おわりに 金本位制の崩壊はオイルショックの引き金でもあった
最後にもう一つ忘れてはいけない視点があります。
それは金本位制の廃止によってOPEC(石油輸出機構)は原油価格の引き上げに踏み切ったことです。その理由は石油の輸出代金をドルで受け取っていたことにあります。
実際、金に対してドルが大きく下落してしまう状況をそのままにしておけば、サウジアラビアなどの石油輸出国は破産してしまうでしょう。
とはいえ当初、OPECは石油価格を急に上げたわけではありませんでした。
そんな状況下で勃発したのが第4次中東戦争でした。
これは第3次中東戦争でイスラエルが占領したシナイ半島とゴラン半島を奪還するためにエジプト・シリア連合軍がイスラエルに攻撃をしたことで戦争が始まりました。
結果的には戦争は短期で終わり、エジプト・シリア連合軍が敗北します。
しかし、この出来事がOPECに大義名分を与えたのです。
なぜなら米国がイスラエルを支持したと考えた中東の国々は、米国や西欧諸国に対して原油の禁輸を発表する事態に発展したからです。
こうした要因が重なった結果、国際原油価格が高騰し、結果的にオイルショックへと繋がっていったのです。
このように経済は国境を超えて繋がっており、予想外の出来事が思わぬ影響を与えていることを金本位制の廃止からも学ぶことができるのではないでしょうか。
こうしたマクロな視点が金融や経済を考える上でとても大切なのです。
今回は、1971年に米国が金本位制の廃止を決めた理由について解説させて頂きました。
これで今回の「再発見!金融経済アルキ帖」はおしまいです。
次回もよろしくお願い致します!
文/鈴木林太郎