がん患者の遠隔診療に対する満足度は対面診療よりも高い
ビデオや電話による遠隔診療の利用は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの間に飛躍的に拡大した。特にがんの治療では、免疫力が低下している患者の感染を極力抑える必要があることから、利用の伸び幅は大きかった。
こうした中、がん患者の遠隔診療の経験に関する大規模調査データを分析した結果、患者の満足度は対面診療よりも高いことが明らかになった。
米モフィットがんセンターのKrupal Patel氏らによるこの研究結果は、「Journal of the National Comprehensive Cancer Network」2023年5月号に掲載された。
米政府は2023年5月11日、新型コロナウイルスに関する公衆衛生上の緊急事態宣言を解除した。これを受けて、COVID-19パンデミック中に認められた、遠隔診療を広範に利用するための柔軟な措置も撤廃される可能性がある。
この点についてPatel氏は、「もしそうなれば残念なことだ。遠隔診療は、適正な実施条件のもとで適切な患者に提供されれば、対面診療に代わる貴重な選択肢となり得る」と話す。
同氏によると、遠隔診療では、スケジュールのより柔軟な設定、診察室や病院への交通費削減や移動時間の短縮が可能になるため、がん患者にとってのベネフィットは非常に大きいのだという。
今回の研究では、モフィットがんセンターで2020年4月1日から2021年6月30日の間に治療を受け、調査に回答した患者3万3,318人のデータを分析した。対象患者のほとんど(3万3,318人)は対面診療を、残りの5,950人は遠隔診療を受けていた。
その結果、診療へのアクセスについて高い満足度を示した患者の割合は、遠隔診療を受けた患者で75.8%、対面診療を受けた患者で62.5%であり、遠隔診療を受けた患者の満足度の方が有意に高いことが明らかになった(P<0.001)。
また、医師の対応や心配りに高い満足度を示した患者の割合は、遠隔診療を受けた患者で90.7%、対面診療を受けた患者で84.2%であり、やはり遠隔診療を受けた患者の満足度の方が有意に高かった(P<0.001)。
この結果は調査期間を通して維持され、また年齢や保険加入状況など、遠隔診療の印象に影響を与える可能性のある因子を考慮しても変わらなかった。
こうした結果が判明したとはいえ、Patel氏は、「遠隔診療が常に適切とは限らない。われわれのがんセンターでは、まずトリアージを行い、対面診療の必要性の有無を判断する。遠隔診療は決してオンデマンドのサービスではない」と話す。
この研究には関与していない、米シティ・オブ・ホープの最高医療情報責任者であるPaul Fu氏もPatel氏に同意を示し、「がん専門医が提供するケアの多くは、バーチャルでは提供できない」と話す。
Fu氏は、「当センターでも同じ期間中に遠隔診療が増加したものの、われわれが独自に行った評価では、一貫して遠隔診療よりも対面診療の方が良い成績を残していることが示された」と説明する。
同氏は、「それらの診療の多くは、がん治療では避けられない複雑さと個別化の必要性に関係している」と指摘する。
一方、米ノースウェルヘルスがん研究所の副医長兼腫瘍内科部長を務めるRichard Carvajal氏は、「遠隔診療は、医師とがん患者にとって非常に素晴らしい経験となった」と振り返る。
同氏は、「当初は、有害事象の増加や懸念事項の見落としなどが生じる可能性が心配されたが、それが実際に起こったという証拠はない」と述べ、「われわれが思っていた以上に遠隔診療でできることは多い。輸液が必要だったり、深刻な合併症が生じる可能性がある場合には対面での診療が必要だが、がんに対する薬物療法や長期的な治療を受けている人の毒性チェックは、遠隔診療で高頻度に実施することができる」と話している。(HealthDay News 2023年5月16日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://jnccn.org/view/journals/jnccn/21/5/article-p496.xml?rskey=zU2rfr&result=1
Press Release
https://moffitt.org/endeavor/archive/telemedicine-offers-higher-patient-satisfaction-in-cancer-care/
構成/DIME編集部