仮想通貨で生じた取引にかかる取引内容は取引会社から税務署に支払調書により報告され、基本は確定申告が必要だ。会社員で少しだけ取引している方で、どのぐらいの所得になると申告が必要か解説する。
仮想通貨取引による所得は基本雑所得
会社員が片手間に行う仮想通貨による利益は、基本雑所得となる。
雑所得は、他の給与所得などと併せてその総合計に対して所得税が課税される。所得税は超過累進課税といって、所得が大きい人ほど税率が高くなるため、仮想通貨による所得の金額が小さくても、もともとの給与所得が高ければ適用される税率は高くなるし、給与所得が少なければ税率が低くなる。
その逆もあって、給与所得が少なく普段税率が低い人でも、仮想通貨による大きな利益があれば給与所得に対する税率も高くなってしまう。
また、仮想通貨取引でどんなに損失がでていても、年内の仮想通貨にかかる取引については反映できるが、他の所得と損益通算したり、損失を繰り越したりすることはできない。
なお、以下のように仮想通貨の利益はただ買付時より売却時の価格が上がっているときだけではない。
■仮想通貨による所得(利益)
①売却時の価格が買付時の価格より上がったことによる利益
②ある通貨から他の通貨に変えたとき
③ハッキングなどにより仮想通貨が盗まれたときの返金額
④仮想通貨を無償で他人にあげたとき、または低価格で売ったとき
一方で、会社員には給与所得以外の所得が20万円以下のときには確定申告不要となる特例もある。ただ、条件としては仮想通貨による利益が20万円以下であることだけではないので注意したい。
会社員が片手間に取引する場合の確定申告義務が必要なラインは?
まず、会社員で年間の給与収入が2,000万円超の方など以下の場合は会社員でも必ず確定申告が必要だ。
■会社員で確定申告が必要な方
・給与収入が2,000万円超
・雑損控除、医療費控除、寄付金控除(ふるさと納税のワンストップ制度利用の場合を除く)の適用を受ける方
・住宅ローン減税を受ける最初の年
・その他、繰越控除などを受ける、他に不動産所得などがあるために確定申告をする場合
上記に該当しない場合で、仮想通貨による所得が20万円以下である場合で、以下に該当する場合には所得税の確定申告は必要ない。
①1社のみからの給与所得と退職所得以外の仮想通貨などによる所得が20万円以下で、給与所得と退職所得が源泉徴収されている場合
②2社以上から給与所得がある場合で、以下のどれかに該当するとき
・所得が少ない方の給与収入と給与所得と退職所得以外の仮想通貨などによる所得の合計額が20万円以下
・給与収入が150万円と一定の所得控除額との合計額以下で、かつ給与所得と退職所得以外の仮想通貨などによる所得が20万円以下
所得の計算
所得が20万円を超えていれば所得税の確定申告義務が生じるが、20万円を超えているかどうかまず所得の計算をする必要がある。
仮想通貨の取引にかかる所得の計算で買付価格を計算するときに、総平均法と移動平均法を選べるが、最初に方法の指定をしていない場合、取引業者から交付される年間取引報告書を使用する場合には総平均法となる。取引業者によってはそのまま年間取引報告書を使える場合もあるが、以下の計算書を使用して損益を計算する。
暗号資産に関する税務上の取扱い及び計算書について(令和3年12月)|国税庁 (nta.go.jp)
仮想通貨取引による損失は他の所得と相殺はできないが、副業などの仮想通貨取引以外の雑所得(原稿料、アフィリエイト収入など)の黒字との相殺はできる。
雑所得内がマイナスまたは20万円以下で他の所得が給与所得のみであれば基本は所得税の確定申告は不要となるわけです。
※仮想通貨取引における支払調書の税務署提出が義務化!取引にかかる税金の注意点とは?|@DIME アットダイム
◎本記事は仮想通貨取引への投資を勧めるものではありません。
◎仮想通貨の売買はリスクを理解の上、自己責任でお願いします。
文/大堀貴子