西武池袋本店ではZ世代をターゲットにしたアートショップをオープン
一方、大丸松坂屋百貨店とは異なるアプローチで若年層のアート需要に訴求する試みを行っているのが、東京・池袋に本店を構えるそごう・西武百貨店。西武池袋本店は2022年に改装をおこない、Z世代やミレニアル世代をターゲットにした、アート&雑貨ショップ「アート カプセル+」をオープンさせている。西武池袋本店が位置する東京都豊島区は「国際アートカルチャー都市構想」を策定しているが、ランドマーク的存在である西武池袋本店も行政ともに、アートによる多様性に対応した街づくりを担う。
「かつて西武池袋本店は館内に『西武美術館(89年にセゾン美術館に改称)』を擁し、先進的な美術や話題の展覧会を開催することで、アートカルチャーをけん引してきました。その歴史を踏まえ、今回の改装をきっかけに芸術や文化を通じた発信力を高めていくことを目指しています」(西武池袋本店 広報)
「アート カプセル+」はターゲットと同世代の20代若手社員が改装に携わり、自分の足で見つけた若手作家と共に展示するテーマから作品のイメージを作りあげるという、従来の百貨店にはない手法で運営されている。また2階という入りやすい低層階の雑貨フロアで展開することで、アートへの興味が高まる若年層を取り込むことを徹底的に意識した。
「売り場には男女関わらず学生がアートを背景に撮影したり、それぞれの楽しみ方で気軽に立ち寄る光景が見られます。また、普段百貨店にあまり来ることがないお客さまにも多数ご来店いただいており、『いい企画しているね』とお声をいただくことも増えています」
西武池袋本店では美術の売上が2010年から10年で約2倍の伸長、21年度はコロナ禍にも関わらず過去最高の売上を達成。特に現代アートの売上は前年約3倍と大幅に伸長している。
ショッピングモールの急成長や節約志向の風潮もあり、百貨店業界の置かれる現状は厳しいといわれている。だが百貨店はただ商品を売るわけではなく、都市的文化を形成する役割も担っているのだ。今回の若年層をターゲットにした“デパ・アート”の試みは改めてそのことを再認識するとともに、こういった試みが百貨店ならではのストロングポイントとなるのではないか?そんな予感がする。
取材・文/高山 惠