中国の旅行熱が盛り上がりを見せている。中国の文化観光省は、『労働節(メーデー)』に伴う大型連休(4月29日~5月3日)の国内旅行者数が、前年比で71%増の延べ2億7,400万人だったと発表した。
新型コロナ感染を徹底的に抑え込むゼロコロナ政策が終了した後、初めて迎えた『労働節』では、各観光地が記録的な人出となり、中国人のリベンジ旅行需要の高まりを示した。
そんな中、三井住友DSアセットマネジメントはこのほど、「中国の『労働節』で見えたリベンジ旅行需要」と題したマーケットレポートを公開した。
『労働節』の国内旅行者数はコロナ禍前超え
中国の文化観光省は5月3日、『労働節』連休中の国内旅行者数が、延べ2億7,400万人だったと発表した。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で上海市が事実上ロックダウンとなった前年対比では71%増だった。また、2019年同期に比べても19%増となり、国内旅行者数は新型コロナ感染拡大以前の水準を上回った。
一方、観光収入は1,480億元(約2兆8,700億円)と、前年比で倍増した。さらに、2019年対比では、ほぼ横ばいながら、コロナ禍以前の水準を回復した。
リベンジ旅行需要が顕在化
『労働節』連休で国内旅行者数が急増したのは、長期間にわたって移動を制限していたゼロコロナ政策が終わり、リベンジ旅行の需要が高まっているためと考えられる。
2022年12月のゼロコロナ政策終了に伴う感染急拡大で、中国社会が集団免疫を獲得したとみられ、感染への警戒感が薄れたことや、国際旅客航空便数の減少で航空運賃が依然として高いことも、国内旅行が人気となった要因とみられる。
『労働節』連休では省をまたいだ旅行が増え、各観光地には旅行客が押し寄せた。中国屈指の名山として知られる安徽省の黄山では、山中の宿泊施設に入りきれなかった多数の客が公衆トイレで夜を明かしたことが報道され、話題になった。
【今後の展開】中国人の海外旅行は航空便増と団体旅行の対象拡大で急増へ
『労働節』連休では、海外旅行者数も顕著に戻り始めた。中国国家移民管理局は5月4日、『労働節』の連休期間の出入国者数が626万人だったと発表した。連休中1日当たりの出入国者は125万人と、前年対比では2倍以上の回復となった。ただし、コロナ禍以前の2019年同期比では、59.2%にとどまっている。
航空各社の輸送能力はまだ戻っておらず、航空運賃の高騰やビザ発行手続きの煩雑さなどから、中国の海外旅行者はコロナ禍前の水準を大きく下回っている。しかしながら、中国政府は海外への団体旅行の解禁対象国を段階的に拡大しており、国際線の運航数は足元で急回復している。
大手旅行予約サイトによれば、中国の海外旅行者数は、アジア地域を中心に明確な回復傾向にある。
中国政府が認可した国際旅客航空便数は当面限られているものの、先行きは、国際線の運航数回復とそれに伴う航空運賃の下落や団体旅行の対象拡大により、コロナ禍で3年間抑制されたリベンジ旅行需要が一気に顕在化し、中国人観光客が世界中に押し寄せることになりそうだ。
中国人の海外旅行者数の本格的な回復は、コロナ禍で打撃を受けた世界の観光業にとって、大きな追い風となるだろう。
出典元:三井住友DSアセットマネジメント
構成/こじへい