『烏克蘭』とは、東ヨーロッパに位置する国家の名前です。そのまま素直に読むと『うこくらん』と読んでしまいそうですが、どのように読むのが正解なのでしょうか?烏克蘭の読み方や言葉の由来、さらには烏克蘭とはどのような国なのかを、詳しく紹介します。
烏克蘭の読み方とは
烏克蘭という文字を見ても、すぐに正しく読める人は少ないかもしれません。正しい読み方を確認しましょう。
正しくは「ウクライナ」
烏克蘭の読み方は『ウクライナ』が正解です。『烏』の『う』以外は、音と読みが異なるため、字面だけを追って『ウクライナ』と読むは難しいでしょう。
日本では外来語・外国名はカタカナ書きするのが一般的ですが、その昔は音に近い漢字を当てて読んでいました。中国語から引用されているものも多く、中国語と同じ表記が採用されている国名・外来語はたくさんあります。
『烏克蘭』についても、表記は中国語と同じです。ただし烏克蘭とするのは繁体字のみで、簡体字では『乌克兰』となります。
烏克蘭の国名や国旗の由来
ウクライナを知る上で、国名や国旗の由来を理解することは有益です。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
「辺境・国境地方」を意味する国名
ウクライナには、スラブ語で『辺境』『国境』という意味があります。ウクライナ周辺は、歴史的にさまざまな国の支配を受けてきた土地です。時代によって国境が変わる事態も多く、辺境・国境という言葉が多く使われてきました。
9~12世紀頃に勢力を誇ったのは、東スラブ民族初の統一国家『キーイフルーシ(キエフ公国)』です。キーイフルーシは現在のキーウを中心に栄華を極めましたが、13世紀頃にモンゴル軍の侵攻を受けて崩壊します。その後ウクライナ周辺の支配権は、時代によってさまざまな国・勢力へと移り変わりました。
『ウクライナ』という独立国家が誕生したのは、1991年のことです。
国旗の青は空を、黄色は小麦を表現
ウクライナの国旗は、独立ウクライナのシンボルとして使用されていたものです。ウクライナが完全な独立を果たした際、そのまま国旗に採用されました。
国旗は上半分が水色、下半分が黄色の2色で構成されています。国旗の水色部分は、果てしなく広がるウクライナの青い空の象徴です。一方で黄色は、広大な畑に小麦が豊かに実る様子を示しています。
ウクライナは肥沃な土壌を持つことで知られており、世界でも有数の小麦の生産地です。一面に広がる穀倉地帯を連想させる黄色は、ウクライナにふさわしい色といえるでしょう。
烏克蘭ってどんな国?
東欧と日本は地理的に遠く、ウクライナに対して明確なイメージが湧かない人もいるでしょう。ウクライナとは、そもそもどのような国なのでしょうか?
烏克蘭の基本情報
ウクライナは、東ヨーロッパ地域にある共和制国家です。首都は『キーウ』にあり、国家公用語としてウクライナ語が話されています。
ウクライナの国土は60万3,700平方kmあり、日本の約1.6倍です。人口は4,159万人(2021年時点)で、約8割のウクライナ人と残り2割のロシア人・ベラルーシ人・モルドバ人などで構成されています。宗教はキリスト教が信仰されており、ほとんどの信者はウクライナ正教や東方カトリック教です。
ウクライナの経済は、穀物生産・鉄鋼や造船業などが基盤となっています。中でも穀物生産は重要で、古来ヨーロッパ有数の小麦の産地として重要な役割を果たしてきました。ウクライナは『ヨーロッパのパンかご』『ヨーロッパの穀倉地帯』などとよばれるケースも少なくありません。
美しい街並みが魅力の烏克蘭
ウクライナはかつてのキーフルーシが栄えた場所です。首都キーウには、当時の華やかな文化を感じさせる遺跡・遺構が今も数多く残っています。
またキーウは、かつて東スラブ正教会の拠点として栄えた場所です。市内には300以上もの教会が存在したといわれており、歴史的にも貴重な寺院や修道院が見られます。
キーウの観光の目玉として人気なのが『ペチェルスカヤ大修道院』『ソフィア大聖堂』です。ペチェルスカヤ大修道院は、『大修道院』の肩書きが許されている数少ない修道院です。建設は約1000年前にさかのぼり、広大な敷地の中には歴史豊かな博物館や教会があります。
一方ソフィア大聖堂は、現存するキーウ最古の教会です。敷地内にはウクライナで初めて作られた図書館もあり、キーフルーシの政治・文化の中心として強い存在感を示しました。どちらの施設も、世界遺産に指定されています。
このほかキーウ以外では、数百年前の街並みが残る『リヴィウ』なども、東欧の歴史を肌で感じられるとして人気です。
烏克蘭と日本の関係
日本とウクライナの国交が始まったのは、1992年です。
ウクライナの独立以降、日本はさまざまな経済援助や必要な支援を行ってきました。2014年に『ウクライナ危機』が発生した際には、日本は国別では最大規模となる約18.5億ドルの支援を表明しています。
また2015年には日本の総理が初めてウクライナを訪問・翌年にはウクライナの大統領が日本を訪問したことで、2国間の関係はより深いものとなりました。
さらに日本の都市とウクライナの都市同士がつながって、文化交流を行っているケースも少なくありません。例えば京都市とキーウ市・横浜市とオデーサ市はそれぞれ姉妹都市関係にあります。日本・ウクライナの両都市で、お互いの文化を紹介するイベントが定期的に開催されています。
2022年2月24日からロシア軍によるウクライナへの軍事侵攻が始まり、執筆時点では混乱が続いている。
構成/編集部