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28年間ありがとう!「W-ZERO3」「HONEYBEE」など名機を生んだPHSを受け継ぐもの

2023.05.25

■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議

スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回は、PHSのサービス終了について会議します。

「外に持っていけるコードレス電話」から始まった

房野氏:2023年3月末をもってY!mobileの「PHSテレメタリングプラン」の提供が終了し、PHSのサービスが終了しました。

房野氏

石川氏:個人向けに続いて、法人向けサービスが終了しました。

石川氏

石野氏:一応、自営PHS(コードレス電話の子機としての使い方)は残っている。

石野氏

石川氏:聞くところによると、自営PHS端末はまだ年間40万台くらい売れているっていう話。

石野氏:そんなに!

石川氏:病院とかで使われている。

法林氏:交換品が必要だからね。

法林氏

石川氏:5、6年も使ってくると買い換えないといけないので。

 PHSって振り返ってみると、日本独自の規格で、一時期はタイや台湾などでも使われた。携帯回線で1つの規格が30年以上も使われたのは、あまり例がないことです。

石野氏:2Gくらい。

石川氏:時代に合わせて変化して生き延びてきた技術だったのかなと感慨深いものがあります。日本でPHSは簡易型携帯電話みたいに言われていて、「コードレス電話を外に持っていける」みたいなイメージでスタートして、安く使える携帯電話という触れ込みでした。ただ、技術的に電波があまり飛ばず、移動しながらだと切れてしまう、瞬断が生じることもあったので、料金が安くても結果として携帯電話に負けてしまった。電波の特性上、人体への悪影響が少ないとされていて、自営PHSは病院などに普及し、お医者さんの連絡手段として重宝されました。医療ドラマなどで首からPHSを下げている……みたいな感じ。それもだんだん終わりを迎えます。これからは「sXGP」がその役割を担うでしょう、という感じですね。

房野氏:sXGPは、PHSの周波数帯(Band39:1.9GHz帯)を利用したLTEをベースとする通信規格ですね。無線LAN同様、回線の免許が不要で利用できると。

石野氏:コードレス電話を持ち歩けるというところから始まり、最後も残っているのはそこっていう感じですね。

 PHSが流行ったのは僕が高校生、大学生の頃で、高校生の頃に今で言うスクールカーストの高い人たちが持ち始めていた。昔から割と料金が安かったので、今で言う格安スマホの先駆け的なものというか、携帯電話の代替というか、携帯電話は高額だから持てないけどPHSがあるよねってことで若い世代から広がった感じでした。ただ、そういうシステムでもあったので、エリアがなかなか広がらなかったり、iモードのヒットがあったりして、PHSじゃ電話しかできないというような評価になっていった。一方でNTTパーソナルがPHSのサービスをやめ、DDIポケットがウィルコムになったところで数々の面白い端末や料金プランが出てきた。逆境を活かして、携帯電話事業者にできないようなものを仕掛けてきたという歴史があった。今で言うMVNOっぽいマインドがありましたね。

石川氏:PHSは最初の頃から「ドラえホン」(NTTパーソナルの子供向けPHS端末)みたいな、すごく個性的な端末を出していた。携帯電話はビジネスマンが持つものというイメージだったけど、PHSに関しては非常にユニークなものがたくさん出てきた。

石野氏:腕時計型とかね。

石川氏:「TEGACKY(テガッキー)」みたいな、単に手書きの画像を送り合うような端末とか。

東芝「TEGACKY」

法林氏:携帯電話の世代が進み、高速通信が可能になってきた頃、徐々に「今後、PHSはどうしますかね?」みたいな話が出てきた。特に、周波数帯は貴重なので、「1.9GHz帯をどうするの?」という話になり、ウィルコムはいわゆる「高度化PHS」をやり始めたんだけど、その流れが最終的に現在のsXGPに行き着いている。PHSの末期は結構、いろいろな問題があったんだけど、意外に端末を作るのが大変だった。例えば、半導体の微細化で、「○○ナノ(nm)」っていうプロセスルールがあるでしょ。最新の「Galaxy S23」のSnapdragon 8 Gen2 for Galaxyは4ナノプロセスで作られている。スマートフォンのチップセットが10ナノプロセスで製造されていた頃、PHSは数十ナノプロセスのチップしか作れなかった。そのため、せっかくPHSは省電力なのに、チップセットの電力消費が大きくなってしまった。より微細なプロセスルールでチップを作ればいいって話になるけど、「ミニマムのオーダーが100万台分です」なんていう量産化が必要な世界で、とてもじゃないけれど作れないという話になり、結局どうにもならない。ただし、PHSで生まれた様々なアイデアは、ちゃんと今の携帯電話のいろんなサービスに生きている。

石川氏:公衆電話に依存している移動通信網って、今思うとすごいですね。

法林氏:それだけ公衆電話がたくさんあった。それで「都市型でやりましょう」という発想で始まっていて、途中で、ISDNだったものを違うネットワークへ徐々に切り替えていった。そういう工夫を一生懸命にした結果で実現したサービスだったと思うんですよね。

