屋台村と聞くと、みなさんはどういうものを思い浮かべるだろうか?
昔ながらのおでんの屋台や縁日のそれ。運動会の「本部」のようなテント。いや、最近ではフードトラックを想像する方が一番多いかもしれない。
オーストラリア第3の都市ブリスベン。都市圏人口約260万人のこの街ではちょっと意外で、かなり大規模で、従来の枠には収まらない「屋台村」が存在する。
その名は「イートストリートノースショア」。「ノースショア」はその場所が同市の中心部を流れるブリスベン川の北岸に位置することから。ちなみに隣は7階建てといった巨大クルーズ船も入れる港だ。
「イートストリートノースショア」がユニークな点。それはまず「屋台」の「素材」にある。「従来の屋台」でも「テント」でも「フードトラック」でもなく、船や鉄道やトラックなどでの輸送に用いる「コンテナ」をそのまま建物として利用しているのだ(もちろんカラフルに塗り直すことは忘れていない)。
「イートストリートノースショア」の入り口の一つ。カラフルに塗られたコンテナがまるで巨大な積み木のようだ
確かに近年「コンテナ」を建物に使うことが増えた。日本でも「コンテナハウス」という言葉を最近耳にするようになった。
その名のとおりコンテナを1~複数個を組み合わせて造る家だ。またオランダではこのコンテナを組み合わせてワンルームマンション風の学生寮にしている例まである。
だが「コンテナの商業施設」はまだ珍しいかもしれない。
「コンテナ集積場」跡地に「コンテナ屋台村」の再開発アイディア
じつはこのコンテナには一つユニークなストーリーが隠されている。「イートストリートノースショア」はもともとブリスベン市所有の「コンテナ集積場」だった。
その「再開発」方法に関するコンペの際、ある起業家グループが「コンテナをそのままつかった屋台村をつくる」と提案し、見事権利を勝ち取った。
その起業家グループの一員で共同創業者の一人でもあるジョン・ステイトン氏は語る。
「集積場のコンテナをどけるのにもお金がかかります。そしてそのコンテナをどこに運ぶのかという話にもなります。だったらそのまま店舗に使ったらいいじゃないかと考えました。この街には野心と情熱を持った素晴らしい若い料理人たちがいますが、市の中心部などに店を構えるのは賃料も改装費も莫大にかかる。でもここならそもそも不動産価格は低いですし、コンテナの改装ならそれほどお金はかかりませんから」
コンテナ集積場にコンテナ屋台村。そういう「土地のゆかり」を大切にした再開発は人々をひきつける。
ステイトン氏は「市の中心部と比べて賃料は抑えられる」と言うが、それほど不便な場所にあるわけではない。
市の中心部にある市庁舎やブリスベンセントラル駅からも車で約15分。「コンテナ集積場」跡地利用という立地条件も生かして、1400台分もの駐車場を確保してある。さらに近くにバス停もあれば、ブリスベン川を行く公共フェリーの船着き場もある。