住宅ローン減税の限度額や減税額が2022年購入者から大きく変わった。その際の注意点について解説する。
新住宅ローン減税制度内容
住宅ローン減税とは、正式には住宅借入金等特別控除といい、住宅借入金等の年末残高に対して0.7%の減税を受けられる制度だ。どんな物件でも、どんな金額でも全額受けられるわけではなく、以下のような条件がある。
①減税額 住宅借入金等の年末残高の0.7%
所得税で引ききれない分は住民税から所得税の課税総所得金額等の5%(最高9.75万円)を限度に控除できる。
②住宅借入金等の限度額と控除期間(2023年)
③合計所得金額2,000万円以下の年分の所得税から減税(床面積40㎡以上50㎡未満の小規模住宅の新築または建売住宅や分譲マンションの取得の場合は合計所得金額1,000万円以下)
※認定住宅等とは?
認定住宅は以下の条件に該当する住宅で、審査を通過し、認定を受ける必要がある。
・認定住宅
認定長期優良住宅または認定低炭素住宅のことで、長く住むことができ、Co2排出量が少ない住宅
・ZEH水準省エネ住宅
電気使用量を住宅自体がつくるエネルギーでまかなうことができる住宅
・省エネ基準適合住宅
上記ZEH以外の住宅で省エネな住宅
※買取再販住宅とは?
宅地建物取引業者が中古物件をリフォームして販売した住宅のことをいう。
減税を受ける際の注意点①借入金限度額
減税制度の変更前の2021年は、認定住宅でなくても借入金額4,000万円まで適用を受けることができたが、変更後は一番小さい限度額は2,000万円となる。
例えば、借入金額が3,000万円でも認定住宅以外の中古住宅購入であれば2,000万円までの部分でしか控除を受けられない。3,000万円まで受けられるなら21万円の減税を受けられるところ、2,000万円の限度額にひっかかると14万円までしか受けられない。
したがって、住宅の種類については不動産会社によく確認し、適合する借入限度額をよく確認して借入することが必要だ。住宅の種類により借入限度額が大きい認定住宅であったとしても、次に紹介する自分の所得についても確認する必要がある。
減税を受ける際の注意点②住民税の限度額
住宅ローン減税は、借入金額が大きく(限度額が大きいことも必要)受けられる減税額が大きくなるとしても、支払っている所得税と住民税を超える場合には全額適用を受けられない。住宅ローン減税は基本所得税から減税を受けられる制度だが、特例として住民税からも控除できる。しかし、住民税には限度額がある。
減税額が所得税に満たない場合には、住民税の控除限度額に注意を払う必要がある。支払っている所得税が控除額より大きい場合には心配する必要はない。
住民税の限度額は、前年分の所得税の課税総所得金額等の5%または9.75万円のいずれか小さい方である。
前年分の所得税の課税総所得金額等とは、前年分の所得税の計算上の課税総所得金額と課税退職所得金額、課税山林所得金額の合計額だ。確定申告していない給与所得のみの方なら、源泉徴収票記載の給与所得控除後の金額から所得控除の額の合計額を控除した後の金額となる。
例えば、課税総所得金額が300万円なら300万円×5%=15万円となるので、住民税の限度額は9.75万円となる。所得税が20万円なら住宅ローン減税は住民税と合わせて29.75円までしか受けられない。住宅ローンの年末残高が5,000万円で認定住宅の新築だったとしても受けられる減税額は5,000万円×0.7%=35万円ではなく、29.75万円となり5.25万円分は受けられないこととなる。
減税を受ける際の注意点③合計所得金額
合計所得金額とは、生命保険料控除額などの所得控除を控除する前の金額で、給与所得のみの方(特定支出ない場合)は源泉徴収票の給与所得控除後の金額となる。株式などの利益は確定申告すれば合計所得金額に加えられるが、特定口座源泉徴収あり口座やNISA口座でその後確定申告しない場合にはその利益は除かれた金額となる。仮想通貨などの利益は20万円超などで確定申告不要の特例を受けられない場合には、確定申告して合計所得金額に加えられる。
変更前の住宅ローン減税は合計所得金額3,000万円以下であったが、変更後は2,000万円となった。また、床面積が40㎡以上50㎡未満の住宅の新築や建売住宅、分譲マンションの購入においては1,000万円となる。
この合計所得金額が超えている場合でも、直ちに住宅ローン減税が受けられなくなるわけではないため注意したい。合計所得金額が超えている年は受けられなくても、超えない年には受けられる。例えば、2023年に合計所得金額1,001万円で床面積40㎡の分譲マンションを購入した場合、もちろん2023年は住宅ローン減税を受けることができないが、2024年合計所得金額900万円なら2023年は受けられる。ただし、受けられない年の分、その後減税期間を延長できるわけではない。
文/大堀貴子