DIME MAGAZINE
英語のやりとりが必要な仕事でもChatGPTは役立つ。生成される英単語のレベル調整や音声入力を活用した英会話によって英語をスキルアップできる方法を、英語学習コーチの谷口恵子さんに聞いた。
ChatGPTは英語学習ツールとしても使える！
DIME ChatGPTを使った英語学習法を積極的に発信されていますが、特に役立つと感じる具体例を教えてください。
谷口 ChatGPTは、友人や知り合いとのやりとりなのか、またはビジネスシーンなのか、任意のシチュエーションを指定すると、それぞれに適した英文を教えてくれます。また、分野を特定できる点も便利です。例えば「製薬業界で頻繁に使われている英単語を教えて」と入力すれば、すぐに教えてくれますよ。
DIME 自分が携わっている仕事に合わせて、英語の習得を進められるそうですね。
谷口 今までは教材や先生の教えをふまえて学習を進めていくことが多かったのですが、ChatGPTの活用で、自身にカスタマイズした英語学習が気軽に行なえます。従来の方法よりも、5〜10倍は効率的になる感覚ですね。
DIME 谷口さんは教える立場としてどう活用していますか？
谷口 例えば、ほとんど同じ意味だけど、微妙なニュアンスに違いがある類義語の言い回しについて質問があった時などに、そのことで活用することがあります。ChatGPTは英語力が非常に高く「of」や「to」の使い分け方などを改めて学べるのはとても大きいですね。教える立場でも、まだまだ知らないことは多いし、常に学習する必要があります。気軽に聞けてすぐに回答してくれるChatGPTは、とても役立っています。ChatGPTは英語力が高く、便利な英語学習ツールとしてたくさんの人におすすめしたいですね。
英語学習コーチ
谷口恵子さん
TOEIC990点、通訳案内士の資格を持つ出版社の代表。立教大学経営学部でも教鞭を執る。ChatGPTを使った英語学習法を発信中。
谷口さんが英語レッスンで講師として活用するフロー
谷口さんが英語を教える時には、手元にChatGPTを開いておき、生徒からの質問や自身が教えていて気になることがあったら、恥じらわずに質問するという。そうすることにより、生徒だけでなく自身の英語力アップにも結びつけている。
使いこなしポイント〈1〉自分の仕事に関連する英単語帳を作る
谷口さんが〝英語学習の基礎〟と位置づけている単語力を鍛えるのにChatGPTは理想的で、オリジナルの単語帳を作ることをすすめる。「例えば、自分の仕事に関連する業界で頻出の英単語を挙げてもらう、または英文メールから単語を抜き出してもらう」といいだろう。覚えにくい単語は、例文を作成してもらうと習得しやすくなるそうだ。
上記のように「物流の仕事」「海外とやりとりする」「10個教えて」という具合に、回答を生成する条件を細かく設定しよう。
〈POINT〉漠然とChatGPTに指示するだけでなく、英字新聞の記述を活用するのも手
自分の仕事に関連する英字の新聞をスマホで撮影後、OCRアプリなどを使ってテキストを抽出し、その中から重要な英単語をChatGPTに抜き出してもらうこともできる。海外のWebサイトに掲載されている記事も同様の方法で活用しよう。
使いこなしポイント〈2〉覚えた単語で英作文をどんどん作成！「CEFR」を指定し回答レベルを調整する
ChatGTPで英文を作成する際やオリジナル単語帳を作りたい時に知っておきたいのがCEFR（セファール）だ。例えば「CEFRのB1レベルの英文」と具合に指示すればOK。自分の語学力に合わせて読みやすい文章が生成され、英語を学びやすくなる。英文から「CEFRのB1レベルの単語」を抜き出せるのも便利だ。
CEFRとは？
ヨーロッパで策定された言語能力に関する国際的な共通基準のこと。A1からC2までの6つのレベルに分かれていて、A1だと中学、B1だと高校、C1だと大学卒業程度と規定されている。ChatGPTで「英検何級」や「TOEIC何点」などと指示するよりも有効だという。
上で試したように、同じ製薬業界に関する英文作成でも、中学卒業程度の「CEFR A1」と、高校卒業程度の「CEFR B1」では、使われる単語も内容も変わってくる。この回答が難しすぎれば「もっと簡単な英単語で」、簡単すぎれば「CEFR C1レベルで」という具合に指示すればいいのだ。
使いこなしポイント〈3〉作文にも慣れたら英会話に挑戦！条件設定の際には「50ワード」以下に
ChatGPTは英語での会話を続けるのが得意なので、英会話のネックになりがちな「会話する相手を見つける」ことも問題なしだ。英語での会話をChatGPTと行なう際には「50ワード以下で返答」という条件を設定するのがポイント。短めの言葉でテンポよく、ネイティブと話しているようなやりとりができる。
英会話を始める際に「上司との会話」という設定を指示することがコツ。こうすることで、自分が想定しているビジネスシーンでの、より実践的な英会話のやりとりとシミュレーションできる。「50ワード以内」とともに「自分の名前」「あなた（＝ChatGPT）の名前」「役職」も具体的な条件に加えるのが谷口さんの実践方法だ。
〈POINT〉Chromeの拡張機能で音声入力をオンに
ブラウザー「Chrome」のPC版の拡張機能で「Voice Control for ChatGPT」と「Voice In – Speech-To-Text Dictation」をインストールすれば準備は完了。
使いこなしポイント〈4〉ほかの音声AIサービスで発音を整えて認識精度を上げる！
ChatGPTとの英会話を行なう際には、残念ながら正しい発音でないと正確に認識されないことも多い。そのため、ChatGPTの活用と並行して、ほかの音声AIサービスで英語の発音もトレーニングすることを谷口さんはおすすめする。「Natural Reader」や「ElevenLabs」のような音声AIサービスが最近では充実しており、発音をスロー再生で確認できたり、自分の声を使って確認できたりと、いずれも実用的だ。
谷口さんがおすすめする音声AIサービス
声や速度を自由に調整できる「Natural Reader」（無料）
テキストを音声に変換して読み上げるサービス。PDFやWord文書、Webサイトなど、様々な形式に対応。声の種類や発話の速度を調整でき、聞き取りの練習にも使える。ChatGPTで作成したプレゼン用の英文を読み上げさせて、それを真似るのもいいだろう。
自分の声で発話させられる「ElevenLabs」（月額5ドル）
ネイティブスピーカーのように、テキストを自然な発音で読み上げるAI音声合成サービス。音声データをダウンロードできるので、繰り返して聞くのに最適。自分の声をサンプル音声として読み込ませて、任意のテキストをしゃべらせる機能も用意。
JUDGE
○ 英語で話す営業の〝ロープレ〟もバッチリ！プレゼン用のインパクトのある単語も教えてくれる
ChatGPTであれば、英作文の「お題」を出してもらうこともできるし、Chromeの拡張機能を使って英会話の練習にもなる。その際に、誰とどんな内容のやりとりをするのかを指示すれば、かなり実践的な学習ができる。いわば自分用の英語教師を手に入れられるようなもので、ビジネスで英語をバリバリ使えるようになりそうだ。
× 高校生レベル以上の英文法が苦手。文法学習には向かないので要注意
ChatGPTは、自然な英会話は得意だが、いわゆる「主語（S）＋動詞（V）＋目的語（O）＋補語（C）」といった英文法については、それほど得意ではない。「過去完了形の例文を作って」と指示を出しても不正解な回答が出てくることもある。英文法の学習にも使いたいという人は、そのあたりのことを注意して使うようにしよう。
取材・文／河原塚英信 イラスト／えなみかなお
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取材・文／DIME編集部
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