性の多様性への理解を深め、誰もが生きやすい社会を作ることは世界的な課題の一つとなっている。ビジネスシーンでも、性的マイノリティに該当する方と出会った際には、無意識のうちに相手を傷付けるようなコミュニケーションをしないよう、正しい知識を身に付けることが求められる。
そこで本記事では、性の多様性への理解を深める上で欠かせない用語の一つ「SOGI」について解説する。また、併せて紹介する「SOGIハラスメント」や「アウティング」の意味もこの機会にぜひチェックしておこう。
SOGIの意味と誕生の背景
まずは、SOGIの意味について分かりやすく解説する。LGBTとの違いもしっかりとおさえておこう。
SOGIの意味
「SOGI」の読み方は「ソジ」。「Sexual Orientation(性的指向)」と「Gender Identity(性自認)」のそれぞれの頭文字を取った言葉だ。「性的指向」は恋愛感情がどの性別に向けられるかを表し、「性自認」は自分自身の性別をどのように認識しているかを意味する。
SOGIは、同性愛者などの性的マイノリティだけを対象とした言葉ではない。自身を男性と認識し、女性に好意を抱く、いわゆる性的マジョリティを含めた全人類の属性を表す言葉とされている。
LGBTとの違い
SOGIとLGBTは、共に人の性に関する用語だが、対象となる人の範囲が異なる。LGBTは、それぞれレズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーを指し、性的マイノリティの人々を意味する言葉だ。
一方、SOGIは、性的マイノリティの人々だけでなく、すべての性的指向と性自認の属性を示しており、SOGIはLGBTを包括しているといえる。
また、LGBTは性的指向と性自認に関する言葉が混在していてわかりにくいと指摘する声もある。レズビアン、ゲイ、バイセクシャルは恋愛対象が誰に向いているかという性的指向に関する言葉。一方でトランスジェンダーは、出生時に割り当てられた性別と性自認が一致しないことを示す言葉であるためだ。現在では、より多様な性的指向と性自認のあり方を包括する言葉としてSOGIが用いられる場面も増えている。
SOGIが注目されている背景
性的指向や性自認に関する国際人権法の適用に関する原則「ジョグジャカルタ宣言」が2006年に採択されて以降、特に国連機関などの公的な場でSOGIという言葉が広く用いられるようになった。
SOGIが注目された背景には、人権の平等について、LGBTに該当する人のみならず、より多様な性的指向や性自認を持つ属性の人々に対して配慮されるべきだといった考え方がある。
SOGIハラスメントとアウティング
次に、SOGIと併せて覚えておきたい「SOGIハラスメント」と「アウティング」について解説する。知識を身に付けることで、知らぬ間に身近な人を傷つけてしまうことのないようにしよう。
SOGIハラスメントとは
SOGIハラスメントは、性的指向や性自認に関して差別的な言動や嫌がらせを受けることを意味する。2017年、多様な性のあり方が自由に認められる社会を目指し、法整備を行うために開かれたレインボー国会では、SOGIに関するハラスメントを指す新たな言葉「SOGIハラ」が提唱された。
SOGIハラスメントは精神的・肉体的な暴力やいじめのほか、学校や職場で望まない性別での生活を強いられることを表す。例えば、戸籍上の性別が女性だからといってスカートの制服着用を強要することもSOGIハラスメントだとされる。
また、「男性だからこうあるべき」などの性別による社会的な区別もSOGIハラスメントに該当する。「男性なのに化粧をしている」などの何気ない一言も当事者を苦しめている可能性があるため十分に気を付けたい。
アウティングとは
また、SOGIハラスメントと併せて覚えておきたい用語が「アウティング」だ。アウティングとは、他者のSOGIについて本人の許可なく周囲に公表することを指す。例えば、本人が自身のSOGIを公にしていないにもかかわらず「〇〇さんは、バイセクシャルらしい」などと周囲へ暴露する行為がアウティングにあたる。
2015年にはアウティングの被害を受けた学生が自殺する事件も起きている。当時アウティングを受けた学生は、大学の相談員にアウティング被害について相談をしていたが、相談員の知識不足によって不適切な対応が取られたことも問題視された。なお、大学の所在している市では、この事件を機にアウティングを禁止する条例が定められた。
SOGIハラスメントへの対策
2020年6月から施行された「パワハラ防止法」には、SOGIハラスメントについての内容も含まれており、企業でのSOGIハラスメント防止が義務化された。
企業では、それぞれの人が持つSOGIを理由に、不当に異動や解雇されるなどの社会的な不利益を被ることのないよう対策が取られている。例えば、社員へのSOGIハラスメントの周知が具体的な対策の一つ。大手企業では、セクシャリティに関するセミナーの実施や、研修制度の導入などがされている。また、SOGIハラスメントが起きてしまった場合に迅速な対応が取れるよう相談窓口を設置したり、体制を整備したりもされている。
※データは2023年5月下旬時点のもの。
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文/編集部