任天堂の人気キャラクター達が戦う対戦アクションゲーム『大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL(スマブラSP)』は、ユーザー主導による非公式大会が盛んに行われている。中でも東京都で開催されている『篝火』は、日本では最大規模の大会として人気を誇っている。5月6日から7日の2日間にかけて開催された『篝火#10』にDIME GamingのRaitoが参戦。大会の様子や白熱する試合の様子をリポートした。
国内外から1800人が集結した、世界最大規模のユーザー大会
マリオやリンクをはじめとした任天堂の人気キャラクターがファイターとして戦う対戦アクションゲーム『スマブラSP』は、ユーザー主催による非公式大会が非常に多く開催されている。これは他のゲームタイトルだとあまり見かけない、独特の文化だ。中でも東京都で開催されている大会『篝火』は、参加者が1000人を超える日本最大規模の大会として人気を誇り、プロゲーミングチームのオーナーやゲーム大会を手掛けるイベント業者が視察にくるほどだ。
ゴールデンウィークを締めくくる、2023年5月6日から7日に開催された『篝火#10』は、同大会の記念すべき10回目の大会となった。出場者と観客あわせて実に1800名以上が参加し、海外から強豪選手も多数出場。日本の歴代『スマブラ』タイトル大会史上最もハイレベルな大会として、国内外から注目を集めた本大会に、DIME Gaming所属のプロゲーマーRaitoと筆者すいのこも出場した。
大会は東京都港区にある東京都立産業貿易センター浜松町館で開催された。会場に入ってまず目に飛び込んでくるのが、ホール内を埋め尽くす、たくさんのNintendo Switchとゲーミングモニターだ。このゲーム機本体はレンタル品などではなく、参加者が持参したもの。モニターなどの会場設営をはじめとした大会運営も、イベント業者ではなく有志のスタッフのみで行われている。まさに『スマブラ』が大好きなファンで成り立っている大会だ。
会場を埋め尽くす参加者たち。生み出される独特の熱気は、オフライン大会ならではの醍醐味だといえる。
大会に出場した選手は総勢1024名。1日目の予選では、ここから192名まで絞られる。大会のトーナメントには、ダブルエリミネーションと呼ばれる方式が採用されている。甲子園は1回負けたら即敗退のシングルエリミネーション方式だが、ダブルエリミネーション方式は1回負けても敗者復活トーナメントが残っている。勝者側と敗者側、それぞれのトーナメントで勝ち上がった人同士が、グランドファイナルと呼ばれる決勝戦を戦うことで優勝者が決まる仕組みだ。
海外選手など強豪が相次いで予選落ちする中、Raito、すいのこ共に敗者側で予選を通過。2日目の切符を手にすることができた。
Raitoは会場前方の配信用を兼ねた特設ステージで対戦。強豪相手に見事勝利した。
コロナ禍で生まれたオフライン大会、ミッションは「ファンの火を絶やさない」
大会2日目には、予選を勝ち上がった192名のみが選手として会場入りしている。他の来場者は”見学枠”、つまり観客だ。この日は900名以上の観客がトップ選手たちの華麗なパフォーマンスを観戦するために会場に集まった。
有名選手との写真撮影ができるフォトセッションブースが設けられており、憧れの選手と写真を撮るファンが後を絶たなかった。
彼らの主な目的は試合の観戦や”推し”の選手との交流だが、それ以外にも『スマブラ』というゲームのファンとして楽しめる、様々なブースが出展されていた。『篝火』主催のぬくぬくさんによると、これらのブースは参加者が主体となって設けたという。
「ここの机が余っているから、何かに使っていいですよと言うと、やりたい人が勝手に手を挙げて企画を進めてくれます。オープニング動画の制作や配信時のカメラなどもそうですが、運営側から指示や依頼をしているケースはほとんどありません。『篝火』という大会を媒体に、ユーザー自身が好きなことを好きなようにやっています」
有名選手や大会情報などがまとめられたフリーペーパーをはじめ、自作グッズの販売やDJブースなど多種多様なブースが出展されていた。
2020年12月にスタートした『篝火』は、コロナ禍でオフラインのイベントがなくなってしまったことに危機感を覚えたことがきっかけだとぬくぬくさんは語る。
「オンラインの大会や、トップ選手のみ招待した少人数の大会はありましたが、皆で集まって盛り上がる場が当時はほとんどありませんでした。『スマブラSP』以前から脈々と続く、オフライン大会でしか生まれない”火”を絶やしたくない、そういった思いで立ち上げたのが『篝火』です。第10回という節目になった今大会ですが、ここまでの盛り上がりになって本当に嬉しく思います」
第1回篝火の様子。参加者は今大会の約10分の1にあたる128名で、見学枠の募集も見送られていた。この時に生まれた小さな灯火は、コロナ禍が明けたいま、大きく燃え盛っている。