石川氏:少し前に寺尾さん(ソフトバンク 常務執行役員 寺尾洋幸氏。DDIポケットに在籍しPHSサービスに携わる)と話す機会があったんですが、「めちゃくちゃ大変だったのは、ネットワークをいかに進化させていくか」というような話をされていました。当初はNTTのネットワークに依存していたんだけど、どんどんデータが流れてくるから、それを別のところにも流していくということで、そこでNTTが協力してくれたと。

法林氏:NTTコミュニケーションズだったんだよね。

石川氏:NTT網ではなく、自分のネットワークに流した。しかもお金がないから全国一斉じゃなくて、トラフィックが多い所から変えていった。だから垂直統合というか、ネットワークをやって、ネットワークを活かすための端末を作って、2006年6月には「W-ZERO3」のようなユニークな端末が出てきた。DDIポケット、ウィルコムはそうやってすべてをやっていた面白い会社だったなぁと思います。今ではネットワークはネットワーク、端末は別のところが作っている感じなので。

シャープ「W-ZERO3」

PHSの様々なアイデアが今の携帯電話に生き残っている

法林氏:携帯電話がベースの時代になり、「PHSはやめますか」みたいな話になってきた。そして、「1.9GHz帯をどうするの?」みたいな状況でもある。いわゆる「高度化PHS」をやり始めたんだけど、それが最終的に今のsXGPに行き着いている。実は大きな問題が1つあって、端末を作るのがすごく難しい。例えば「Galaxy S23」のチップにも使われているSnapdragonは4ナノプロセスで作られている。PHSは、5、6年前の当時最先端だった端末でも20ナノや30ナノプロセスでしかチップが作れない。ということは、PHSはせっかく省電力なのに、全然電池持ちがよくない。プロセスルールを上げて、より微細なチップを作ればいいってなるけど、「最低オーダーが100万台分です」という量産化が必要な世界で、とてもじゃないけれど作れないという話になり、結局どうにもならない。ただし、その発想自体はちゃんと今の携帯電話のいろんなサービスに生きている。

石野氏:そうですね。TD-LTEも、まさに筋としてはそうです。周波数帯域を時分割で使うというのも、元々はPHS……というとちょっと語弊がありますけど、方式としては近い。PHSもそのままだと速度が遅いから、次の世代に行きましょうということになり考えられたのが「AXGP」で、いつの間にかTD-LTEと完全互換という話になり、いつの間にか3GPPで標準化されてしまい、いつの間にかTD-LTEと言っても怒られなくなってしまった(笑) 一応、sXGPとしてPHSの概念は今も残っているという感じですかね。高い周波数で狭いエリアをカバーしてトラフィック対策するのも、今の4Gや5Gの考え方に近いし、技術的に先進的なところがあった。それが今のLTE、4Gに生きて、TDD方式で5Gにも使われたりする。マインドというかスピリットが生きているんじゃないかと思います。

房野氏:PHSは1.9GHz帯をスタート時から使っていたんですか?

石川氏:そうです。1.9GHz帯だけ。

房野氏:当時、周波数が高いからつながりにくいとか、そういうことはなかったのですか?

法林氏:いや、そうではなくて、出力が弱いので電波が飛ばないからつながりにくかった。基地局も端末側も出力が弱い。だからこそ病院で使われるんですよ。

石川氏:コードレス電話から進化しているので出力が弱い。だけど、出力が弱いと話にならないよねっていうことで、ウィルコムはどんどん出力を上げていって、無理矢理つながるようにした。

法林氏:PHSサービスの開始当初、DDIポケットとNTTパーソナルの方式には微妙に違いがあって、DDIポケットの方が出力は強かったんですよ。そういう違いがあったんだけど、他社がサービスをやめちゃったのでDDIポケット方式になったんだけど、それでも携帯電話に比べれば、出力も弱かったけど、その分、電磁波も弱く、医療機器をはじめ、他の電子機器への影響が少なかった。その昔、2G(PDC方式)とPHSがあった時代、ケータイに着信が来るとき、直前に家のテレビのスピーカーがブーンと鳴ったの覚えてる?

石野氏:ありましたねぇ。

法林氏:携帯電話は当時、かなりの電磁波が出ていた。PHSの着信時にはそんなことは起きなかった。元々、家のコードレス電話だったから、電磁波も弱いわけです。

石野氏:テレビへの影響は、楽天モバイルに割当てられる可能性が高まっている700MHz帯にも絡んできますね。意外と根深い。

法林氏:電磁波問題はあまり知られていないんだけど、すごく大事なこと。

房野氏:PHSは何社がやってたんでした?

