AWA SAKE(泡酒)をご存知だろうか。スパークリングワインのようにシュワシュワ〜と気泡が昇り、思わずシャンパングラスに注ぎたくなるような日本酒だ。技術革新の進む日本酒界で国内外から注目を集める酒のひとつだ。
中田英寿氏が厳選した「CRAFT SAKE WEEK 2023」の初日にズラリ
中田英寿さんが代表を務める株式会社JAPAN CRAFT SAKE COMPANY主催の「CRAFT SAKE WEEK 2023」が2023年4月、六本木ヒルズアリーナで開かれた。コロナ禍を経て4年ぶりの開催になった。10日間にわたり日替わりのテーマを設定、計100の酒蔵が出店した。
4月下旬に開かれた「CRAFT SAKE WEEK 2023」の初日。テーマはAWA SAKE。
出品された銘柄は「水芭蕉」(永井酒造/群馬県)、「ESHIKOTO」(黒龍酒造/福井県)、「七賢」(山梨銘醸/山梨県)、「陸奥八仙」(八戸酒造/青森県)、「南部美人」(南部美人/岩手県)、「臥龍梅」(三和酒造/静岡県)、菊泉(滝澤酒造/埼玉県)、「真澄」(宮坂醸造/長野県)、「出羽鶴」(秋田清酒/秋田県)、「七田」(天山酒造/佐賀県)。
その初日を飾ったのがAWA SAKEである。
AWA SAKEはその名の通り泡の立つ酒だ。スパークリングワインになぞらえスパークリング日本酒と呼ばれることもある。シュワシュワの爽やかさとフルーティな香り、そして華やかさ。目をつむって飲んだら一瞬、これは日本酒なのかワインなのかと迷うような新しい感覚の酒だ。
以前から泡の立つ日本酒はあった。「発泡にごり酒」とか「発泡系」と呼ばれる。火入れせずに瓶詰めすると瓶内で発酵が続き、炭酸ガスが生まれる。ただし、原料の澱を残したままなので白濁したにごり酒になる。
AWA SAKEは瓶内二次発酵によって炭酸ガス気圧が高まるのはにごり酒と同じだが、シャンパンのように澱引きをするため液色はクリアだ。
この製法を開発したのは群馬県川場村の永井酒造。1886年創業の酒蔵である。現在6代目になる永井則吉さんが、この業界に入った1995年からスパークリング日本酒の研究を始めた。10年以上、700回以上に及ぶ試作を経て、ようやく2008年、納得のいくスパークリング日本酒が完成した。2013年にはそのビンテージを2万5000円で売り出し、900本が完売した。
AWA SAKEの製法を開発した永井酒造の6代目永井則吉さん。手にしているのは『MIZUBASHO PURE』。
スパークリングワイン世界基準より高い炭酸ガス気圧
2016年に「一般社団法人awa酒協会」を設立、AWA SAKEの基準を設けて認定酒とした。商品開発基準を次のように定めている。
1.原料は米、米こうじ、水のみの日本酒であること
2.米は国産米100%を使用。農産物検査法により3等以上に格付けされた米であること
3.醸造中の自然発酵による炭酸ガスのみを保有していること
4.酒の外観は透明であり、抜栓後に容器に注いだ時に一筋泡を生じること
5.アルコール分は10度以上であること
6.炭酸ガス気圧は20℃で3.5バール(0.35メガパスカル)であること
以上の基準をクリアした酒だけにAWA SAKEの呼称が許される。
AWA SAKEの条件を満たしている酒には、一般社団法人awa酒協会の認定印がついている。
特筆すべきは炭酸ガス気圧の高さだ。スパークリングワインの炭酸ガスの世界基準は3気圧以上。ちなみに一般的なビールの炭酸ガスは2.0〜2.5気圧。あれほど泡立つビールより、スパークリングワインのほうが高いのだ。そしてAWA SAKEの気圧はスパークリングワインより高い3.5以上と定めている。