深層学習(ディープラーニング)を利用して、AIが自動で画像を加工・生成するサービスが急速に発展しています。
AIによる画像の自動生成について、法的には主に著作権に関する論点が多数存在します。今回は画像生成AIと著作権の関係性について、主要な論点の問題状況をまとめました。
1. AIによる深層学習(ディープラーニング)は著作権フリー
画像生成AIは、深層学習(ディープラーニング)によって無数の画像を学習し、その学習結果をベースとして新たな画像を生成します。
このようなAIによる深層学習(ディープラーニング)には、2019年1月1日に施行された改正著作権法によって、著作権者の許諾を得ずに行うことができる旨が明記されました(著作権法30条の4)。
参考:著作権法の一部を改正する法律(平成30年法律第30号)について|文化庁
2. AIが生成した画像に著作権はあるのか?
深層学習(ディープラーニング)には著作権の効力が及ばないとしても、AIによって生成された画像を公開する際には、著作権の取り扱いが問題になり得ます。
2-1. 自動生成画像には著作権が発生しないのが原則
著作権法2条1項1号において、「著作物」は以下のように定義されています。
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
AIが自動で画像を生成する場合、そこに「思想または感情」は介在しません。そのため、AIによる自動生成画像には、原則として著作権が発生しないと解されています。
2-2. 自動生成画像の著作権が問題になる場合の例
ただし一例として、以下のいずれかに該当する場合には、自動生成画像の著作権が問題になり得ます。
①AIと人が協働して画像を生成(作成)した場合
②別の著作物の複製・翻案である場合
2-2-1. AIと人が協働して画像を生成(作成)した場合
たとえばAIが自動生成した画像について、人間が手を加えて表現を変更したとします。この場合、人間が手を加えた部分に思想または感情の創作的な表現が生じるため、著作権が発生すると考えられます。
このように、AIと人が協働して画像を生成(作成)した場合には、その画像について著作権が問題となることがあります。
2-2-2. 別の著作物の複製・翻案である場合
AIの仕様などによっては、深層学習(ディープラーニング)によって取り込んだ著作物と全く同じか、非常によく似ている画像を生成するケースも想定されます。
自動生成画像は、別の著作物(オリジナル)と全く同じであれば「複製」、非常によく似ていれば「翻案」に当たり、それぞれオリジナルの著作権者に著作権が発生する可能性があります(著作権法28条)。
なお厳密には、複製または翻案に当たるためには「依拠性※」が要件と解されており、AIによる画像の自動生成について依拠性が認められるかどうかは議論が分かれるところです。
※依拠性:オリジナルの著作物に接し、それを自己の作品の中に用いること