石野氏:PHSは、アステル、NTTパーソナル、DDIポケットからのウィルコム。

法林氏:PHSは3社しかない。

石野氏:アステルは潰れ、パーソナルはドコモに吸収されてなくなり、DDIポケットはノンコア事業としてKDDIから切り離され、ウィルコムとして投資会社に買われ……。不遇の人生だったんですけど、それゆえに面白いものがいっぱい出た。

自営PHSの後継としてのsXGP、iPhone・iPadが対応

石川氏:そして、sXGPという規格になりつつあります。sXGPはXGPベースなんだけどLTEの通信技術が入っていたりもする。1.9GHz帯の電波を使うものになっている。今まではシャープや京セラのAndroidスマートフォンしか対応してなかったsXGPが、2023年4月からiPhone、iPadも対応するようになった。なので、これからは自営PHSを使っていた病院とかで、お医者さんがiPhoneを使って内線で連絡するような形になってくるので市場として結構大きくなるだろうと。

房野氏:その場合も電磁波は抑えられるんですよね?

石川氏:4Gの電波を使っちゃったら意味ないんですけど、1.9GHzの電波を使っているぶんには、さほど問題ないかな……? PHSと完全に同じではないんですが。

石野氏:そうですね。グローバルな規格なので、iPhoneでもAndroidでも対応できる。

房野氏:SIMはどうなるんでしょう。

石川氏:ビー・ビー・バックボーンというソフトバンクの100%子会社が提供しています。例えばiPhoneであれば、1.9GHz帯対応のSIMを入れれば病院の中だけで使える端末になるし、iPhoneはデュアルSIMなので、4G/5GのSIMも入れれば病院の中ではsXGP、外では普通のLTEや5Gにつながるようになる。

房野氏:医療向けに、院内ではキャリアのSIMは使えないようにしておくとか、そういうこともありそうですね。

石野氏:簡単に言うと、PHSの思想を携帯電話で使えるようにしたって感じ。

石川氏:イメージ的にはプライベートLTEみたいな感じ。案外、キャリアはローカル5Gに力が入っていなくて、ソフトバンクはむしろ病院や工場向けのIoTといった屋内の様々な機器の通信はsXGPのモジュラーですることを考えているような感じがします。

房野氏:sXGPのサービス自体はどこがやるんですか? キャリア的なものがあるんですか?

石川氏:ライセンスはないんです。誰でも使っていいし、誰でも作れる。

法林氏:ウィルコムがソフトバンクになる直前、高度化PHSからAXGPになり、sXGPになった時、業界団体のようなものを作った。そこで標準化をして各社が採用するという形になっている。TD-LTEとほぼ同じというか、技術的にはよく似ているそうなので、やろうと思えば、できるんじゃないかと。あとは対応周波数の問題くらいかな。

石川氏:機器はパナソニックが作っているし、IIJも取り組んでいたりする。そういったネットワークのプロがお客さんのニーズを聞いて「これだったらsXGPでいいんじゃないですか」みたいな感じで導入する。しかも、普通のパソコンくらいの機械とアンテナさえあればできるそうです。ローカル5Gは免許が必要ですけど、sXGPは免許もいらない。

石野氏:自営ができるのは大きいですよね。

房野氏:免許がいらないんですね。

石野氏:元々の自営PHSって免許がいらないんですよ。

法林氏:もちろん技適は通らないとダメですよ。免許がいる/いらないとはまた別。

石野氏:キャリアじゃなくても、その周波数を使っていいということ。

石川氏:Wi-Fiっぽいけれど、Wi-Fiよりも高度なことができる。

法林氏:やっぱりコードレス電話ですよ。コードレス電話は免許がいらない。

石川氏:しかもSIMベース、SIM認証なので、端末も回線も管理できて、セキュリティが高い。

房野氏:電話番号を持つのですよね?

石川氏:そうですね。

石野氏:VoIPが内線番号を持つのと同じ。

房野氏:内線に近いと。

石野氏:内線ですよ、内線。

石川氏:VoLTEで使えるという話です。

法林氏:国と地域によっていろんなニーズがある。PHSのおかげで、オフィス内の電話をコードレスホンにするというスタイルが一定数、普及した。なぜそうなったかというと、オフィスの中で模様替えをして、「○○さんは来週からは11階で、△△さんは13階に異動する」という際に「僕の内線番号はxxxx番です。いつ引き直してくれますか?」っていう話になるんだけど、構内PHSはワイヤレスなので、端末だけ持っていけばいい。アメリカもそういう話はあるんですけど、ドラマの『24』にも出ていたけど、CISCOのIP電話なんかが普及している。バックボーンをWi-Fiにしたり、コードレスタイプも見かけたりするんだけど、日本のように首から小さい端末を提げるみたいなスタイルはあまり見かけない。

 じゃあ、コードレスは使われてないかというとそうではなく、レンタカーを借りる時、窓口で手続きをするとスタッフがトランシーバーで車庫に連絡する。交互通話で「わかりましたー」なんていう返答があって、車庫からクルマが用意される、なんていう使い方をしている。それぞれの地域で通信サービスと使い方に文化の違いがあるので、どれがいいとかどれが悪いとかの話ではないです。日本は過去にやってきた構内PHSや構内電話の文化があるので、それを継承できる仕組みとしてsXGPで行きましょうという話です。

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