10万人が見届けた”神童対決”
いよいよ頂点を決めるための本戦がスタート。勝ち上がった選手は全員上位入賞の候補という過酷なトーナメントだった。Raitoは初戦を勝ち上がるも、強豪ゲッコウガ使いのれあに一歩及ばず、97位タイで敗退した。EVOJAPAN2020で優勝し、今大会の優勝候補として挙げられるしゅーとんが25位タイで敗退するなど、トーナメントは大荒れの様相を呈した。
筆者すいのこは敗者側から3回勝ち上がるも、49位タイで終了。
激戦が続いた大会もいよいよ大詰め、残すは上位3人のみとなった。勝者側決勝戦を戦うのは、コロナ禍以前において日本最強の名をほしいままにしていたザクレイ。相対するのは今大会の優勝筆頭候補、コロナ禍中に頭角を現した17歳の超新星、あcolaだ。
長年待ち望まれながらも、なかなか成立しなかった対戦カードがついに実現となって、会場の盛り上がりは最高潮に達した。試合は一進一退の攻防の末、あcolaが勝利。グランドファイナルへと駒を進めた。
敗者側決勝でザクレイを待ち受けたのは、メキシコからの刺客、18歳の”神童”Sparg0。あcolaと並び、現状世界最強に最も近いと称されている彼だが、今大会では勝者側のトーナメントで早々に敗北。しかしそこから破竹の勢いで連勝を重ね、敗者側決勝まで勝ち残ってきた。その勢いが衰えることはなく、ストレートでザクレイを下してグランドファイナルへと進出した。
ついに迎えたグランドファイナルは、あcola対Sparg0という、日本とメキシコの”神童対決”となった。文字通り世界最強を決める戦いとなったこの一戦、ぜひ試合を観て結末を見届けて欲しい。
今大会のYouTube配信において同時視聴者数が10万人を突破するなど、記録的な盛り上がりとなった『篝火#10』。出場したRaitoも、大会後モチベーションが更に増したと興奮を隠せない。
「純粋に勝利だけを追い求めた選手たちと、その熱気に沸く観客たち。そして舞台裏から支えてくれている運営スタッフによるユーザー大会がここまで大きく成長を遂げたのは、一人のファンとして非常に嬉しく思います。まだまだ現役の選手として頑張りたいと、改めて思わせてくれました。配信やこの記事をきっかけに少しでも興味が沸いた方は、是非現地に足を運んで、感動と迫力を生で体験していただきたいです!」
筆者もいち選手として参加したが、国内外の強豪が集ったことによる選手層の厚さ、ドラマチックな決勝戦とそれに呼応するような観客の盛り上がり、全てが過去最高の大会だったと感じている。また、トーナメント以外の居場所が色々な場所に散りばめられており、思い思いの形で楽しめるような仕掛けづくりがなされていた。これら全てを、自分と同じファンが、誰に頼まれるでもなく行なっていることが何よりの凄さだろう。
『スマブラSP』は発売から4年半ほど経過しているにもかかわらず、新しい世代が次々と台頭しており、勢いは衰えるどころかさらなる盛り上がりを見せている。その背景には、消えそうだった火を絶やさぬよう守り続けた人たちと、様々な形でその火を大きくし続けるファンの存在があってこそなのだ。
写真提供:fukase、うってぃー
取材・文/桑元康平(すいのこ)
1990年、鹿児島県生まれ。プロゲーマー。鹿児島大学大学院で焼酎製造学を専攻。卒業後、大手焼酎メーカー勤務などを経て、2019年5月から2022年8月まで、eスポーツのイベント運営等を行うウェルプレイド・ライゼストに所属。現在はフリーエージェントの「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズのプロ選手として活動中。代表作に『eスポーツ選手はなぜ勉強ができるのか』(小学館新書)。