじわと注目度を上げているのが、ご当地カフェだ。地元はもちろん、旅行先でもわざわざご当地カフェに足を運ぶ人が増えているという。
そこで今回は、流行に敏感な若者世代からナイスミドル&ナイスミディまで、人々を虜にするご当地カフェの魅力に迫る。
なぜご当地カフェには人が集まるのか?
ご当地カフェが人を集める理由に「オリジナリティ」がある。人々がご当地カフェに求めるのは、全国展開しているカフェチェーンにはない「ならでは」の何かだ。
「地域性」や「特別感」などにも言い換えられるだろう。例えばカフェのメニューにイチゴのパフェがあったとしよう。これが「イチゴのスペシャルパフェ」という商品だとしても特にスペシャルさを感じることはない。しかし「大綱白里産・幻の黒イチゴ “真紅の美鈴” のパフェ」ではどうだろう?「ここでしか食べられない」感がプンプン漂ってくるではないか。
大手カフェチェーンでいうと、季節限定メニューを食べに行く感覚に近いかもしれない。明確に今しか味わえないものがあって、それが自分にとって心惹かれるものであればわざわざ時間をかけてでも足を運びたくなるというものだ。
オリジナリティは何も特別な素材やメニューだけを指すわけではない。カフェの立地や景観、店内のインテリアやテーブルコーディネート、カフェ主催のイベントや名物店員さんなども店の個性といえる。
そもそもご当地カフェと呼ばれる飲食店に明確な定義はないのだが、全国展開しておらず、地方ならではのメニューや店独自のセールスポイントがあることなどが一般的な見解とされている。
さらにご当地カフェに人が集まる理由としてもう1つ外せないのが「気取らない非日常感」だ。
都内の高級住宅街にあるカフェテラスや、ブランドスイーツ店のカフェなどは確かにおしゃれで特別感もあるが、心からのんびりする場としてはハードルが高い。全ての人にとってそうだとはいわないが、多くの人は麻布や白金のカフェに普段着では行かないのではないだろうか。
そういったカフェは、なんというか自分もおしゃれでいなければならないような、このスタイリッシュな雰囲気を壊してはいけないような、そんな気さえする。しかしこれがご当地カフェになると、不思議と気兼ねないのだ。
ご当地カフェには、武装解除してリラックスしていても誰にも何も咎められないような安心感がある。
ご当地カフェのなかにはカフェというより喫茶店や洋食店といったほうがしっくりくるようなレトロな趣を感じる店がたくさんある。地方では特に、一軒家を改築した古民家カフェや地元農家さんが営むアットホームなカフェなども少なくない。
ともすれば日常的な空間になってしまいそうなものだが、自分以外のものから発せられる香りや音のする中で受ける “おもてなし” がしっかり非日常感を生んでくれるのだ。特におもてなしは、レジで支払いをして席までセルフで飲み物を運ぶシステムの大手チェーンにはないものだろう。
ここ最近「チルアウト」や「ヒュッゲ」という言葉が広まっているが、ご当地カフェで過ごす時間にはぴったりな言葉だと思う。
個人的な意見をもう1つ付け加えると、「知る人ぞ知る」の “知る人” に自分がなっているという誇らしさもあるかもしれない。誰もが知る都内の有名店ではなく、地元の人しか知らない名店がいきつけだというのは少しだけ鼻が高いものだ。たとえそれがすでに地元では超有名なご当地カフェだったとしても、ご当地というだけで不思議と「自分のテリトリー」感を抱かされてしまう。
そして大手チェーンではない自分だけの推しカフェができると、お気に入りのメニューを写真に残したり、人に見せたりしたくなる(誰にも教えたくないという人もなかにはいると思うが)。すると、もともと地元民しか行かないような場所にあるカフェでもSNSや口コミで人気が広まっていく。
さらにご当地カフェの魅力に憑りつかれると、行ったことがないご当地カフェにも足を運んでみたくなる。どこかの誰かが「人に教えたくなる」と感じたご当地カフェの情報は、SNSを通じて自分もキャッチすることができる。
現在のご当地カフェブームは、ご当地カフェが持つ本来の魅力と現代の情報収集のしやすさ、拡散力などが相まって作られたものといえるだろう。